※G9の荒波にのまれて幼児退行してしまったフォートレスマキシマスの御話です。
原作をちょっとだけ薄めた暴力、破損表現があります。

















ママ、ままとフォートレス・マキシマスは、小さな母親に縋る。
彼には手足が無かった、生まれつきではなく、事情があり四肢を欠損している。そんな不自由を強いられている彼、マックスは、かつての聡明さと勇敢さを忘れてしまい、死の恐怖から逃げるために赤子への道を歩んでしまった。
その瞳は意志が強く、気高い赤のオプティックがらんらんと光り輝いていたが、今は割れている。だが母親が常に外的から身を守り、世話をしてくれるので、不要だ。目は恐怖対象を捕えてマックスを怖がらせ、苦しめてしまうのだから。
力強い太い四肢ももう必要ない。どうせ囚人たちによってたかって玩具にされて、最後にはあの男に粉砕され、切断されてしまうのだから、痛くないように処理してしまえばいい。
こうして、マックスはか弱い赤子になった。母親カノンの助けが無ければ何もできない赤子に、カノンはそれを受け入れて彼の唯一の母親として、精一杯の愛情をマックスに注ぐ、そんな歪な疑似親子は今日もガーラス9で身を寄せ合って慎ましく暮らしている。




「ま、ま」
「大丈夫よマックス。母さんはずっとここにいるわ」
時折言いようがない不安に駆られ、マックスは定期的に母を呼ぶ。
そんな我が子にカノンは、わずらわしさなどみじんも感じなかった、それよりも手間のかかる子だと、微笑み、定期的に自分を呼ぶマックスはまだ生きているのだと安堵さえした。
不安げな声に答え、安心させるように傷だらけの額にキスを落として、優しい声色で慰める。時折体をひっくり返してやり、背中を撫でてやりながら、きしむ体を苦痛から和らげてやった。

このように柔らかく母性溢れる笑みを浮かべる彼女は、本来よく研がれたナイフのように冷たい印象を与えるプレデター部隊の兵士であった。
スカイクェイクを失った際、絶対的な君主オーバーロードの登場によって、スネアのよう、大人しく流されるようにして指揮下に下ったが、戦闘と呼ぶに値しない残虐的なショーの手伝いに、幾分かの良心が主張し始め、オーバーロードからマックスのリペア、メンテナンスをするように命令された時、哀れみさえ感じはじめ、ついにはマックスを愛し始めてしまった。

その愛し方は男女のそれとはまた違い、無条件に何もできない、それどころかカノンに向って侮蔑とも取れる言葉を投げかけてくるマックスに無性の愛を注ぐ母性を伴う愛情であった。
このディセップが、俺に触れるな、出て行け、お前など援軍が来ればと、精一杯虚栄を貼る傷だらけだが、まだ生命力にあふれるマックスに、カノンはただ付き従った。
何故冷酷、鉄仮面の女とさえ言われた無常の彼女が、これほどまでにマックスに無償の愛を与えるのか、ある者はあの女にも母性があるのだなと嗤ったものだ。
だが、その無償の母性がマックスを陥れたのか、救いの道しるべになったのか、植物の根が色水を吸い込み、花がその色に染まりながら咲くかの如く、マックスは暴力と母性に浸されて、少しずつ自我が崩れていった。
今いるのは、マックスが意味のない暴力から逃げるために作り上げ、カノンによって産みなおされた架空の幼児である。



「マックス、すべてを話せないのなら、せめて母さんと一緒にいてね。母さんは何があってもあなたを守るわ…そして、もし助けが来て、元気になったら、私を…」
「マ…マ…?」
「なんでもないわ…今エネルゴンをあげるからね……」
鬱屈した感情が、内なるヘドロなような思いを漏れ出させ、マックスにとって意味が分からないことを呟いてしまう。
すぐエネルゴン配給を遅らせてしまったことを謝りながら、カノンは自分の胸部パーツにチューブを挿しこみ、マックスの体をいたわってやりながら、優しくチューブの端を挿しこみエネルゴンを分け与えてやった。
マックスにはもう自分で補給できるような気力も力も口にはない。よってカノンがこうしてエネルギーを分け与えているのだ、ジェット型の中において華奢だがカノンは機体が大きな分類に入る。だがそれもマックスと対比してみれば成体と幼生体のようなものだ、流し込んだエネルギーはあっというまにマックスに吸い上げられ、いつも行動不能ギリギリまで絞りとられてしまう。
それでもカノンは与えた、物資が乏しくなるG9で奪いながら、時に屈辱の施しを受けながら食べて、少しでも蓄えて、マックスに与えた。



「ごめんね、きっと、きっと今度は楽になるように、私は…」
「まま…まま……」
「優しいマックス。弱いママを許して…」
エネルギーを分け与えられて、少し活発になれたマックスは破損して、もうどこにもない架空の腕を使い、すすり泣く母を撫でようと関節を動かす。
当然ながら、腕は存在しないために、ただ無様に体をよじらせるだけに見えるが、それでも母カノンには伝わった、優しい我が子が自分を慰めようとする気持ちが、
今日も彼がくる。我が子を傷つけるオーバーロードが、何もできない、いやしない弱い自分を許してほしいともがくマックスの額と頬に口づけながら、最後の言葉を言えないまま、カノンは今日も泣くだけだった。












マックス君が、どんな具合に廃人化したのか考えた末の夢でした。