「え?雷門と試合?」
「うん。明日の12時。場所は陽花戸中」
「そんなまた勝手な」
「俺もだいぶ自己中になってきたでしょ」
「…ふふ、そうね」
帰ってきたヒロトが突拍子もないことを話し始めた。
時刻は遅く、各自好きなようにグラウンド上で自主練をしているプロミネンスとダイヤモンドダスト。就寝している者もいる為人数は疎らだが、中心となる両リーダーは納得がいくまで体を動かしていた。
彼らのデータをとる瑠流の前で、その場の雰囲気とは逆にニコニコと嬉しそうにするヒロト。
「円堂守。そんなに彼が気に入ったのね」
「ああ。もっと近くで彼のサッカーを見てみたいと思ってね。あと、」
「?」
「ルイルのお気に入りも、よく見てみたいしね」
「…。恵那は大切に扱ってよ」
「わかってるよ」
「グラン。お前またフラフラどっかに出掛けてたのかよ」
「相変わらず余裕だね」
「バーン、ガゼル」
一通りの練習を終えた晴矢と風介が普段通り声をかける。最近のヒロトの自由行動に2人も呆れており軽くため息を吐く。
「ま、今のうちにジェネシスの甘い蜜でも啜っとくんだな」
「自由奔放過ぎるのも大概にしときなよ。ジェネシスの座から落ちて後悔しても知らないから」
「ん?2人とも、負け惜しみ?」
「んだとォ…?」
「はいはいお終い。グランも火に油注がないでよ」
悪化していく険悪な雰囲気に動じることもなく、瑠流は3人の間に割って入る。バーンとガゼルには、今回の練習結果の用紙を突き出し、ヒロトには回れ右をさせ早く戻るよう促した。
「(負け惜しみねぇ…)ルイル、グラン、ガゼル」
何か考えた後バーンは3人を呼び「ちょっと付き合え」と口角を上げた。
「まさかあそこまで回復してたとは」
「体力に難あり、だけどね」
自室への帰路の途中。ヒロトは先の出来事を思い返す。
バーンの付き合え、とは4人でボールを蹴ることだった。瑠流の身体は回復したとはいえ激しい運動が出来ないと思っていた。が、
『クレセントアイス!』
『ブレイジングドーン!』
いつの間にか完成させていたガゼル、バーンそれぞれ2人との必殺技を見せつけられ、ヒロトは目をぱちくり。
『てめぇがフラフラ出掛けてる間に、こっちも好きなように練習してたんだよ。なぁルイル』
『ルイルがダイヤモンドダストのチームに入るのも、近いね』
『あぁ?うちのチームだろふざけんなガゼル』
2人の取っ組み合いの間をすり抜け、ルイルはヒロトにパスを出す。
『ね、ヒロトとのシュート技も、今なら出来そうな気がするの。お願い出来るかしら』
笑った彼女の顔は、昔見たサッカーが大好きな幼い瑠流と同じだった。
聞けばだいぶ身体は良くなっていたとのこと。父の計画も最終段階にかかってきた所で、本格的な練習を解禁させたと瑠流はヒロトに説明した。
そこでヒロトは思いつく。
「…ねぇルイル」
「んー?」
明日一緒に、雷門と試合しない?
