1023


10月23日。いつも通り起きて朝食を軽く食べながらメイドやキッチンのスタッフと挨拶をする。
どことなくキッチンがいつもより忙しいのを感じ、クロワッサンを食べながら書類を確認。
財政に環境、国周りと金回り。ジョーカーの仕事を確認。あれ?ここ、回収分がおかしい
「おはよう」
コーヒーを飲みながら書類を睨んでいると、ふと上から声がする
「おはようございます。ベビー5」
使用人の管理をしているベビー5。彼女との会議により少しずつスタッフの在り方が変わってきている。考えるのが得意ではなさそうだが、一生懸命に自分の話に着いてこようと頭を悩ませている姿は好感が持てる。
ここは使用人が行き来するバックヤード。といっても狭い通路なのだが、ここに来る幹部はベビー5だけなので、必然と会話することが多くなる。
「今日は何だが、みんな忙しそうですね」
書類を整え、使ったカップたちを洗う。
昨日は少し残業ーー時間が決まってはないので、残業という扱いにはならないが。遅くまで起きていたので、少し視界がぼやける
ベビー5が首を傾げるのを視界に入り、同じように首を傾げる。白い髪がハラリと落ちる。あれから伸び、鎖骨下まで伸びた白い髪。指で耳にかける
あの頃より長いから全てかかる。ひと束はできない
「そりゃ、そうでしょうよ」

「今日は、若様の誕生日よ」

ブルーとサルビアブルーが震えた

##

「知らなかったの?」
「教えてもらってなかったので」
困ったように笑う彼女をみて、ベビー5は肩を落とした
モネには仕事内容を叩き込まれたが、人については全く教えてもらってなかったらしい。
1ヶ月という短い期間だったから教えてもらう余裕もなかったのだろうか
ふと、この異世界人には誕生日というイベントがどのくらいのものなのか気になった。
長寿な彼女も毎年祝うのだろうか。そうなると、152回分祝ったことになる。彼女の話では、祖父母もいたというのだから、一体何回祝うのだろうか
「あなたのところは、誕生日は祝うの?」
王宮の廊下を歩きながら、少し下にいる彼女に聞く
ターコイズがこちらを向く。バックヤードより光がある
「ありますよ。こちらほど大掛かりではないですが」
呟きながら、バタバタと動く使用人や玄関に次々と届く『誕生日プレゼント』をみながら話す
「どんなことをするの?」
「家族で。というのが定番でしょうか?決まってはないのですが、友人と誕生日を過ごすというのがよくわかりません」
「今年は家族でとか、近い日に友達とも。みたいなことくらいあるでしょ」
ベビー5がなんとなしに呟いてみれば、不思議そうな顔をする
「毎年ですか?」
「そうよ?」
「なるほど、短命だからこそ毎年が可能なのかもしれないですね」
納得した顔をする異世界人。
「短命って・・まあ、そうなるのかしらね」
あまり聞きなれない言葉に少し違和感を感じるが納得はできる
「じゃあ、いつ祝うの?」
「5で半人、10で独り立ち。という言葉があります。10ずつ区切りの人たちが城前の広場に集まり王族より誕生日を祝われます」
「結構大掛かりなのね」
「そうですね、毎年。と言われればそうなりますが、個人の誕生日は祝いません。その人の生まれた日。というよりも数を重ねたことにの意味が強い」
「なるほどねぇ。その時は何かするの?」
「お祭りになるので、個人では特に。誕生日が来たら家族に挨拶程度におめでとうと言われるくらいでしょうか?結婚してから誕生日を知るくらいです」
だから、家族以外では特に何もない。先ほど彼女が告げた言葉を頭の中で反復する
「祭りは何をするの?」
「王が誕生日祝いとして光の屈折を用いられた、催しをします。国に国宝としてある紫の石に光を溜め、広場を紫色に染めます。紫色の光の雨のように見えるそれは、とてもキレイで特別だと思うことができます」
うっとりする青い瞳。さぞキレイで幸せなことなのだろう
こちらの王は今起きてきたくらいだろうか。王が誕生日の時はどうするのだろうか
「王が誕生日のときは?」
「王が誕生日でも、内容は同じです。王自らが光を操り、民人とともに祝いします」
種族全体で誕生日というのに疎そうだ。
「ところで」
白い頭が己の執務室に入るところでベビー5は気づく
「若様の誕生日なんだから、あなたは一緒にいるべきじゃないの?」
国王としているドフラミンゴの元には挨拶をしたがる貴族共が群がってるはずだ。
形式的なパーティーを国王としての顔を出すために昼に行うのがしきたりで、夜はファミリーとしての、パーティーだ。
国王と言ってもジョーカーの客も挨拶に来るものだからあまり違いはない。
「そう、なんでしょうか?昨日スケジュールを確認した時はなにも、、なぜ、誕生日のこと伝えてくれなかったのでしょうか」
はたと白い頭が固まる。そういえば、なぜ若様は彼女に何も言わなかったのか
「まあ、私は私の仕事をします。今日は簡単な作業のみなので。お昼には間に合います」
「そう。お昼になったら若様に会いに行きなさい。いつも通り自分の部屋にいるわよ」
ベビー5の言葉に一礼した白い頭を片手をあげて返事をする。

