「彼女が生まれた時、普通の家族だった。
しかし、彼女が5歳になった時。父親は可愛らしい娘と一線を超えた。
組み敷かれてる時、恐怖はあった。そりゃ初めては怖いさ。
それを羊のぬいぐるみが死んだように横たわって見てた。
父親はその行為を正当化した。
なにも知らない5歳の彼女はそれを信じた。それが世間では父親から性暴力を受けていたとしても、彼女は父親から愛だと喜んでいた。
もちろん、愛はあった。
それを許さないのが、母親だ。
母親は彼女に嫉妬した。
自分ではなく、娘とヤるなんて。と」
「すごいよね。そんなに愛せるなんて」
「母親は父親が帰ってくる間、彼女を殴った。憎しみに身を任せて、殴った。殺そうとして、首を絞めた。
死にそうになって、目が閉じて来た時、殴られた衝動で離れた羊のぬいぐるみが己の血で少し汚くなっていたのを覚えている。
それを知った父親は何度も母親を叱った。
母親は怒られたことに、喜びを感じた。
そういう趣味ではなく、父親が自分に一瞬でも目を向けてくれた。一瞬でも興味を持ってくれた。と喜んだ。
それから母親は彼女を痛めつけた。
死なない程度で、殴った。首を絞めた。
彼女は、母親の暴力が一番の恐怖だった」
「それでも父親は彼女を愛した。
一瞬では喜べなくなった彼女は、怒りに火を灯し、父親に、愛せ。と叫んだ。
父親は愛していないと言った。
母親は彼女の事を殺そうとした。それを父親は怒り母親を殴った。
母親は怒りに狂い、父親を刺した。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も刺した。
そのまま、自分の首を切った。
親が死んだことに彼女は、なにも思わなかった。
その時彼女は、12歳。
世間では父親と性行為をしない。母親は殴らない。
と知っていたから。
彼女の心には深い深い傷がついた。
性行為とは、キモチいいのだと。クラスの子が言っていた。父親は自分が気持ち良くなりたいが為に自分を犯したのだと。正当化したのはその所為だと。
裏切られた彼女の安心できるところは、父親との行為が終わった後の、ふわふわの布団だけだった」
「だから彼女は、母親が死んだことに安堵した。
しかし彼女は、父親がいなくなった事に何も感じなかったんだ」
「父親に裏切られた彼女は、父親を憎んでいたわけではない。
幼い心で理解した。
父親は愛してくれていたのだと。
しかし、傷は深い。
彼女は父親を父親として好きだった。父親のように愛していた訳じゃない。
そもそも父親の嘘を信じなければ、母親に恐怖を植え付けられることはなかった。と
そう思うだけで、憎むという感情はないんだよ」
「数日経ち。彼女が13歳になった頃、学校に何年も行っていない。連絡もない彼女の家に、保健所の人が来た。
保健所の人は死体と化した親を見て警察を呼んだ。
彼女の事はニュースに載ったが、世間では一部の虐待として扱われた。
彼女は、一人になった。
彼女の居場所はない。
安心できるところは、未だ、布団だけだったんだ」
「彼女の孤児院は毎年、ハロウィンやクリスマスになるとパーティをするんだよ」
そのハロウィンに参加した時、彼女は何も思わなかった。
ただ、つまらないと思った。それで、帰ろうとした時、ある若い人が言った。
「なにしてんの?」
「帰ろうと思った」
彼女はその人が誰か知らない。
若い人は、びっくりした顔からニコニコと笑った顔をして
「じゃあ、遊ぼうか」
と誘った。
ズルズルと引っ張られるままに屋敷に入ると
「ね?君さ。あの子でしょ。この前ニュースに載った。両親が死んだ」
彼女はニュースを見ないし、よくわからないので、首を傾げた。
「君さ。かわいそうだね」
もっとわからなくなった彼女は
「なにが」
と聞いた。
「彼女は、その若い人から可哀想だという事を教えられたんだ。
親が死んだことじゃない。彼女自身が悲しいと思わない事を哀れんだんだ。
だから、彼女は自分が可哀想だという事に気付いたんだ」
「彼女は、絶望した。
自分が可哀想だと思わなかったから。その事に絶望した。
彼女は布団の中で蹲った」
「その時、彼女は聞こえたんだよ。優しい声が。
彼女はその声に問うた」
「私は、可哀想なんです」
『知ってるわ。貴方はいつも辛いと私に寄り添ってきたもの』
「なんで、、」
『ねぇ。貴女。辛いでしょう』
「辛いって、なに」
『それを感じないくらい、辛いのよ。
ねぇ。私は貴女の味方よ。いつでも貴女の側にいるわ』
「ねぇ。私はどうしたらいいの。何もしたくない。でもそれじゃあ、ダメな気がする」
『不安になることなんてないわ。ねぇ。でもねぇ。あまり焦ってはダメよ。焦らずに自分を押し殺す事をなく、ジクジクと首を絞めていくの。そしたら貴女は何も怖くないわ』
「怖いなんて、あれから感じたことない」
『嘘よ。今感じてるわ。焦りというのは恐怖よ。だから、ゆっくりね』
「ゆっくり」
『そう。ゆっくり、ゆっくり』
「彼女は怖いもんなんてないさ。恐怖を感じないんだ。死ぬとなっても、生きるとなっても、恐怖なんて感じない。
そうさ、彼女は何もなくなったんだ」
「ねぇ。私。とても安心してるの」
「そう。そうだよ。安心」
「あんしん、、、あんしん」
「彼女が見つかったのは、物置部屋の隅の隅さ。そうさ、、だーい好きな布団の中にいたんだよ」
羊に癒された。
「あんしん、、だよね、、ねえ。貴女、、」
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