冬休みが始まって、今日は天皇誕生日。明日はクリスマスだ。

「お邪魔します」

私は氷雨の家に来ていた。
氷雨の家は広かった。リビングはクリーム色と焦げ茶色のアンティーク家具で統一されていた。
氷雨の両親は仕事でいない。クリスマスを氷雨と過ごすために仕事をしているらしい。

「くつろいでて」

氷雨はそういうとキッチンの方へ行った。
私は大きいテレビの前に座った。デカいソファーはクリーム色をしていた。

「紅茶、なにがいい?」

と氷雨が聞いてきた。
私は、紅茶が飲めない。それを言おうかどうかもやもやしていると

「どうかしたの?」

と氷雨が言った。

「いや、私は、紅茶飲めないの」

と言った。
氷雨は

「意外。瑠璃、紅茶飲んでそうだから」

と言った。

「そう?紅茶ね。香りとか味とかが苦手なのよ」

私がそういうと氷雨は、そう。と言った。

「じゃあ、コーヒー?」

「ええ。あ、カフェオレにお願いできるかしら」

「できるよ」

「ありがとう」

氷雨はコーヒーを入れ始めた。
氷雨の家にはコーヒーのほろ苦い香りが広がった。

「どうぞ」

「ありがとう」

氷雨はコーヒーとショートケーキを持ってきてくれた。

「美味しい」

「それは、よかった」

氷雨が入れたコーヒーはおいしかった。
紅茶はお湯を注ぐ時間。待つ時間と色々手順があると聞いた。それはコーヒーも一緒で粉の調整やお湯の湯加減で味が左右する。
氷雨のコーヒーはちょうどよくバランスが取れていた。

「氷雨は、宿題どこまでやったの?」

「・・・ここまで」

「半分までやったの?まだ、冬休みが始まって1日しか経ってないよ」

「昨日、帰ってから暇だったから。それに、明日から休みだって思って夜更かししてた」

「それでも、すごいよ」

氷雨は、そう?とわからない顔をした。
氷雨は数式を解くのが早かった。二桁の面倒な掛け算など筆算なしで書いていく。お陰でノートは綺麗で、参考書の答えのようだった。
氷雨は教えるのもうまかった。無口だからか、こちらが計算が終わるまでまち、形式に当てはめたら次のことを教えてくれる。次のことがわかるからとてもスムーズに計算式が書けるようになった。

「国語っていうのは、きっと人の気持ちを読み取るのが問題なだけで、間違えてもいいから自分の考えを書いたほうがいいわ」

「そんなものなの?」

氷雨は漢字はよくできるし、古典の古語を現在語訳もできる。問題は『〜が〜と思ったのはなぜか』という問題が全く解けないことだった。

「それに、私もこういうのはノートを暗記しているもの」

「暗記?」

「ええ。先生の気持ちじゃないとバツになるもの」

私はクスクスと笑った。

「なるほど」

氷雨はそういうと国語のノートを開いた。

「少し、休憩しよう」

氷雨はそういうとキッチンの方へ行った。

「氷雨は」

私の言葉に、氷雨はこちらを向いた。

「死ぬことが怖いと思ったことがないの?」

私はソファーの背もたれに乗り出し、キッチンにいる氷雨を見た。

「さあ?どうだろう」

氷雨はそう言い、お菓子を数量と新しいコーヒーと牛乳を持ってきた。

「怖いと思ったこともあるけど、今ではもうしょうがないと思う。死ぬんだなと思っても私は痛くて死ぬこともないし、辛くて死ぬこともない。生きていたかったと思うかもしれないけど、もう自我を持った時から自分の死ぬタイミング的なのを知っているから、今ではもう、当たり前になっているよ」

とカフェオレを作りながら言った。

「怖くないのね」

「怖くないというか、なんというんだろう。もう知っていることだから、どうしようもないし」

「そう」

私は氷雨が作ったカフェオレを飲んだ。

「美味しい」

私のつぶやきに、氷雨は無言でブラックのコーヒーを飲んだ。

「じゃあ、どうして瑠璃は怖いの?」

氷雨の質問に私は何も言えなかった。
氷雨も何も言えないことを悟ってか、お菓子の袋からチョコを出した。

「美味しいよ。これ」

氷雨は私にそのチョコをくれた。私は、ありがとう。と受け取った。

「うん。美味しいね」

氷雨は何も気にしていない。とコーヒーを飲んだ。

チョコは少し苦かった。でも、今は、あの出てこなかった言葉を沈めるように、苦く苦く口の中で溶けていった。

 

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