彼女・・・氷雨は、体温がなくなってそのうち死んでしまうと言った。
氷雨の病気は止めることができず、そのまま静かに死んでしまう。心臓や血流などは何の異常もないらしい。ただ血液だけが冷たいのかもしれない。と無表情で言った。
冗談かは分からなかったが、とにかく氷雨はタイムリミットがあるという事が分かった。
死んでしまう彼女に死にたいなんて言えないと思った。
しかし、氷雨は

「私は、そのうち死んでしまう。いつかは知らない。きっといきなり死ぬこともないんだと思う。そっと降る雨のように死んでいく。だから別に死にたいとか思わない。死にたいと何度も思うこともあるけど、そのうち死ぬことに気づくから、別にどうでもよくなる。私は今、もし死んでも後悔はなく、やっぱり。と思って死んでいくと思う」

と言った。
白銀の髪が夜に冷え冷えと降る雨のように繊細で氷のように透明だった。
彼女は言った

「私はそのうち死ぬ。きっと死ぬ。もうすぐ死ぬ」

と。
何も読めない無表情で紫陽花色の瞳を真っ直ぐに私を見ていた。
私はその時。なんとなく、ああ。いいな。と思った。でも、その言葉を言ってしまえば全てが終わる気がした。でも、病気よりも私はその儚い白さに惹かれた。

「ねぇ。氷雨はいつから病気だと気付いたの?」

お昼時間。寒くなってきた季節に女子たちはあの手この手で防寒をし始めた。寒いのにスカートを折ったままなのは一種のプライドだと思う。
私の質問に氷雨は無表情のまま食べていた食堂のラーメンをすすり飲み込み一息ついた。

「どうかな。産まれた時にはとりあえず入院してたと聞いたけど」

「そうなの?」

「確か、出てきた時身体が妙に冷たくて死んでると思ったんだけど泣いたから、とりあえず入院。持病ってことで、治らないし、小学校は5年からしか行ってないよ」

「そうなんだ」

私の言葉に氷雨は頷いてラーメンを一口食べた。

「・・ラーメン。熱くないの?」

なんとなく、聞いてみた。

「あつい?猫舌ってこと?」

「そう。自分の体温が冷たいから、逆に熱すぎる的な」

「いや、全然。普通」

「そうなんだ」

「凍っているんじゃなくて、体温が無いだけだから。暑いとか寒いとか冷たいとかあったかいとかわからないんだよ」

「ふーん」

「無い状態で有る事はできる。でも、そのものがなかったら無いとか有るとか以前の問題ってこと」

「なるほど。0があるから1や0になれるけど、0さえも無かったら、1も0にもなれないものね」

「そういうこと」

氷雨は無表情で手を合わせて、ご馳走様と言った。

 

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