「―――そういや、飛鷹が屋台だすっていう場所はどこだったっけ?」
「ここから近いみたいですよ。オープンは9時なんですが…もしかしたらいるかも?」
「アイツのことだから早めに来てんだろ。顔出すか!」

今の時刻は7時。飲食店や屋台の開店準備事情など把握はしていないが、元チームメイトの性格からして準備にとりかかっていてもおかしくないだろう。

「瑠流との待ち合わせもそこから近いですからね」
「10時だっけか?」
「はい。だいぶ時間に余裕ありますね」
「そんときゃまたサーフィンやろうぜ!」
「そうですね!……ふふ」
「『円堂くんと同じ言い方』って思ったろ?」
「はい。やっぱり海の男版円堂くん、ですね」
「アイツらも今頃何してんだろ〜な〜」
「みんなプロの世界ですもんね…すごいなぁ」

時々連絡は取り合うものの、大学に入ってからはからっきしで。多忙で鬼のようなスケジュールだと思うと気軽に連絡をするのも気が引けてしまう。そんな中、地元である雷々軒で働く飛鷹とは常連客の2人にとって顔を合わせる事も多かった。
先月来店した時に綱海と海に出掛ける事を話すと、今年はそこで屋台をだすから是非来てくれ、といきいき知らせてくれた。
『屋台、と言っても海の家に邪魔する感じだな』
『?厨房を借りるの?』
『ああ。その海の家でもラーメンは提供してるんだが、店長の好で是非雷々軒のラーメンを出してくれって』
『っか〜!このうめぇラーメンがすぐ食べられるなんて最高じゃねーか!』
『塩分を欲してるからこそ真夏に関係なくラーメンが美味しく感じる、だろ?』
『それもあっけど、雷々軒っつーのがたまんねぇ。ぜってぇいくから超絶美味いラーメン頼むぜ!』
『わたしも楽しみにしてるね』
『…。ふっ、ああ、まかせろ』
海の家用にアレンジされた特別メニューもあるらしく、早く食べたくて仕方ない綱海に、待てをしていたのも今日で解禁だ。

「その海の家も人気みたいで。一応瑠流達の席も入れて予約も取ったんですよ」
「お、サンキュー!ぬかりねぇなー恵那は」
「楽しみにしてましたから。田山海の家って言って、ふわふわのかき氷も有名なんです」
「かき氷か〜。なら違う味頼んで半分こしようぜ!」
「わっ、いいですね!」




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「うきわ、パラソル、レジャーシート、クーラーボックス、あとは…それとこれと」
「ウォーターガンもばっちり」
「オッケー!忘れ物なしね」
「そんなでけぇ水鉄砲いつ使うんだよ…」

水鉄砲を担いだ風介のドヤ顔にため息を漏らす。陽の光で反射する銃口がチカチカしてウザイ。アホらしいとボヤきながら晴矢は瑠流と共に車から荷物を降ろしていく。「晴矢のサングラス、あったわよ」朝からテンションが高い瑠流に渡された丸淵色眼鏡。上機嫌すぎる彼女に晴矢は笑いながら受け取った。

「サンキュー。随分楽しそうにしてんじゃん」
「当たり前でしょ、海よ海。しかも恵那たちも一緒なのよ?楽しくないわけないじゃない」

胸を張って既に頭に掛けていたサングラスをかけ直した瑠流は、デカデカウォーターガンを持つ風介と共に謎のポーズを決めドヤ顔。隣の距離感がバグっている男も瑠流と密着しさらなるドヤ顔。やはりウザイ。

「おーおー、んな張り切ってんなら今日のバレー勝負、負けるなんてこと有り得ねぇよな?」
「もちろん。バレーもテニスも負けないわよ」

風介を無理やりどかし瑠流とグータッチを交わす。はて、今テニスと言ったか。「砂浜でテニスなんてやんの?」バレーしか知らされてなかった晴矢は再度聞き直すと、「この海水浴場でやってるみたいだよ」後ろから現れたヒロトが説明を始める。

「まだ知名度は低くて場所も限られてるんだって。折角なら遊びたいなーと思って内緒で予約しといた」
「へぇ〜。面白そうじゃん」

瑠流に上着を羽織らせつつ、押し出され不貞腐れてる風介に瑠流の手荷物を渡し機嫌を直させ「さて…」と砂浜へと視線を向ける。

「もう着替えは済んでるし、このまま集合場所へと行こっか!」

瑠流達が荷物を降ろしてる間、駐車場やホテルの手続きを終えた我らの頼れるリーダー。家族の前でしか見せない童心に返ったようなきらきら笑顔で言われれば、3人も(1人はクールに)声を揃えて返事をし、駆け出した。




