だいぶ落ち着いてきた頃には、もう空は暗くなってきていた。

氷雨から少し離れて、鼻をすすった。

「大丈夫?」

氷雨は無表情で私に聞いた。私は、大丈夫。とこくりと頷いた。

「これがその、鼈甲飴?」

土まみれの鼈甲飴を霧氷は持ち上げた。

「うん」

バレしまったという気がした。
別に悪いことではない。霧氷は鼈甲飴を知っていた。怖くない。でも、なぜが怖かった。

「これじゃあ、食べれないね」

と笑った。
優しいタレ目の赤い目はとろりとしていた。優しそうな眉を八の字にして、困った顔をした。

「お腹壊すよ」

私はキツめに言った。
霧氷は驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑顔に変わった。

「砂がついてるものね。これさえなければ、壊さないよ」

2人は優しかった。
自分が惨めに思えて、また、鼈甲飴が出そうだった。

「瑠璃」

氷雨は私の名前を呼んだ。
なに?と氷雨を見た。

「大丈夫だから」

と冷たい手で握ってくれた。冷たさに驚いて、手を少し弾いてしまった。

「ごめん」

と氷雨が言った。
謝ろうとしたけど、声を出したくなかった。私は無言で、氷雨の手をとって握った。

「冷たくない?」

と氷雨が聞いた。
確かに冷たかった。本当に冷たい手。でも、私には暖かく感じた。大丈夫 。と強く握った。

「じゃあ、またね」

と霧氷とは公園の入り口で別れた。
お互い無言で歩いた。もう少しで別れるあたりで

「ありがとね」

と言った。
氷雨は、ん。と短く返事をした。
なにも言わない。いつも通りの氷雨に安心して、少しにやけた。

「じゃあ」

「うん。またね」

氷雨と別れて、赤いマフラーに鼻から下を埋めた。
カランと鼈甲飴が一粒落ちた。


瑠璃の鼈甲飴を見てから、霧氷はベットの上で落ちていく鼈甲飴ではなく、落とす瑠璃の表情を思い出していた。
公園で遊んでいるときに撮った。写真を見て

「かわいいね。かわいいよ」

と瑠璃をなぞった。
そして、ラインのグループで送られてきた瑠璃と氷雨の写真を見て

「2人とも、綺麗だよ」

と画面にキスをした。
赤い目は溶けて、危うい雰囲気を醸し出していた。

 

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