そう、言おうとしたが既のところで留まった。雷門イレブンには瑠流の友達、恵那がいる。出来ることなら素性を明かされたくないだろう。
これは自身の興味、ワガママで付き合わせてしまうものではないと「いや、なんでもない」そう言って別の話題に切り替えた。
「(……。)」
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コソコソ話・練習中
晴「なぁ、俺とルイルの必殺技の、ブレイジングは分かっけど…ドーンって、ださくね?」
瑠「あら、ドドーンっとカッコつける晴矢らしくていいと思うんだけど」
晴「やっぱだせぇ」
風「ドーンとは黎明、夜明けや明け方って意味だ。分かってて名前をつけたんだろう、ルイル」
晴「…。へ、へ〜!なかなかいいじゃねぇか。わざわざ変えるのもだるいし、それでやってくか」
風瑠「(単純〜)」
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「私もチームに入っていい?」
なんとなく、こうなるんじゃないか。彼女の事だから自分の考えている事は恐らくつつぬけであった事が判明。ヒロトは瑠流の申し出に一瞬躊躇った。
「いいの?」
「ええ。私も恵那と試合がしたいから」
「…わかった。…えっと、」
「あ、バレても平気よ。時間の問題だと思うから」
たまに感じる視線。気づかない振りをしていたが恐らく彼女、恵那からのものだと、瑠流は頭の片隅で思考する。
どうも彼女の事は意識してしまう。サッカーは楽しいものだと教えてくれた彼女を。
…また、一緒にサッカーが出来ればいいな。
友達と一緒に遊ぶだけ。互いの立場や結果はどうでもいい。瑠流は自身の素直な気持ちに大きく賛同した。
だが未だ心配そうに様子を伺うヒロトにルイルは小さくため息をつく。
「今日の試合はただの練習、それだけ。……まぁ、グランともサッカーができるの楽しみにしてたんだけど」
素直になりすぎた自分の口に、気恥しくなった瑠流はぎこちなく背を向けてウルビダの元へ駆け出した。
…楽しみ、か。
その場に残されたヒロトは離れていった瑠流の背を見つめた。
「ルイル!」
ヒロトから瑠流へボールが繋がった。このまま2人技を決めよう、そう目で合図をしヒロトは頷いた。
前半中盤、瑠流の身体は既に限界にきていた。甘かった。自分の無力さを痛感し、悔しさからか責任感からか、彼女は走り続けた。
チームメンバーは瑠流の状態を分かっている上で共にプレーをしている。最強の戦士とは程遠い、非力で何も出来ない彼女を前にチームは瑠流と共に走る。
上手く立ち回れない時はサポート、ボールをキープ出来ない場合は声を掛け合いパスを回したりと、瑠流のペースに合わせていた。
『生半可な気持ちで、ここまで来たわけじゃないでしょ』
試合前のウルビダの言葉が、頭の中で響く。ここまで来た、とはこの場所ではない。ヒロトの隣、父さんの家族として、ジェネシスに…なるために。
もちろんだと。瑠流は再度心の中でも強く頷き自身の為に、チームの為に地を蹴った。
「「ブライトクレスト!」」
眩い光に包まれたボールはゴールへと真っ直ぐに伸びる。
円堂は必殺技の構えをとる。ここで違和感を感じた。
ボールに威力がない。
これまで受け止められなかったシュートとは、違う。手に痺れは残るもののしっかりと両の手でボールをキャッチした円堂。雷門イレブンからは歓喜の声が上がった。
「…はぁ、はぁっ」
力不足、自身のペースに合わせてくれてるグラン、己の持久力の無さ。それらを目の当たりにした瞬間だった。
(研崎のエイリア石がなければ…駄目か)
父も知らない改良エイリア石の実験。研崎が極秘で開発するエイリア石の被検体として協力をしている瑠流。
だがあくまであれは、補助輪として利用しているもの。エイリア石から放出される電気を筋肉に無理矢理流し身体を慣れさせる。約数年実験を行い、石がなくともだいぶ動けると、昨夜の練習でやっと手応えを感じたが…。
ジェネシスの壁は分厚く高く、ヒロト達を程遠く感じた。
呼吸が乱れ、咳き込むルイルにグランが駆け寄る。
「大丈夫?ルイル」
「ごめん、シュート決まらなかった」
得点差は圧倒的。だが、ボールを受け止めた円堂の活躍により雷門イレブンは活気を取り戻し、掛け声が上がる。
ガイアのメンバーは相手チームの様子に鼻で笑う程度で済ませ、そんな事よりもとルイルの様子を気遣った。
交わす言葉は短いけれど、昔から一緒に育ってきた家族だ。彼女を支援したい気持ちは全員持ち合わせていた。
本人も同様でありそれに答えたいと、瑠流は再びボールを蹴った。
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・雷門サイド
土「弱点?」
鬼「ああ。これまでベンチにいた控えの奴だ。理由は分からないが、力が彼等より劣っている」
一「じゃあその隙をつけば勝機はあるってことか」
鬼「そう上手くいけば、だがな」
恵「……。」
鬼「…(実栢の様子がおかしい。なにがあった?)」