キスは夕暮れ


※高校生くらい


「松田くん、もう学校締まるよ」

夕陽が入り込む図書室はもう私と松田くんしかいない。松田くんは机に突っ伏したまま起きる気配が全くない。もうすぐ点検の先生が来てしまう。図書委員の私はきっとお小言を食らってしまうのだ。不貞腐れた雰囲気が表情にも滲み出てしまう。肩を揺すってみても、うんともすんとも言わない。しょうがない、と松田くんの隣の席に腰を下ろした。すると寝ぼけているのか松田くんはこちらに顔を向けた。鼻っ柱につけられた絆創膏は萩原くんにでも貼ってもらったのだろうか。
いつもはまん丸とした瞳は男の子にしては長い睫毛に隠れてしまっている。口は悪いが、寝顔はとても可愛らしい。ふと悪戯心が湧き、松田くんの耳元に口を寄せる。

「起きないとキスしちゃうよ」
「真実の愛のキスってか?随分ロマンチックなんだな、お前」

自分の肩越しからチラリと顔を覗かせ、ニヤリと笑う松田くんは悪戯っ子のようで。交わった視線を逸らすことはできなかった。