##

お昼前。
簡単な作業が終わったので、ドフラミンゴの部屋を訪れた。
「おはようございます」
キレイに一礼をする彼女をみて、ドフラミンゴは来賓客たちのリストから顔を上げる
「フフフ、ああ、おはよう」
返事を返してくれたドフラミンゴをみれば、少し機嫌が良さそうだ
「若様。こちら、頼まれてた内金の仕分けですが」
昨日の続きをするように話しかける様子を見て、ドフラミンゴは首を傾げる
「ここ。計算が少しあいません。今すぐ問いただすべきかと。あと、カイドウ様からの依頼分のスマイルですが少し間に合いそうにありません。といっても数個ですので、パンクハザードの方に急ぎのものがないか聞いてみるのもありかなと、もし無理そうでしたら若様か私が直接オーナーへ・・」
昨日話した内容をたった半日で仕上げてきた。上出来。
スマイルは一応果実なので、間に合わないこともある。不備を渡すわけにはいかない。こちらから伝えてみるのもあり。オーナーといえど海賊なのだから少しくらい気にしないだろう。
そうじゃなくて、
「・・今日がなんの日か知ってるのか?」
「若様のスケジュールは確認済みです。このあと、1時間ほどで若様の支度を整え各国の貴族が出席されるパーティーに。18時ごろ結び予定です」
「なんのパーティーか、知ってるか?」
白い睫毛が動く。あの頃より伸びた白い毛先が揺れる
「お誕生日ですよね?」
知っていたのかと、少し呆気に取られる
「お恥ずかしながら、本日知りまして。管理人たちの会議にも参加してませんので」
申し訳なさそうに頭を下げるが、ドフラミンゴが思ってる内容と割とずれている
「ちなみに、おいくつに?」
普通自分の主人の誕生日を知れば、知らなかったとしてもお祝いの言葉くらいかけるだろう。
知らなかったことには特にいうことはない。伝えてないし
だが、祝う感じも受け取れない雰囲気に、胸が蠢めく
「・・36だ」
蠢めく胸の内を隠すように告げる
「あ、いや、さ、左様。ですか・・」
驚き少し悩んだように呟く
「思ったより、幼いのですね」
今度はドフラミンゴがポカンとする
自分を幼いと言えるのは、どう考えても彼女だけだ
「分かってはいるのですが、どうも口に出されると」
そうか、36。と小さく呟く彼女に笑いが止まらない
「フフフっフフフ・・可愛がってくれよ、お姉ちゃん」
イタズラに告げれば、頬を染め焦る彼女。
「き、聞かなかったことにします・・」
尻込みする言葉に面白さが増す
白い頭がアワアワしてるのを見ていると、扉がノックされる
「ジョーラざます」
「はいれ」
ジャジャーンと効果音がつきそうな登場をしたジョーラ。とそばで真似るデリンジャー
「若様〜!!すんっばらしい、衣装をお持ちしたザマス!!」
「かっこいいー!!」
メイドが後ろから、ガラガラとラックを動かす。
見るからに豪華で華やかなそれたち。
ジョーラの芸術は少し難しい
「どうざます!?これなんて」
あれよこれよとみせるが、目が少し痛い衣装たちにサングラスを軽く整えた
「若様はピンクのコートをお召しなので」
柔らかい声がする。シアンの角膜が光る
「あまり色味が強いと、アイデンティティが薄くなるかと。・・黒や同系色としても濃いのがいいのでしたら柄として使用するのがよろしいかと」
フォゲットブルーが黒生地にゴールドの刺繍糸でナポレオンボタンを造るジャケットと白みが強いピンクのシャツを取る。
ドフラミンゴをじっと見て
「主役ですから、パッとしましょうか」
真っ赤なパンツをとる。白いラインが彼女の髪の毛とリンクする
「・・悪くない」
ジョーラの芸術から選んだと思えない組み合わせにドフラミンゴは少し気持ちが落ち着き、胸が弾む
「いいセンスだ・・お姉ちゃん」
フフフと高笑いをする。
じんわりと耳までも赤くなる。癖で顔の前に手のひらを出しストップをかけ、口元を反対の手で隠す。
「勘弁してください」
「フフフ、本当のことだろうが」

