1期開始

久しぶりに外へ出ていた瑠流はテレビ中継にうつるFFの試合に没頭。
豪炎寺を見つけ、心が揺らぐ。

(かっこいいな…あんな風にシュートが決まったら、楽しい、だろうな)

同時に昔、サッカーを教えてくれた少女とよく似た生徒を見つけ、合致する。――あの子だ。

「気になる選手がいた?」
「!」

見入っていて盛大に驚いた瑠流。
帰りが遅い瑠流を心配して迎えに来たヒロト。目を瞬かせて次に小さく笑いだしたヒロトに「そんなに笑わないでよ」眉を釣り上げた。

ヒ「ごめんごめん」(感情的な瑠流が見られて嬉しい)
瑠「ねぇ、覚えてる?昔、瞳子姉さんが連れてってくれたサッカー体験の事。その時いた女の子が映ってたのよ」
ヒ「へぇ、なつかしいね。随分前だったけど…なんとなく見覚えがある。同い年の女の子なのにとても上手だったね」
瑠「ええ。私、この子にたくさん教えてもらったの。だから…なんだか色々思い出しちゃって」
ヒ「……。会ってくる?」

いつもの瑠流が見られた事が嬉しく、素の彼女を引き出そうと促す。

瑠「え?」
ヒ「ここのところ、瑠流は休む間もなく仕事や練習もしてるだろ?父さんも評価してるだろうし、ちょっとぐらい許してくれると思うんだ。視察、ってことで俺からも説得してみるよ」


memo
・ヒロトが知っている、瑠流がサッカーの練習をしているというのは表立ってのこと。
・瑠流のサッカーの実力は平凡。知識や実力のある選手の動きは頭に入ってはいるが身体が追いつかない。


―――
恵那たん下校時、河川敷近く。夕方。
転がってきたサッカーボールの先には……

「あなたは…?」
「久しぶり。実栢恵那」
「!も、もしかして…ジュニア体験会で来てた、女の子?」
「うん。奏条瑠流よ」
「奏条、瑠流さん…!わ、わたしあの時、一緒にサッカーが出来て、とても楽しかった事、覚えてます!」

また会えて、嬉しいです。にこりと笑う彼女を前に瑠流は目を瞬かせる。

「ここら辺に引っ越して来たんですか?」
「…ううん。フットボールフロンティアの中継で、あなたが映ってるのを見かけて…それで、気になって…会いに、きた…というか、なんというか」

不審に思われてもおかしくない動機だな、と言ってる途中で気づき尻込む。その様子を見かねて恵那は、すべて聞くでもなく、足元に転がってるサッカーボールを手に取り「そうだったんですね」微笑む。

「だっ、だから…その、また、サッカー、教えて…ほしい、んだけど…」
「!もちろんです!」

夜も遅くなってきた為今回は少しだけ。

「ありがとう、恵那」
「そ、そんな。大したことは…」
「また、来ても…いい?」
「はい!部活後になってしまうんですが、奏条さんが良ければまたここで」
「ええ。…またね」


―――
2回目練習 その後
ル「ねぇ、どうしてそんなにニコニコ笑ってるの?」
恵「え?!あ、…そ、そんなに笑ってます?」
ル「ええ、にっこりと」

「(…)昔、体験会で奏条さんと一緒に練習、しましたよね。性別は関係ないないとはいえ、やっぱり同性の子って当時は少なかったので…それもあってすごく、嬉しかったし、何より、楽しかった。それが数年後また、一緒にサッカーボールを蹴ってる。昔を思い出して、楽しくてつい、笑ってるのかも、です」

締りがなくて、すみません…と恥ずかしくて顔を伏せる。

「……私も、あの時の事をよく覚えてる。だから、また会いに来たの。……サッカーって楽しいものだって、忘れたくなくて」
「奏条さん…?」
「ちょっといろいろあってね。でも、おかげで吹っ切れたわ」

自分の本当の気持ちを思い出し、それを認める。その気持ちに嘘はない。
瑠流もにりこりと笑って

「やっぱり、サッカーは楽しいわね!」


memo
・↑その後「私の事、瑠流って呼んで」「敬語もいらない」


―――
楽しいと認めたこの気持ちは本物だ。私の心の奥にある気持ちに偽りない。それが分かっただけで十分だった。
帰宅してヒロトに伝える。

ル「サッカーで人を傷つける事なんて、したくない。皆にもそんな事、してほしくない」
ヒ「……うん」
ル「全てはエイリア石が降ってきた事が原因だもんね。それで皆がおかしくなった」
「これから計画が本格化して沢山迷う事があるかもしれない。何が正解かも分からない。でも」
「でも、それでいいのかなって、思えた」
「この気持ちと向き合いつつ、皆と一緒にいる。皆の為に…父さんのために」
「ワガママかしら?」

困ったように笑った彼女に、ヒロトは首を横に降る。

ヒ「瑠流らしいよ」
「昔から、正しいことをしようとするけど、人の気持ちに敏感で優しすぎて、不器用で。誤解される事もあった君だ。…気持ちに真っ直ぐに向き合ったワガママ瑠流って無敵じゃないかな」
「瑠流は瑠流だ」
「でも、それだと疲れちゃうからさ。俺が半分荷物を持つよ」

半分でも、君は怒るかな?ヒロトが笑う。

ル「何言ってんのよ、もう半分あなたに担がれてるとおもってたんだけど」
ヒ「え?」

ル「悩んでいる私でも私らしいって。あなたが言ってくれた事よ。ヒロトが認めてくれたから、今の私がいる。あなたが居なきゃ、今の私はいないわ」
「それじゃフェアじゃないからね」
「ヒロトは優しすぎるから」
「私よりも悩んで迷っても人前で弱音を吐かないでしょ?」
「ヒロトが背負ってるものも半分もらうから、ヒロトもワガママになってくれる?」

1人で自己中にはなりたくないわ、照れながら少女は笑った。

――ああ、好きだ。
この瞬間少年はすとん、と理解した。
少女が自分自身の気持ちに正直になった事で表れた、ヒロト自身の価値観をヒロト本人が自覚する。
ヒロトは自分の感情を自身で受け止めた。

ヒ「いいねそれ。じゃあ色々と落ち着いたらデートに行こう」
瑠「ええ、いいわ、よ…ってえ?!で、デート?!いきなり?!」
ヒ「何か目標があった方がお互い頑張れるだろ?俺にとっての楽しみだからさ、付き合ってね」
瑠「…コホン。わかったわ。でもそんなものでいいの?」
ヒ「そんな事だから、良いんだよ」


memo
・瑠流は今後は素直な感情と、ソルジャーとしての感情を使い分けていく
・ヒロトの吉良への迷いや苦悩も晴れ、自分の思うままに行動する事が多くなる(今後の、円堂との接触等)
・感覚的に瑠流が好きだったが、自我が本物だと自覚し、好きという感情を理解する。


―――