初期案→内気なモブ男(田山くん)が、瑠流から借りていた筆記用具一式を返そうとするも、次々現れる彼氏(語弊)のせいで声をかけられずにいた。




講義前の10分前。さも当たり前のように瑠流の隣に座っている治。

「眠い」(大きな欠伸)
「俺は注意したからな。早く寝ろと」
「…治の忠告通り、晴矢と風介ほっといて先に寝てれば良かったわ」
「ヒロトに連れてかれなければあのまま徹夜だっただろ」
「だ、だってあと少しで2人に勝てそうだったんだから」(3人でス○ブラやってた)
「……。まったく」(瑠流の両目を大きな手のひらで隠しながら)
「少し寝た方がいい。課題はやってあるんだろう?」
「ええ、ぬかりないわよ。…治の大きな手は安眠効果があるわね〜。それじゃ、ちょっと仮眠とるね」

机に突っ伏して、髪が乱れている事も気にせずすぐ夢の中へと落ちた瑠流の髪を自然と直し、治は読みかけの参考書に目を落とした。

「「「(あの2人付き合ってるな)」」」

ザワザワとするまわりの学生達は確信した。
瑠流と治の後ろに座る田山も完全に返すタイミングを逃し、肩を落とした。


***


講義が終わり、瑠流はリュウジのいる棟に移動。一緒にお昼を食べる約束をしていた。

瑠「じゃ、またね」
治「ああ。迷子になるなよ」
瑠「…1度覚えれば大丈夫よ」
リ「瑠流〜〜!」
治「案内人がきたな」

駆け寄ってきたリュウジは瑠流に抱きつきニコニコ。

リ「治〜時間大丈夫?もう俺が来たから安心して戻っていいよ!」
治「若干の心配はあるが、まぁリュウジの方がこっちは詳しいからな」
リ「まっかせてよ!いこ!瑠流!」
瑠「ふふ、よろしくね!」

瑠流の手を引っ張り足取り軽くキャンパス内を移動する。

昼休憩中。

「―――でさぁ、舌っ足らずすぎて教授も何言ってるか分からなくて。聞き取りができる頃には俺もう卒業してるんじゃないかって」
「あははっ、そっちは癖が多い人が多そうね」
「多すぎ!瑠流の方もいるんでしょ?」
「うーーん、まぁこだわりが強そうな人はたくさんね」
「だよね〜〜〜。あ、瑠流のそれ美味しそ、俺も食べたいー」
「ん?いいよ、はいあーーん」
「…ん!美味い!」
「私もリュウジの一口ちょーだい?」
「いいよ〜、はいあーーん」


田「(???あれが本当の彼氏なのか??)」

回りも気にせず恥ずかしげなく互いに食べさせあってる2人を遠くから見てる一般男性田山は冷や汗をかいていた。
それにしても、あの緑頭のやつ、デレデレしやがって、羨ましい。



***



風「見つけた」
瑠「!もー、食べたいなら風介も買ってきなさいよ、アイス」

瑠流が食べていたアイスバーを後ろから顔を出した風介が一口かじる。そのままもたれかかるように瑠流の首に腕を回しバックハグ。

リ「あれ?風介がいる、ってことは」
風「もう4限が始まるな」
リ「やっっば!!じゃあまたね瑠流!」

光の速さで離れていくリュウジに手を振る瑠流。

「風介は4限が空きコマなんだっけ?」
「そ。瑠流はもうないんでしょ?」

アイスをかじり、そのまま風介の口まで持っていき風介も当たり前のようにまた1口かじる。

「散歩しよ」

唐突な彼の言動にも瑠流は気にもとめず風介に手を引かれるままに、敷地内を散歩する。
ふと、瑠流の顔を覗き込むように距離を詰め風介は呟く。

「ヒロト、忙しそうにしてるけど」
「?…(気にかけてくれたのかな)そうね。でもこうして皆と日中会えるし、楽しいし、寂しくはないわよ」

それに家に帰れば会えるしね、とニコリと笑う。

「瑠流が寂しくしてなければ、いいや」

頬を緩ませ目を細めて風介も笑う。

「言っとくよ。ヒロトとキャンパスライフ楽しみたいのにどうして会いに来てくれないのって泣き叫んでたって」
「ちょっと!私いつそんな事言った?!」
「顔がそう言ってる」
「う、うそ!」
「半分嘘で半分ほんと」(声を抑えながら笑う)
「……風介、それホントに言わないでよ」
「はーい」(棒読み)