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夕方
城前の広場で国民の前で、『ショー』を終え。挨拶に来る貴族たちを適当にあしらう。
ジョーカーの客が大半だからか、顔色を窺う様子に喉の奥で笑う。
だが、今回はなぜか自分よりも隣の人物に視線が集まる
「置物とはよくいったものだ」
小さいつぶやきに彼女は首を傾げる。なんでもないと、片手を振る。
白い髪に白い睫毛、キリッと立つ姿。見慣れない。今日のためのスーツは朝イチで用意したのだろうか。勝色のシャツの首元にはシャルピーナ。ブルーのそれは瞳と海を連想させる
王宮のシャンデリアに反射する瞳は万華鏡のように形を変えて輝く。ターコイズを少々とピーコック。
彼女に話しかけるものはいないが、挨拶し終えた貴族どもがヒソヒソ話す
なぜか自慢する気にならない。見世物ではない。俺の秘書だ。
彼女はその視線も声も気にしない。澄晴の瞳を崩さず姿勢を正し人当たりのいい笑みを浮かべる
異質すぎて話しかけれられない。そんな気にも取れる
今回のお披露目で、彼女の存在が公になった。狙うか。攫いにくるか。バカを倒すことを想像して喉の奥で笑う。
気づいた彼女と目が合う。
「楽しそうですね」
全く意味が違う。ドフラミンゴは少しため息をついた。その様子にきょとんとする。
「楽しかねぇよ。ただの決まり事だ」
「誕生日とは、面倒なものなのですね」
異文化交流でもしているのか。長寿は少し興味深そうに呟く
「故郷では、誕生日を祝わないのか」
「個人の毎年はしません。10年単位でお祝いを。10は区切り。その年10ずつの人たちのみ王から紫の光を振る舞われます」
「紫の光?」
「はい。とてもキレイで、光の雨が白い大地に降り注ぐ。また10年後と、区切りを迎えた自分を讃え手を振る。その日はお祭りになります。紫のランタン。紫の染料で染めた布を大きく広げ、白い塗料で紋章を描く。白い家たちに飾られ、夕日に照らされた紫は微かにピンクに見える」
うっとりするような眼をする。白い睫毛が震える。過去の記憶だ
「紫は、特別です」
優しく微笑む
「若様は、今日が特別なのでは?」
個人の誕生日に疎い。だから他人にも疎い。
異文化交流のような口調で聞いてくるそれに、またため息
「もう、若くはねえよ」
それを喜ぶほど。と呟くと
「私にとっては、子供です。赤ちゃんよりの」
ふふと楽しそうに笑う。
そりゃそうだろう。ため息がまた漏れる
「勘弁してくれ、お姉ちゃん」
意地悪返したが、ふふと笑われ
「拗ねないでください。ぼく」
年上の抱擁で返された
それが冗談にはならないから困る
長寿は相変わらず楽しそうに笑う

