2人で食堂を出て教室へ行こうとしたら、氷雨が右へ曲がった。

「どこ行くの?」

そう言いながら少し駆け足で氷雨の隣へ行った。

「自販機」

と氷雨が前を向いたまま言った。

「さっきの廊下にもあったよ?」

「まだ、時間あるからいつも、その場所で一息ついてる」

「その場所?」

「その場所」

とりあえず氷雨について行くと

「ここ?」

「そう」

ついてきて着いた場所は、学校の近くにある公園だった。坂の上にある私の学校が見える公園は高い場所にあった。フェンスの向こうには街が見えた。でも、木々が伸びていて、木と木の間から見える感じだった。
小さな公園には、滑り台とブランコが2つ。シーソーが1つに動物の形をした置物があった。子供が乗る置物だと思う。そこにベンチが1つあった。
公園の入り口では無く別の入り口から入った私はなんだか、不法侵入した気分になった。
氷雨は何も言わずに入り口の方へ歩いて行った。私は疑問に思いながら着いて行くと

「ああ。自販機ってここのこと?」

「そう」

入り口を出てアスファルトが所々ヒビが入っている坂道を少し歩くともう誰も住んでいなさそうな古風のボロい家があった。ガラスは割れているし、庭もさっきの公園への道のりのような林になっていた。その家の隣に自販機が1つあった。

「どれにする?」

「じゃあ、これで」

「ん」

「あ、お金」

「いいよ。別に」

「じゃあ、ゴチになります」

「ん」

私はベンチに座り、空っぽになったお弁当が入ってるお弁当袋を横へ置いて買ってもらったカフェオレを飲んだ、隣に座った氷雨をみた。

「なに?」

「いや、よくここに来るの?」

「たまに。お昼を早く食べたら」

「ふーん」

「帰りは、毎日」

「帰り?」

「そう。この前は用事があったから、寄らずに帰ったけど」

「ああ。じゃあ、西門?」

「そうだよ」

「じゃあ、一緒に帰れる?」

「うん」

氷雨がそう返事をした。一緒に帰れることに何故が嬉しくなった。

「帰りの時はいつも霧氷がいる」

「霧・・氷?」

「うん」

「友達?」

「かな?」

「ふーん」

「悪い子じゃないよ。瑠璃のこと教えたら会いたいって言ってたし」

「え」

「え?」

私の言葉におうむ返しした氷雨に

「教えたの?」

と言った。氷雨は無表情のまま

「嫌だった?」

と聞いてきた。

「嫌ってわけじゃないけど。なんて教えたの?」

「別に。鬱病で、そん時に泣いたら鼈甲飴の涙が流れるって」

そんなことまで。とどこかショックを受けた。

「それで、なんて言ってたの?」

「霧氷?」

「うん」

「別に。会いたいって」

「それだけ?」

「うん」

「そう」

このヘンテコな病気のことをなにも言わなかったことに、今度は何故がガッカリした。

「あれ?もう時間?」

「うん」

氷雨がベンチから立ち上がり、あの林の中へ入っていった。

「そういえば、こんな所に公園があるなんて知らなかった」

「霧氷が教えてくれた」

「じゃあ、その子がここを見つけたの?」

「らしいよ」

学校に着いて、残り5分前。氷雨は隣の教室だった。

「じゃあね」

「ん」

そう言うと、氷雨は白銀の真っ直ぐな髪を揺らして入り口へ入ってった。

 

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