「だから化粧をした。髪だって染めた。男の人とも関係を持った。気持が良かったことに安心したのを覚えてる。でも、なにも満たされなかった。何もなかった」
Cは下手くそな表情を私に見せた。
「私、それが怖くて何回もした。エイズとかどうでもよかった。満たされてほしかった。でも、何もなかった」
Cは共学の女の子と話した時、女子校あるあるとして同性愛について聞いて来たらしい。その子が本気にしてない。遊びで聞いてきているのを知って。Cは気づいた。
「私は、普通じゃない」
Cは泣きそうな顔をした。
「Mも同性愛者とか、私のことが好きとかだったら怖くない。でも彼女は異性愛者だから。Mは普通だから、これは内緒」
そう言って笑った。
一年の時に見た甘くない笑みを見た。
「まぁ、こんなのも大人になったら、良い思い出かもだけど」
ね。とCは言った。
斜め前の机に座ったCはよっこいっしょと降りた。
柔らかくなったピンクの毛先は宙を舞った。白い純粋の想いと赤い情熱を混ぜて隠した。可愛らしい恋の桃は一番切れやすそうな毛先に溜まっていた。
「告白・・しないの?」
良い思い出になるかもよ。と椅子に座ったまま、机に腰かけたCに言った。Cは驚いたのかまばたきをして、クスッと笑った。
「しないよ。Mは普通だから。そのまま幸せになってほしい」
「そっか」
「告白する子って、普通とか考えないんだろうね。恋に盲目的な。それかそれを知ったうえで告白するかだと思う。後者の場合。本当にその子はすごいと思う」
「そっ・・・か」
私は目を少し斜めにずらしたのを見て、Cはクスリと笑った。
「私は、今も苦しい。Mを見て苦しいんじゃない。Mを好きだということに気付いて苦しい」
「苦しい・・・」
そう呟くとCは
「でも、嫌じゃないんだ。私がMの事好きだっていう証拠だから」
そう言って自分のカバンを持って腰をあげ、じゃあね。と言ったCの後ろは黄昏が始まる空だった。
私は無知だ。罪人だ。CのMに向ける愛を知らない。DがUに向ける愛を知らない。MがUの気持ちを知っていた理由を知らない。Uが最後に私に会った理由を知らない。Uが私に言った言葉の意味も知らない。
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