初期ネタ→
闇丸さんが村に祀られてるドドンゴの大太刀を奪って山を荒らして村娘を人質にとってなんやかんやあって、村娘を返す代わりに晴矢とルイルを捕まえてるところ。
(またもや1部H×Hトレス。ちょっと競りのお話に続いてる)

闇丸さんを勝手に想像してます!ごめんなさい!










廃墟と化したとある一室。窓はなく出口は1つの扉のみ。扉の隙間からは今では西日が入り込みだいぶ時間が経過している事が分かる。朽ちた心許ない家具が散乱してる中ルイルと晴矢は瓦礫の上に腰掛け並んで座る。

「……((あれ、風介におしえてもらったのって、ヤキヅケとヒラキと、…あとなんだったかしら))」

そんな緊張感がある中、ルイルはふとこの場にそぐわない思いついた事を小さく口にする。晴矢は聞こえてはいるものの反応はしない。それでもルイルはそのまま続ける。

「((ヨコヅケ…。いや、何か違う気がする。昔の接着剤を熱して溶かしてもう一度着けるのがヤキヅケで…))」
「((ルイル))」
「((なに?おもいだした?))」
「((俺が囮になる))」

先程から顔を伏せ黙っていた晴矢が小さく呟く。

「((その隙にお前だけでも逃げろ))」
「……。なに言ってんの?」

やけに真剣みを帯びた声だからこそルイルは一瞬の間を空けて顔を顰める。あまりに身勝手な物言いにルイルは声量を合わせず素の大きさで答えると、扉の前であぐらをかいていた見張りが鼻で笑った。

「全くだ。やめとけ」

見張り番の風丸(闇丸)は、冷や汗をかいて睨んでくる晴矢に向けて口角をあげながら言う。どうやら会話は全てつつぬけだったらしい。

「今の状況とオレの力量を計り知れない程バカじゃないだろ。隙なんか作らん」
「(お前がそれ言うのかよ)」

風丸がいる扉の反対側で腕を組み佇んでいた不動がすかさず内心でツッコミを入れた。万が一風丸が2人を逃した場合の保険として駆り出されていたが。
はぁ…と不動はため息をついた。
星の力なんて面倒な能力を持ってる勇者と厄介な炎の力を持つ脳筋馬鹿の勇者の片割れ。いくら退魔の剣の力を一時的に抑えてるとはいえ奴らの力は計り知れない。それをコイツは分かっているのか…。額に手をあて頭を悩ます。

一方で晴矢は、この場にいる誰よりも焦燥感に駆られていた。
風丸に言われた事も、分かりきってる。目の前にいる敵は言動や思考などは読みやすく手はうちやすいが、純粋な力の差は相手の方が晴矢達よりも遥か格上だ。

「(出口がひとつしかない見通しのいい部屋。こっちの言動はつつぬけ。一分のスキも見せず俺たちを監視する敵。…初太刀の範囲内に踏み込めば致命傷は確実)」

手に力がこもる。
―――だからこそ、意味がある。

「晴矢、何考えてるの?」

立ち上がり一歩踏み出した相棒の肩をルイルが掴む。斜め後ろから見れる彼の表情はよく見えないが、きっと余裕のない顔をしているだろう。

「…アイツの初太刀は俺が死んでも止める。その間に逃げろっつってんだよ」

ぷちん、と我慢していた理性の糸が切れた。
衝動のままにルイルは晴矢の頬を平手打ちする。すぱーん、といい音が辺りに響き晴矢の思考は一旦白色に写り変わる。すぐに我に変えると晴矢も怒りのままに怒声を発した。

「何しやがんだてめェ!!」
「勝手なこと言わないで!!」
「ああ?!」
「死ぬとか簡単に言うなっていってんの!!」
「んだとォ?!」

この場に置かれてる状況を無視し二人は感情のままに声を荒らげる。

「オメーだってさっき言ってただろ!!」
「私はいいの!!でも晴矢はダメ!!」
「〜〜〜〜っはぁぁ?!」

「ぷっ、っはははは!」

我慢できなくなった風丸も大声で笑い始めた。なんてワガママな勇者だ。自分はよくて相手はダメだと言う目の前で繰り広げられているバカな会話に涙が出そうだった。

「死ぬ気でやんなきゃこっから逃げられっこねーーんだよこのバカ!!人の気も知んねーで勝手なこと言ってんのどっちだ!!」
「ええ知らないね!!バカだもん!!」
「あーあー全くだ。お前ら面白ェな」

けどな、と風丸が鞘に手をかける。

「なめんなよ。先も言ったが、この状況。よく分かってるんだろ?お前らは今、フォーソードも道具も何も使えない。ここにあるのはオレが使う最強のドドンゴの太刀のみ。…ここに来る前に見ただろ?こいつの力」

一振で何人と切れ伏していたのは、未だに鮮明に覚えている。そんな物が敵の手の内にあってはならないと足を踏み入れたが矢先、返り討ちにあっている状況なのだ。もし、ここにいるのが機転が利くヒロトと風介ならば…。
風丸は声を低くし言葉を発する。

「オレが抜けば、お前らは死ぬ」

抜く…?

―――別のところから宝をとりだした!
―――ぴんぽーん
―――大胆な発想がすぐ出来る晴矢だからこそ、だろ?


「あっ!!」

またも大声を出したルイルの顔は、今度はうってかわり謎が解けたかのようなスッキリした面持ちで晴矢に詰め寄った。

「思い出した!!ヨコヌキ!ヨコヌキだわ!!」

先程の空気をぶち壊したルイルにあっけらかんとしている晴矢にも容赦なく顔を近づける。

「ヤキヅケとヒラキともう1つが、ヨコヌキ!晴矢が木造蔵の謎を解いたヤツよ!!」

思い出せと言わんばかりに目を瞬いて凝視する晴矢を見つめる。1拍間が空き「あ、」と晴矢が声を出す。「思い出した?」ルイルが確認がてら再度聞くと、口角をあげた晴矢。

「思い出した思い出した!んな簡単な事早く思い出せてりゃ平手打ち喰らわなくてすんだのにな〜!」
「あれで目が覚めたでしょ!」

わいわい騒ぐ子ども2人に置いてけぼりな風丸が、声をかけようとした瞬間。
キッ…、と目つきが鋭く雰囲気が変わった2人が風丸を振り返り、睨む。

「スッキリしたところで、」
「行くか」

2人が戦闘態勢の構えをとる。バカが…と風丸も鞘に手を添えた。ルイルと晴矢が同時に動き出した瞬間に引き抜こうとしたが、

互いに背を向けて分かれた2人が走り出した先は、両端の壁だった。
地を蹴り勢いを乗せ強烈な飛び蹴りを双方の壁にぶち込み穴を開けたのだ。

「(コイツら壁を…!?)」

予想していなかった動きに遅れをとった風丸は焦った。どちらを追うかと悩んでいる横から、不動が一足早くに動き、盛大なため息を吐きながら晴矢の後を追った。



memo:
見事にぶち抜いた壁から脱走した晴矢とルイルの逃走劇は今後に続く!!!!!!!!(力尽きた)
平手打ちしてごめん、みたいなアフタートークとか夜会話が読みたい…!
この後ユクちゃんが来て風丸さんと何かしらのアクションがあってほしい!