雪が降った。
寒い寒いと言いながら、廊下に出た。

「待った?」

「ううん」

氷雨と合流し、公園へ向かった。

「今日の雪は、すごいわね。この前よりもすごいわ」

「そうだね。大粒だ」

「雪合戦。する?」

と笑えば、氷雨は

「いいよ」

と楽しそうに言った。
私たちは公園に着くと、カバンを置きこの前のように雪合戦をした。

「やはり、氷雨はいいわね。当たっても冷たくないんだもの。手袋をしていないから早いし」

と愚痴をこぼすと

「残念だね」

と言った。

「なんか、むかつくわ。・・・負けないんだから!」

と雪玉を丸めては投げ、丸めては投げた。
2人で盛り上がっていると、そのうち疲れて、2人して立ち止まった。
肩で息をしていると

「ねえ」

と氷雨が言った。

「なに?」

「死ぬよ。私」

と言った。
心がチクリと痛くなった。

「らしいわね」

「そうじゃなくて」

少し走れば触れる程度の距離感の私たちは、立ったまま、話した。

「死ぬよ。もうすぐ」

と言った。
死ぬ。知っていることだった。しかし、今、言うのか。青い薔薇が止まらない私に、なぜ、今、今言うのか。

「いつ頃」

私は少し、怒ったような口調で言った。

「本当に、もう少し。雪が上がれば雨は消える」

と言った。
本当に、もうすぐ死んでしまうことがわかった。

「なんで、今」

「今じゃないと、いけない気がしたから」

と氷雨が言った。
なにも言えなくなった。

「そう。死んでしまうの」

「うん。だから・・・」

氷雨はそう言うと雪玉を作った。

「楽しもう。そうしてほしい」

と言った。
私は、いろいろ言いたいことがあった。でも、なにを言っていいのかわからなかった。

「そ・・うね。いいわよ。楽しみましょう」

と言った。
鼈甲飴は流れなかった。透明の水が頬をつたっているような気がした。
雪玉を投げて、当たって、冷たいと叫んで、笑った。
氷雨は無表情だった。でも、楽しそうだった。

「霧氷!」

トコトコと歩いてきた、霧氷の名を叫んだ。

「ん?」

なに?と顔をした時、私の雪玉が霧氷の足元に落ちた。

「なによ。また、やっているの?今度は負けないわよ」

と言って、カバンを置いた。
3人で雪合戦を楽しんだ。心はチクリと痛かった。
氷雨。氷雨。死なないで。好きなのよ。あなたが。お願い。死なないで。消えないで。氷雨。
何度も頭に、死ぬよ。という氷雨の声が聞こえる。
霧氷は私の涙に気づいた。しかし、なにも言わなかった。



雪合戦をした。とても、大粒の雪が降った日。あの子が死ぬと言った日。心臓が斬り裂けそうだった。それでも、あなたがあまりにも楽しそうにするから、私も笑顔で雪玉を投げた。


雲が空を覆い白が降る日。大好きなあなたを失うと確信した日。

私を抱きしめて、離さないで、大丈夫だと言って。
願いは届かない。なぜなら、その願いを口にすることは、これらから先、無いからだ。

 

top



Backindex