木陰で休息


暑い、と口にする前に目の前に経口補水液のペットボトルが差し出される。
「安室さん、今日なんだかぼんやりしてますね」
「藤川さん」
日傘を差した藤川さんは買い出しの袋を両手に抱えて日陰で休んでいた僕を心配してくれたらしかった。
「こんな暑い中どうしたんですか?」
「往診です。熱中症かもしれないと。軽い脱水症状でした」
そうなんですね、と相槌を打つがそれ以上会話を広げることが出来なかった。いつもならもう少し口が回るのだが。彼女はふぅ…と息を漏らすと自身のカバンから出したものを僕に握らせた。
「頑張るのも程々に」
そういって彼女は踵を返した。手の上に乗せられた塩飴の包装を開け、口の中に放り込んだ。