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ここからが本番と城が賑やかになる。
ドフラミンゴもいつものシャツとパンツに着替えて楽な姿勢をソファで取る
「では、若様の誕生日を祝ってぇ・・」
みんなに押されてコールを飛ばす、デリンジャー
「かんぱーーい!!」
デリンジャーの声に合わせて、ファミリーが杯を高く上げる。捧げる先はドフラミンゴ
「フフフフッフフ、楽しませろ」
それを合図とみなが騒ぐ。
いつもの庭は夜仕様で、ランタンの暖かな光がポツポツと灯る。今日は仲間内と、マーメイドはいない。料理を運び酒を追加するメイドたちが数人。
酒が進み、酔いが回る。みんなの顔も赤くなってきた。マッハバイスとピーカが腕相撲する奥のバーカウンターに、熱気を飛ばすような冷えた白を見つける
いつの日か、昼間のマーメイドたちと会話をしながら飲み物を用意する姿があった。
手際よくコリンズグラスに氷を3つ。オレンジ色のシロップを入れて炭酸で割る。長いマドラーでカラカラと混ぜる。混ぜた上に水色のシロップを足す。グラデーションのキレイなお酒を作る。
それを受け取るはベビー5。それを見てシュガーが何かを伝え、彼女が微笑む
タンブラーを用意し、氷。濃い紫のシロップ。炭酸。混ぜずに水色のシロップ。グレープをひとさし。喜ぶシュガーに優しく微笑む
和やかなカウンターを見てたら歓声がして視線を変える
マッハバイスとピーカの腕相撲はわりといい線をいっている。顔を真っ赤にした2人。拳を掲げ盛り上がるデリンジャー。声援をどちらにも送るジョーラ。なにか叫ぶラオG。チュパと音を鳴らし観戦するセニョールとグラデウス
「ふははは!おい、ドフィ。どっちが勝つと思う?」
手を叩き盛り上がるディアマンテが聞く
「べへへーー!!おれはねぇ、おれはねぇ」
ぐりんとこちらを向くトレーボル
「近すぎだ」
「べへへー?近すぎだけどぉ??」
「そこがいい」
酒が入ってるから調子がいい。
ドフラミンゴが答えを出す前に
「だっいーーん!!」
「わぁあ!マッハバイスが負けただすやん!」
「きゃー!大丈夫ー??」
勝負がついた。
ピーカは手を少し握ったり開けたりして血の巡りをよくする
「お疲れ」
ドフラミンゴの労いをピーカは黙って受け取る
「どうぞ」
差し出されたのはコーラで割ったお酒。喉越しが良さそうだ。
「さすがだ」
ドフラミンゴの言葉に白い頭が振り向く。
瞳の色はコバルトとスマルトブルー
「若様は参加なさらないので?」
「フフフ、俺に力試しか?」
「私にとって、みなさま力強いです」
ふふと笑う。白い髪が肩で跳ねる
「やってみるか?」
ドフラミンゴの挑発に、黒い煙。溶けた匂い
「いくらでも」
そりゃ反則だ。赤から黒のグラデーションした溶解の腕を少し持ち上げて笑う
意外な冗談を言う白い頭にドフラミンゴファミリーはドッと笑った

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深夜
解散して片付けを使用人たちが始めるのを廊下の窓で見ながら廊下を歩く。
部屋に入り、ベットにもたれる。
少し飲みすぎたか。あれから謎の腕かもう大会が始まり、シュガーの参加を全力で止めた。文字通り糸で
部屋にドレスローザの風が吹く。カラリとして気持ちのいい風だ。シャワーを浴び少し気持ちが悪かったがそれも流してくれる
窓の外にはキレイな青白い月。白いシーツを青くする
ノックを3回。そろそろと思っていた。
入れと声をかければ、まだ正装の白い頭。そういえば、先ほどの庭にはいなかったなと思い出す
「白湯です。若様」
いつも通り。がそこにある。その安心感に今日という特別を深く沈ませてくれる
「水、3口です」
その合図で口に含み、飲む。それを3回
空になったカップを渡し受け取る。
「最後に祝われたのは、2年前か?」
ふと疑問に思ったことをきく。彼女はふわりと笑い頷く
「懐かしいです」
「2年前とは、どのくらいの感覚なんだ?」
「2年前は2年前ですね。思い出せるならば、つい先日。忘れていたなら遠い過去」
「同じようなもんか」
思い出に浸る感覚は同じ。では時間は
「この世界は、個人の誕生日に意味があるのですね」
白い髪がドレスローザの風で揺れる
「ここでの36年とは長いものなのでしょうね」
短命な種族なら。瞳は使い切ったのか、インディゴ、プルシャン、アイアンブルー
「どうだろうな。ラオGは長いだろうな」
「ラオG様の年齢も、こちらでは青年です」
見た目は違いますが。と意地悪笑う
「長かったような、あっという間なもんだ。1年も36年も」
呟くように話す
もう寝るとサングラスに手をかける
「これからですよ」
ふわりと笑う
「まだ、まだ。これからです」
白いシーツが風で影を揺らす
「フフフ・・俺はまだまだ行くつもりだが」
その先を伝えてはいない。己の野望など軽く告げる気はない。信念だからだ
「進むのがリーダー。ついて行くのが仲間。前を向いててください」
道がわかります。白い睫毛が揺れる
「後ろにいるか」
「支えるのが私の特技」
ふふと笑う
「迷わず手を差し出せる距離にいてください」
「支えるためか」
「守るためにも」
ふっとお互いに笑う
「いい色です」
かちゃりと細い指が顔に触れる。嫌な気はしなかった。サングラスに指が触れる。取る気はない
「紫は、特別」
スッと離れる
「あなたがいる。支えたいと思えるあなたが今ここにいる。それだけで私は充分だと思うのです」
青白い光が彼女を照らす。ベイビーブルーが見え隠れする
「また一年です」
微笑むその青は、生まれた時を彷彿させる
それを抱き込む腕の温度は覚えてない
「改めて、お誕生日。おめでとうございます」
柔らかい瞳を見つめる
カチッと針が重なる。36年目の日々が始まった。