夕焼けが雲を吸い込んでいるように見える。
薄い雲が薄いピンク色からオレンジ色になって行った。フェンスの向こうにある街は墓標みたいに見えた。
「寒くなってきたね」
霧氷はブランコに座りユラユラと前後の揺れた。
「そうだね。もう、11月も終わるから」
「冬休みだね」
「冬休みは何をしているの?」
私の問いに霧氷は、うーん。と考え
「なにしてるかなぁ。宿題?」
「本当に?」
悪戯っぽく言った霧氷に私がそう言うと、うそうそ。と霧氷は笑った。
「氷雨は宿題。ちゃっちゃと終わらせるからなぁ」
「そうなの?」
霧氷の言葉にそう返すと
「暇だから」
と氷雨が言った。
「氷雨。頭いいものね」
「そうでもない」
2人の会話を聞いて
「霧氷ちゃんも、頭いいの?」
と聞いた。
「いや、そんなことないよ」
と言った。
「そう?」
「普通。この前のテストも最高点だって75点くらいだったもの」
「そうなんだ」
「瑠璃は?」
「私?私は80点くらい」
「あちゃー。負けた」
と霧氷が笑った。
「氷雨は?何点なの?」
私が聞くと
「100」
と答えた。
「天才じゃん」
と私は呟いた。
「そんなことない」
「国語は?」
霧氷が意地悪そうに聞いた。
「・・・63点」
氷雨は眉間に皺を寄せた。
「氷雨って、理系?」
私が聞くと
「うん」
と答えた。
「私は文系だな。数学苦手」
「瑠璃は何の教科が一番低かったの?」
霧氷の質問に
「数学」
と笑って答えた。
「じゃあ、最高点のは?」
「国語」
霧氷はやっぱりと笑った。
「そういう霧氷ちゃんは?」
「私?英語だったよ」
と答えた。
「英語かぁ・・・。苦手だなぁ」
と私が苦い顔をしたら
「文系でも、英語は苦手なのね」
と霧氷が言った。
風がヒュウっと吹いた。
「風が冷たくなってきたね」
と霧氷が言った。
「そろそろタイツかな」
「そうだね」
「あと、マフラーも」
「そうだね」
霧氷はそう言うとリュックを背負って、じゃあ、帰るね。と言った。
「うん。バイバイ」
私が手を振ると、氷雨も無言で小さく振った。霧氷は自転車に乗って手を振り帰っていった。
「私たちも、帰ろうか」
と言ったら
「瑠璃は冬休みなにしている?」
と聞かれた
「別に、用事もないし。ゴロゴロしてるよ」
「家、遊びにおいでよ」
と氷雨が言った。
「いいの?」
「友達、家に呼んだことないから。お母さんも喜ぶ」
紫陽花色の瞳が少し揺れた。
「じゃあ、行く」
と言った。
「ん」
と短く返事をした。
「行く時に、連絡するね」
と言った。
2人で家路についていると
「そういえば、霧氷ちゃん。呼んだことないの?」
と聞いた。氷雨は目だけをこちらへ向けて
「ない」
と言った。
「なんで?」
「別に。なんとなく」
「じゃあ、私は?鼈甲飴の涙を流すから?」
と聞いたら
「いや、なんとなくだよ。家に呼びたかったから」
と言った。
氷雨の言葉に優越感を感じた。
先に会っていた霧氷よりも私も呼んでくれるということに、胸がキュンとなった。氷雨と別れて1人で家路についた。
冬は夜が来るのが早い。オレンジが黒に侵食されていく。一番星と隣で三日月が綺麗に輝いていた。
2人が公園にいる頃。霧氷は自転車を漕いでいた。
赤い目はとろりとしていて、口元は微笑んでいた。その表情は甘くとろけたストロベリーシロップを思い出させる。甘く危険な雰囲気の彼女は、何かを愛おしそうな声で
「可愛いなぁ」
と言った。
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