顔を赤くして怒った彼女に叩かれようと、笑った顔は崩さずご機嫌な風介。

1歩離れた場所にて。
「ちょっと見た?あの涼野くんの顔」
「あんな笑ってるの初めて見た〜〜〜。あれは完全に惚れてる〜」
「彼女も可愛いし。付け入る隙がない……というか距離近すぎて見てるこっちが恥ずかし」
「(わかる。今だってち、ちゅーしちゃうぐらい顔近いじゃん。アイツが本彼なんだな)」

風介に近付こうとしていた意識高い系女子達の会話を物陰に隠れながら聞いていた田山。
というか俺、なんでこんな隠れてコソコソ追いかけてんだ?


***


サッカーグラウンド前に到着。
風「はい着いた」
瑠「おーー。この感じ、なんだか懐かしいわね」
風「なんだかんだ忙しくて、瑠流は今まで来れなかったもんね」
晴「お、来るの早いじゃん」

ちょうど練習に入ろうとしていた、ユニフォーム姿に着替えた晴矢と出くわした。

瑠「……」(じーっと晴矢を上から下まで見つめる)
晴「な、なんだよ」
風「似合わないってさ」
晴「まだ何も言ってねぇだろ」
瑠「ううん、似合ってるよ。晴矢かっこいい」

本心から出た言葉と分かるからこそ、晴矢は小っ恥ずかしくなり瑠流の頭髪を掻き乱し「どーも」と笑う。

野暮用があると言って風介と別れ、さて、と晴矢に振り返ろうとしたらぞろぞろと他の部員達がやってきた。簡単な挨拶を済ませ、晴矢の先輩である長身の男が瑠流をまじまじと見て口を開く。

「いやーまさか晴矢にこんな可愛い彼女がいるなんてなー」
「すんませんね」
「っかー余裕こいててムカつくー!」

違う先輩に茶化され晴矢は瑠流の肩を引き寄せドヤ顔。悪ノリする晴矢に、ちょっと、と睨む。

「誤解するでしょ止めてよ」
「へーへー」
「……え?付き合ってないの?」
「付き合ってはいないんすけど、」
「え!ほんと?!じゃあさ、連絡先交換しよーよ」
「俺も俺もー!」

彼女ではないと分かった瞬間、わっと詰め寄ってきた部員達。こうなるよなーと分かってたからこそ晴矢は瑠流をこの場に連れて行きたくなかった。
だが、逆手にとってはどうだろうか。

「生憎なんですが先輩達」

抱き寄せてる手に力を込めさらに身体を密着させる。瞬きする輩を前に晴矢は口角を上げた。

「コイツはうちのトップの嫁、兼俺達の大切な家族なんで、安易に手を出したらタダじゃすまねぇっすよ」

威圧感たっぷりな後輩に周りの男達は一瞬たじろぐ。目が本気だ。
晴矢は、前から瑠流に(出会い的な意味で)会いたいと言っていた先輩達に敢えて目の前で宣言してやろうと、瑠流をここに呼びだしたのだ。
お前たちが思ってるほど気安く触れられねぇし何処ぞの馬が近づけば俺たちが黙ってるわけも無い。関わるのはやめろと。

「は、晴矢…。嫁はまだ早いから」

顔を赤くしながら呆れ気味に言う彼女の姿は、今この時だけは晴矢だけが独占している。この多幸感は彼女といる時だけ感じる特別なもの。これからも、この先も。正式な夫の事を思うと背徳感を覚えなくはないが、他4人も思っていることだ、夫もあんな性格なだけあり習熟し信頼し、家族として一緒に居ることを何よりも大切にしていたから。
なら、二人きりの時ぐらい、いいだろ。晴矢は自問自答の末にたどり着いた答えに全力で首を縦に振る。

「早いんなら俺が先にもらってやるよ」
「…それなら早くプロ入りして私を攫っていくしかないわね」
「上等じゃねぇか。元からそのつもりだ」
「え?あ、いや、冗談だからって晴矢、」

