裏口にある城門前の階段で小さい背中が丸まっていた。
城下町を一望でき一通りも少ない、そして吉良ヒロトとルイルが過ごした家への帰路でもあった道。少し降りた所には彼等の思い出が詰まった一軒家も見える。
月夜に照らされたルイルの髪が風でなびいた。
エナは親友を見つけられた安堵感から、小さくため息を吐く。何を言うでもなく、隣に同じように腰掛けた。
「エナ、わたし、おかしいのかな」
膝に顔を埋める勇者がぽつりと呟く。エナは親友の背中を擦りながら優しく問いかける。
「聞かせてほしいな、ルイルの本当の気持ち」
「私、好きになるって気持ちがどれが本当か分からない」
「うん」
「3人にね、好きだって、言われたの」
「そっか」
「…。驚かないの?」
「ふふ、知ってたもん」
「え、うそ、いつから?!」
勢いよく顔を上げる。呆れ半分困ったように笑うエナは、いつも通りの彼女だと改めてホっと胸を撫で下ろした。
「そういうところだよ、ルイル」
「エナまでそんな事言うの、いじわる」
「ごめんごめん。それで、悩んでるんだよね」
「…うん」
親友の手を握りながら、素直な気持ちを言葉にした。
「ずっと好きだと思っていたヒロトが本物のヒロトに対してものか、分からなくなった時があった。けど、大切な事に気づいたから。他の誰でもない、お兄ちゃんでもない、ヒロトが好きだった」
「そっか。…お互い、同じ気持ちだったんだね」
「うん。嬉しかった。でもね、」
握る手が微かに震え、言葉が途絶えた。
言葉を促さず、優しく手を握り返し、寄り添うと、ルイルは小さく言葉にしていく。
「ずっと喧嘩しててお互い意地っ張りでいつも勝負ばっかりしてた晴矢はね、私が無茶ばかりしてたからか、本当は心配性でさ。いつも気にかけてくれてた。不器用だけど強くて優しくて、自慢の相棒なの」
「小さい頃はよく取っ組み合いしてたもんね」
「あはは、恵那も見てたね。……いつから、晴矢の事も好きになっちゃったんだろうなぁ」
顔を上げ夜空を見上げる。
「……。風介はね、いつも隣にくっついてたくさんのお話をしてくれた。たくさん、助けてくれた。やっぱり1番風介がずるい。ずっと前から、私を守ってくれてたのよ。今まで忘れてたのに…大好きだった。昔も、今も」
「瑠流は、大切な3人を、好きになったんだね」
「おかしいよね」
「……。私ね。ルイルを勇者にしちゃった事、とても、とても後悔してたの」
話の雰囲気が変わり、ルイルは再び顔を上げエナを見つめた。淡い光を放つ街を一望しエナはそのまま話を続ける。
「でも、そんな勇者なんて関係なしにあの3人は当たり前のように貴女の傍にいて。ルイルが誰だろうと、ルイルだからここにいる、って」
この絆は運命よりも強い、って言ってたのよ。エナがくすくす笑う姿とその台詞を初めて聞いたルイルは少し恥ずかしくなり視線を逸らす。
「あの3人だったからこそ、貴女はあなたでいてくれた。ルイルと共に過去を受け止め新しい道を切り開いていった。…これは貴女達だからこそ出来た事。だから、」
ルイルに向き直り、優しく微笑む。
「きっと、大丈夫」
もう答えは出てるでしょう?
勇者の両手は姫の暖かな掌に包まれる。
「幸せになってね、ルイル」
手を開くと、瞬く星がチカりと光っていた。
-----------------------------
解釈違いや捏造とかもいろいろ好きなようにやってしまった!m(_ _)m
共通イベントで、どのルートでもエンディング前には恵那たんの前で選択肢が出てきてそこで最終確定になるのかな〜〜みたいな妄想してたらいつの間にか書いてた(笑)
3人エンドや、吉良さんルートとかだと特別演出もあるかも??
最後は吉良さんも見守ってるよ〜みたいな感じです!