瑠璃が死んだと学校で集会が開かれ、自殺防止を促す。
警察もマスコミも学校へ毎日のように来ていた。
残された2人は、氷雨の体調がすぐれないことともに、霧氷も学校へ来なくなっていた。
学校へ行かない2人は、公園へ来ていた
「冷たくない?」
と霧氷がしゃがみこんで雪を掻いている氷雨に言った。
「冷たいとか、わからないから」
「何してるの?」
「あの子の生きた証を探してる」
「生きた証?」
氷雨はこくりとうなづいた。
「あった」
氷雨の声に霧氷はフェンスへ近づいた。
「青い花びら」
と霧氷が言えば
「薔薇だ」
と氷雨がぼそりと言った。
「それに、鼈甲飴。雪で溶けなかったんだね」
氷雨は花びらを掬い上げた。
「その花びらは、触れてはいけないよ」
と霧氷が言った。
「なんで?」
氷雨の質問に霧氷は微笑み
「それは瑠璃の想いだから」
と言った。
「そう」
「うん」
そう話していると、氷雨がヒュウっと息を出した。か細い息に霧氷は驚いて氷雨をみた。
「氷雨?」
霧氷は氷雨の手を握った。
「冷たい。すごく、もしかして」
「死ぬ、、私。死ぬよ。きっとすぐに、、死ぬ」
白銀の髪の毛が白い雪の上に舞った。
紫陽花色の瞳は青い薔薇を真っ直ぐに見ていた。
氷雨はそれから入院した。
霧氷は学校へ行かずに、公園や病院へ行っていた。
「あのね」
末期病棟はそんなに人はいない。もう、少しだけだから。と氷雨のご両親は泣きながら個室をお願いした。
2人きりの空間。
窓の外の雪を見ながら霧氷が言った。
「なに?」
「瑠璃は氷雨の事好きだったよ」
と言った。
「そう」
「知ってたんでしょう。青い薔薇を吐くこと」
そう霧氷がいうと、氷雨は辛そうな表情をした。
「だから?知っててどうしろと?付き合えと?私は恋愛感情なんて持ってない。それに、私はすぐ死ぬ。きっと死ぬ。だから、私が先に死ななくてよかったと思ってる」
と言った。
「なんで?」
と霧氷が氷雨の方を向いた。
「きっと、私が死んだら瑠璃は死んでる。今となればどっちみち。になるけど」
と氷雨は言った。
「氷雨は冷たいのか暖かいのかわからないわね」
霧氷は困ったように笑った。
「わたからないよ。今となっては。ただ死ぬのならばあの子の死んだところで死にたかった」
と氷雨は眉間に皺を寄せ、悲しそうな表情をした。
「無理ね。連れていけないもの」
と霧氷は言った。
「そうだね」
「何か形見でも置いときましょうか?」
と霧氷が聞けば
「いや、いいよ。この青い薔薇を持ってるだけで、一緒だと思えるよ」
と霧氷が持ってきた青い薔薇を瓶から1つとった。
「そうだね」
と霧氷が言った。
「ねぇ。今の私は君にとってどうだろう」
と氷雨が言った。
霧氷は少し、戸惑ったがすぐに微笑み
「そうだね。惨めだね。あの子の恋心をわかっていてもなお、自分の気持ちに嘘はつけずに見捨てた残酷な人だ。でも、氷雨は死ぬ。それをわかってて、見て見るふりをしていたのならば、君は優しい。でも、氷雨は死ぬ。惨めだと思うよ」
と言った。
「そう」
「でも、綺麗だよ。とても、綺麗だよ」
「そう」
「ねぇ。本当に死ぬの?」
と霧氷が聞いた。
「うん。わかるから。死ぬよ。私は」
と氷雨が言った。
「そう」
「寂しい?」
氷雨が聞くと、霧氷は眉を八の字にして
「いや、どうかな。でも、寂しいかもね。1人だもん。友達を亡くしたら誰だって悲しいわ」
と言った。
「そう、。、、ねぇ。霧氷。君は瑠璃のこと好きだったの?」
氷雨の質問に霧氷は微笑み
「いいえ。私は恋愛感情じゃなくて、可哀想な人が好きだもの」
と言った。
「そう。ねぇ。霧氷」
「なに?」
「霧氷。君は生きてね、」
氷雨は霧氷を見ながら言った。
紫陽花色の瞳はキラキラとし、涙のカバーで光っていた。
「なに、それ」
霧氷は、詰まりながら無理やり微笑んで言った。
「君は死なないでね」
再度、氷雨が言った。
「やっぱり、氷雨は酷い人だね」
と霧氷は少し怒ったような口調で言った。
「ごめんね。霧氷」
霧氷は氷雨の言葉を聞いて、黙って席を立った。そのまま出て行った。
(謝るなんて、ずるい)
霧氷は眉間に皺を寄せ、早足で病院を去った。
その夜。
氷雨は両親に手を握られていた。
冷たい手に母は泣き、父は泣かないと顔をしかめていた。
大丈夫。ありがとう。と何度も言った。
白い雪のような布団に包まれ、白銀の髪はベットに広がった。
1つ、頼みがある。と母にいえば、なに?と焦ったように聞いてきた。
霧氷。という友達をよろしくと言った。母は驚いたが、笑って。いいよ。といった。
紫陽花色の瞳は揺れた。キラリと光り目尻に涙が流れた。
ああ、死ぬ。
そう思うと、氷雨は2人を呼んだ。2人は、なに?と近寄った。
ありがとう。大好きだよ。
そういうと、紫陽花色の瞳は消え。白銀の長い睫毛が涙で光った。
氷雨は、その日の夜。寒い夜の日。
息を引き取った。
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