北澤 楽天


御年玉は幸でください



大晦日。楽しい番組が多い日。案外、お正月は特番ばかりで楽しくない。

「今年もあと、数時間かぁ」

のんびりとコタツに埋まりながら呟く。

「あ、紅白始まった」

実家に帰らずなぜか私の家に訪れている友人の合図とともにぬくりと起き上がってテレビにかじりつく。
アイドルから始まっていく紅白をのんびりと見ながらみかんを食べる。

「あ、年越しそば」

料理の音がするなと思っていたら、母が年越しそばを作っていた。
来年にはもう大人になる私たち。
実家に帰らずに年を越すことをするようになった友人は大人なのか。不良になったのか。どちらにせよ。一人でできるようになったということなのか。

「おお!きたー!」

友人の好きなアーティストがテレビに映る。
私はみかんを頬張りながらテキトーにみる。

「はい。そば」

お母さんがそばを持ってきてくれる。

「ありがとうございます」

「いただき」

食べかけのみかんを皮の残骸の上に置いてそばを食べる。

「あんたのそばって、魚入ってるんだね」

「ん?ああ。鰊ね」

「地方感ある」

親が他県の私にとってこれは普通だったが、友人には地方感があるらしい。わからなくもないが特にこれといって何かあるわけでもないので

「うまいっしょ」

と言って二人でそばをすする。

「御年玉貰いに行かないと」

「おばあちゃんの家に?」

「そそ」

地方の私は実家が近いのが羨ましい。
帰るのにも行くのにも金がかかる私は今年は帰らないことにした。春休みに帰る。
アイドルをバックダンサーに使う安っぽさを感じながら演歌を聞く。

「ねぇ。初詣行こうよ」

「ええ」

「行こうよ。近いじゃん」

「寒いよ」

「おみくじ引こ」

「いいけどぉ」

ごちそうさまとそばを食べ終わる。
ぼうっと見てたら、いつのまにか結果発表になっていて、ああ。今年も終わるなぁと適当に食べかけのみかんを頬張った。

「あ」

番組を変えずにそのままにしていたら、鐘が鳴っていていつのまにか新年になっていた。

「あけおめめー」

「ことよろろー」

相変わらずののんびりした挨拶をした。

「さ!初詣行こう!!」

「ええ」

「いいじゃん。家の近くにあるでしょ」

「あるけど」

少し山の上にある神社。
行こう行こうと騒ぐ友人にため息ついてみかんを口に放り投げた。

「わかったわかった」

お母さんに言ってくるといえば、もう寝るねと言われた。いや、別にいいけど。

「あ、屋台」

「さっき、そば食ったやん」

「いや、それとこれは別」

「えぇ。まあ、いいけど」

やっぱり神社は混んでて、でも会話をしていたらいつのまにか順番が来ていて

「五円五円」

「ご縁がありますようにってか」

「そそ」

私も友人と一緒に五円玉を投げて二礼二拍手一礼。
おみくじを引こうと友人は楽しそうに手を引く。

「何願ったの?」

「言っちゃダメなんだよ」

「あー、そうやった」

おみくじを引いて2人で巫女さんから札をもらう。

「せーの」

で。2人で開く。

「やった!大吉!!」

「うそん。私も」

今年はいいことがありそうだと笑いながら、友人の目当ての屋台に行く。

「いやぁ。美味しい」

「よかったね」

結局屋台にやられて2人でベビーカステラを食べながら歩く。
家の帰り道は静かで暗い夜道だった。

「今年もいい年になるといいなぁ」

「そうだね」

今年はどんな一年になるんだろう。どうやって大人になるんだろう。よくわからない。
高校を卒業して別れたけどまだ一緒にいる友人。これからも一緒にいられるんだろうか。

「ずっと一緒だといいね」

私がそういえば、友人も笑って。

「そうだね」

と返した。

「彼氏ができますよーに」

「ますよーに」

「幸せになれますよーに」

「幸せってなんだよー」

空に向かって願望を言う。白い息が真っ黒の夜空に消える。
星がチラリチラリと見える。
また生きながらえたなと思いながら最後のベビーカステラを頬張った。

「うん。楽しいといいね」

そう言って笑う友人。そうだなと私も笑った。
今年もなんだかんだいっていい年になるといいと友人の手を強く握った。


しーずん