「「「(何を見せつけられてんだろ)」」」
「(…こんなことしてる俺、いつか殺されるんじゃないかな)」

残されたサッカー部員達はそそくさとグラウンドへと移動する。
事情を理解した物陰に隠れている田山はひとり冷や汗を拭う。

そんな田山の肩に手をおいた物が2人。振り返ると、ニコリと笑う爽やかな赤髪の整った顔と、無表情の先に姿を消していた銀髪の端正な顔が田山を見下ろしていた。


***



瑠「えっ?!わざわざコレを届けるためにここまで来たの?!」
田「ほんっっっとにごめんなさい!!ストーカーじゃないんです!!ほんとに、ほんとーに!!」(勢いよく何度も頭を下げる)
ヒ「…あー。話が一方通行だ。誤解はもう解けたんだしそんなに謝らないで」

練習に戻った晴矢を見送り、段々と日が落ちてきた頃。迎えにきたヒロトと野暮用が済んだ風介(田山の存在を薄々感じておりヒロトと組んでとっ捕まえようとしていた)と合流したが思わぬ人物と一緒だった。

瑠「もーー何したの2人とも。怯えてるじゃない」
ヒ「何もしてないよ。『うちの瑠流に何か用ですか?』って聞いただけ」
風「私は何も言ってない」
瑠「(お互いに相当な圧をかけたんだろうな)でもヒロトの言う通りもうそんな謝らないで」
田「……はい」
瑠「同じ学部なんだし、気軽に声かけてね」
田「……はい(前方の男2人の視線が痛い)」

リ「瑠流ーーっ!おまたせっ!」(勢いよく抱きつく)(リュウジ、治とも合流)
瑠「わっ、と。おかえり、リュウジ」(抱き返す)
治「取り込み中だったか?―――お前は確か、田山?なんでこんな所に」
晴「なになに?集団リンチしてんの??」(練習終わりの晴矢も合流)
ヒ「実は、かくかくしかじか」
リ「はーーー。そんなに俺たちのガード強かった?」
治「(並の輩なら瑠流が1人の時を狙うのは真っ当か。それと内気な性格が故面倒事になったか…それとも)……何か下心でもあったんじゃないか?」
田「!!!めっ、滅相もございません!!!」
晴「じゃなきゃここまで追ってこねぇだろ」
風「何か言い残したことは?」(1歩近づく)
田「ひぃ!!(殺される!くそー!ヤケクソだ!)そ、奏条さんって!一体誰と付き合ってるんですか??!!」

「「「…………」」」

6人全員が顔を見合わせる。
最初に吹き出したのは中心にいる瑠流だった。

「そうねぇ…」

悪戯心が湧いたが、ふと隣のヒロトに目配せをする、察した彼は手で口元を多いながら瑠流の耳元で呟く。

「お好きにどうぞ、俺のお姫様」

離れ際に頬にキスを残した彼氏なりの独占欲の行動に若干の違和感が残る。彼のことだ、きっと私のワガママに我慢してるに違いない。頬だけの戯れにそう思った瑠流もヒロトに耳打ちをする。

「ヒロトが1番大好きだよ」

目を瞬かせてるヒロトを見てニヤニヤ笑ってたら「隠れてイチャイチャしてんじゃねーよ」と瑠流の肩を引っ張る晴矢と、「…何ちょっと照れてんの」と頬を染めたヒロトの肩を風介が掴み、カオス組によって距離が離れてしまったが。
一応彼氏の許可も貰ったことだし私の大切な家族を改めて紹介しよう。

「治、リュウジ、風介、晴矢、ヒロト。私の大好きな家族で、」

晴矢から離れ、風介に捕まっているヒロトを剥がし、腕に抱きついて、こう言った。

「彼氏かつ未来の旦那様は、ヒロトだけ」

はにかんで笑った高嶺の花は、内気な一般男性にとって、眩しく、尊く、可愛らしすぎて。

やんごとなき素晴らしい家族を前に田山は自然と両の手を合わせていた。







memo:途中からよく分からなくなって行った(笑)
でも押せ押せな晴矢かけたから満足!!!!
田山君にはカラオケで『高嶺の花子さん』でも歌ってもらおうかな!
ネタの提供マジで感謝です!!<(_ _)>