移動中、晴矢と瑠流
「てかまた新しい水着買ったのかよ」
「ふふーん、可愛いでしょ」
その場でそれらしいポーズを決めて見せる。
「スタイルいいし胸もデケェから似合うし可愛いぜ?」
そりゃ自慢の女だからなと、鼻を高くする晴矢。
「今年は素直に褒めてくれるじゃん」
「思ったことただ言っただけ」
「ふふありがと。…晴矢こそ鍛えてる分、いい身体してるわね」
「いつも見てただろ、何だよ今更」
笑って瑠流の額を人差し指で押す。
「プロの身体かーって、改めて見るとヒロトや風介と違うね。晴矢らしくてかっこいいよ」
晴矢と同じように笑って人差し指で鍛えられた腹部を押す。「うわ、かった〜」そう言ってまた笑う。
「…俺があっち入ったら寂しいからって最近甘えてくんじゃん」
「それ、晴矢もじゃない?(クスクス)…まぁ、あんたとこうして遊びに行けるのも、もう少ないしね。今のうちに思い出作っとくの」
「ほーん。俺と結婚すりゃ幾らでも作れっけどな」
「あははっ、それもいいかもね!」
「おー聞いたかヒロト!瑠流は俺についてくってよ!」
少し離れた後方の2人に大声で言い、瑠流の腰に手を回す。瑠流も晴矢の背中に手を回し2人で笑った。



「アイツ最近調子乗ってない?あんな瑠流とくっ付いて、いいのヒロト」
「風介がそれ言うの?」(クスクス)
「晴矢こそドスケベ童貞なんだから注意しなよ」
「うーん、瑠流が楽しそうにしてるからいいんじゃない?」
「………」
「今後はこうして皆で集まるのも難しくなるからね。恨まれる前に自由にしてあげよう」





集合場所到着

瑠「予定よりもだいぶ早く着きそうね」
ヒ「サーフィンしてる、って言ってたからもう近くにはいると思うけど。何処かで休んでそうだね」



海の家
椅子に座り小休憩していた綱恵
恵「…あ。あれ瑠流達じゃないですか?」
綱「んー?おーすんげぇ目立ってて分かりやすいな〜アイツら」笑いながら
恵「あはは、周りの方も何となく道を開けてますね」
綱「うっし、じゃあ行くか!飛鷹ーっ!とびきり美味いラーメン頼むぜーーっ!」厨房に向かって叫び、
恵「また来るねっ」小さく手を振る。
2人に振り返りながら飛鷹も口角を上げ手を振った。



綱「おーーい!ヒロトー!」
恵「瑠流ー!」
瑠「あ!恵那〜!」
小走りで駆け寄ってきた恵那と軽くハグ。
瑠「やっぱり!すっごい似合ってるその水着!可愛い!」
恵「あ、ありがとう…っ。瑠流もすごく可愛いよ!」
瑠「ふふん。恵那のおかげね。で、で?どうだったの綱海の反応はっ」コソコソ
恵「えっと、…か、可愛いって…言ってくれ、ました…」
瑠「それは当たり前よ!他は?!」
恵「えっ、ええ、そ、それだけだよ!」
瑠「うそ!絶対何かあったでしょ、いつもより顔真っ赤よ!」
恵「う、うう…、あ、あとで話すから〜っ。そ、それよりも瑠流は―――」

風「………(カシャ)」瑠流と恵那のやり取りを無言で写真を撮る。
ヒ「仲良しだねぇ」ニコニコ

晴「こうして面と向かって会うのは初めてだな」
綱「おう!南雲晴矢と、あっちは涼野風介…だな!よろしく!」
恵「よ、よろしくね、南雲くん」瑠流の拘束から抜け出し綱海の隣へ戻る
晴「コイツらからよく聞いてるぜあんた達の事。遠慮なく楽しんでこうぜ」
綱「お!いいね〜、試合じゃ負けねぇからな?」
風「…よろしく」
綱「恵那は風介とは会ったことあるんだよな?」
恵「はい。瑠流と涼野くんと私で1度だけ。相変わらず仲良しだね、2人とも」瑠流の隣から離れない風介を見ながら、
瑠「でっかい赤ちゃんだから、気にしないで」
軽く笑う。



