確かに私はあの人と両思いだったはずなのに。


「告白OKした瞬間に振られた」

「君に魅力がなくなったんだよ」

「......マジかよ...今年に入って3回も同じこと起きたよ?」

「名前には僕以外付き合いきれないよ」

「自由な発言ですなあ」


ペタン、と日誌に判を押し付けて目の前の人間を見やる。
雲雀恭弥──俺様何様雲雀様と迷言がある程最強で最恐な風紀委員長だ。彼は容姿端麗で頭脳明晰でもあり、最高にかっこいいのだが、性格に難がありすぎて皆雲雀を見ると怯える。それは教師であろうと同じだった。
さて、何故そんな雲雀と私が普通に話せているか。それはただ単に幼馴染だからだ。それこそ出会いは幼稚園のころ、そこまで記憶を遡ることはちょっと面倒なので辞めておく。しかし幼稚園のころはまだ最恐でもなく、最高に可愛い男の子だった。私はあの可愛い可愛い雲雀を忘れない。
話は戻るが、私は今日朝に告白を受けた。それもクラスで結構仲良くなった男の子に。仲良くしていれば必然と距離は近くなり恋愛へと発展するだろう?私も彼のことが好きだったから授業後に返事を出したら何故か「ごめん」と言われてしまった。オマケに「これからは知り合い程度で付き合って欲しい」とまで言われた。知り合い程度ってなんだよ?って突っ込む暇もなく彼は去っていってしまったのだ。こんなことが今年に入って既に3回目。分かる?私の心の壊れる音が聞こえる?
そして毎回毎回懲りずに私は雲雀へと嘆くのだ。嘆かねば生きていられないほどだ。
目の前の紙束を押しやってできたスペースへ顔を突っ伏した。


「もーーー恋なんてしないなんて!」

「歌うな」

「絶対誰かに呪われてるアアアア」

「本当に黙って作業できないわけ?」


ハァ、と盛大な溜息が聞こえてきたけど、私は知らないフリをする。知らない聞こえない。誰かに呪われてるかもしれないのに、そんな呑気に日誌確認だとか出来ない。だってまだ私高校生だよ?高校生だから恋の一つくらいしたいじゃないか!友達は「彼氏がさ〜」とか「○○君がねえ〜」なんて話してるのに私と来たら話すことなんて「この間雲雀がお茶に文句つけてきやがった」ってそんなことしか出ないし、なんなら友達は雲雀の名前を出しただけで顔が強ばる。つまんね〜!!!

「ねえ、雲雀」

「何」

「笑お?」

「咬み殺されたい?」

「日本語わかるかな〜?」


キッ、と睨まれて会話は終わってしまった。それでもなんだかんだ愚痴を聞いてくれている辺り、雲雀は優しいと思う。私はそこにまた甘えてついつい雲雀にばかり愚痴ってしまうのだが。
う〜んと唸りつつ顔を上げて紙束をじっと見つめては「やだなあ」と声を出した。大体風紀委員がショバ代を巻き上げるって何事だよ。そしてその資料をこっちが確認するって何?と毎年この季節は思う。因みに題は "並盛町春のお祭り" ...なんも面白みもない普通の祭りだ。そこへ当日は見回りもあるし、風紀委員って何?と聞きたくなるのも恒例。もはや恒例すぎて当たり前化してる自分に恐怖すら抱く。
一枚をぴらっと捲って内容を読むとこれまた普通の内容。なんにも面白くない。


「なんかこう...面白いものは無いのかな」

「...名前の好きな串カツ屋が今回は出るよ」

「マジか!」

「見回り途中に神社のところで食べようか」

「いえす!あー楽しみになってきた!」


彼氏がいない分雲雀との見回りのも精が出る。といっても祭りなんてこの年までずっと雲雀としか行ったことがない。自慢じゃないが、1度だけ、彼氏になりそうな人と約束したのだが、当日になって彼は来ず雲雀が来て、翌日彼は傷まみれになって「ごめんね、彼女できたから」といわれた。思い出すだけで涙が出そうになる。どうして怪我をしているのかすら教えてくれなかったし、私はいつになったら彼氏というものができるのだろうか。
ファーストキスだって甘酸っぱいのを体験したい。


「...雲雀はファーストキスどんなだった?」


「さあ...写真でしか見た事ないよ」

「写真!?は!?」

「君の家にもあると思うよ」


嘘だろ...?雲雀のファーストキス写真とか見たことないんだけど?むしろそんなの家にあってもクソほどに困るんだけど?いや、ていうか雲雀ってファーストキス終えてんの?頭の中が色々な疑問で埋まっていく。私ですらまだなのに、雲雀ときたら...!


「裏切り者!」

「は?」

「雲雀がファーストキス終えてるなんて私は知らんぞ!」

「何言ってんの君」

「何言ってんのって、」



「僕と君のファーストキス写真が家にあるよ」



Oh......
私のファーストキスとやらはどうやら甘くも酸っぱくもなかったらしい。親からそんなの見せてもらってもないよ......。
雲雀からの衝撃発言に私はまた、作ったスペースに突っ伏した。雲雀からはくつくつ、と喉を鳴らす声が聞こえる。笑っていやがる。なんて日だ。


「私のファーストキスは未来の彼へ捧げられることはなくなったのね」

「未来の彼なんて現れないと思うよ」

「悪口許さない」

「だって潰しているのは」




「僕だから」



赤い糸を切っちゃうプロ