140字まとめ4
影山茂夫｜ツイッターに上げた140字SSです
『出来るなら苦労はしない』
「もっと笑え！聞き上手な奴は相槌の種類が豊富なんだ。それから考えすぎるのもよくねえな。何事もタイミングが重要だ、困ってたら積極的に助けに行け！チャンスを逃すな。おいおい噂をすれば何とやらだ！荷物が多くてフラフラしてるぞ。今こそ男を魅せるときだな、シゲオ！」「エクボは黙ってて」
『目を奪われる』
制服のスカートから伸びる肌に突然木枯らしが駆け抜けた。慌てて浮かぶプリーツを抑えつける。念のためと周りを見渡すと、地面に落とされた鞄が目に入って、ハッとして顔を上げれば真っ赤に固まる彼がいた。「ごっごめん…！」謝罪の言葉と反して逸らされない視線の先に、羞恥で寒さも忘れてしまった。
『愛情？』
どんくさいなあって、誰かが言った。教室の窓から校庭を覗くと、弧を描いたボールが行き場をなくして失速していくのが見える。肩を上下に動かして、それでも懸命に駆け回る少年に気づいてしまえば周囲の笑い声に同調なんて出来なくて、自然とこぼれた少女の小さな声援が、全てのはじまりを告げていた。
『毎年、恋を重ねる』
笑いあいながら話す帰り道に、首を痛めるようになったのはいつからだろう。彼のちいさな表情に、自ずと違いをみるようになったのは。やわらかく重なる手のひらに、指が交わるようになったのは。学生服の彼に恋をした。目の前のうっすらと残る面影に高鳴る胸は、何度だって違うときめきを教えてくれる。
2016/11/3~11/19