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「嫉妬とかしねぇの?」

突然の発言にヒロトは目を瞬かせ、パラソルの下にて胡座をかいてる綱海に振り返った。
綱海の視線は、波打ち際で親友とその友達と水遊びを楽しむ恋人に向けられていて。ああと質問の意図が分かり、頬を緩ませた。

「晴矢と風介のこと?」
「そ。アイツら瑠流の事好きなんだろ?」
「うん」

頬杖をついてた綱海はさも当たり前のように返事をしたヒロトに軽くずっこける。平然としてるのがなんだか癪で、続けて思ってる事を口にした。

「ヒロトだって完璧人間じゃねぇ。嫉妬のひとつやふたつ、今までしてきたんだろ?」
「…そうだね。高校生の時に一悶着あったよ」
「お、取っ組み合いか?」
「そんな激しくはなかったかなー」

もしそうなっても負けるつもりないけど、と笑いながら綱海の隣にヒロトも腰をおろした。おっかねーと少し悲鳴に近い声で綱海も笑い、2人で水遊びを楽しんでいる彼女たちを眺める。

「…誰にも譲れない大切な人。籠の中にしまっておければ、って何度も思ったよ」

辺りはビーチを楽しむ大勢の人達の声が飛び交っているが、ヒロトの声は大声でもなくいつも通りで。通った声は今誰よりも綱海の耳によく響いた。

「俺だけが知っていればいい。誰の目にも触れさせたくない。…良くない気持ちばかり膨らんだよ」

彼女の親友の彼氏、という繋がりでFFI解散後も何度か関わる事はあった。ヒロトを根っこから知ってる訳じゃない。ここ数年で瑠流と恋仲の彼がどういう人物かなのかは何となく分かってたつもりでいた。
独占欲。自身にも当然あるし悩ましいと自覚していたが、ヒロトの言う良くない気持ち、は言葉以上の何かを感じる。彼の瞳を見つめた。「でもさ」揺らぐでもない伏せる事もなく、柔らかく笑ったヒロトは続けて言う。

「それじゃ、瑠流じゃないんだよね」

波打ち際で遊んでいた瑠流がふと、ヒロトに振り返り笑顔で手を振る。

「晴矢と風介、リュウジに治。お日さま園の皆がいないと俺達らしくない、って答えになったんだ」

俺も、晴矢と風介が好きだからさ。目を細め優しく笑いながら彼女に手を振り返したヒロト。…俺達らしい、か。
「きゃーっ!」眺めていた水遊び組から楽しそうな悲鳴。隙が出来たと晴矢の水鉄砲が瑠流に直撃する、寸前の所で恵那が背中で受け止め、身を翻し小さいバケツで晴矢に反撃していた。「恵那ナイスー!」「んだよそのブキずりぃー!」「見かけによらずと言ったろ」「ふふ!条介さんの仇、とりました!」先にズブ濡れになった方が負けだという水遊びに、全員本気ではあるがうちの彼女はなんともまぁ…強いもんだな、と一部始終を見て一番乗りでずぶ濡れになっていた綱海は笑った。それを見ていたヒロトもクスクス笑い「頼もしい彼女だね」と。

「…あ。俺ばっかり話し込んじゃった」
「いや、ヒロト達のこと聞けてよかったよ」

話が途切れ、自分ばかり話していた事に気づく。自分語りの受け身、ましてや海の広さと比べたらなんてことない話。綱海はただ黙って聞いてくれていた、そんな彼の横顔は穏やかだった。

「ヤキモチとか立場とかぜーんぶひっくるめて、ヒロトはアイツらを大切にしてるんだな」
「…。うん。みんな宝物だね」



「なぁ、アンタの彼女さんおっかねぇんだけど」

全身びしょ濡れになって帰ってきた晴矢にヒロトは声を出して笑う。「次はテメェが行くんだよ」首根っこを掴み無理やりヒロトを立たせ背中を蹴った。
綱海もケラケラと笑い白い歯を見せながら、声を大に、

「だろ?なんたって俺の将来の嫁さんだかんな!」

ニカッと笑った。




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久しぶりに書いた〜!夏!海!いいね!(^o^)
省いちゃったけと田山兄弟も綱海達と出会ってはいる!