「はあ…信じられない、なんでこんなに暑いんだ」
「そりゃあ夏だからでしょう」
「2番目の息子よ。理由が分かっているならこの暑さをなんとかしろ」
「なんとかと言われましてもねえ。あ、そうだ。ニンゲンはこんな暑い日に怪談話をして楽しむそうですよ」
「カイダン話?」
「怖い話のことです。よければお話してあげましょうか」
「ほう、聞きたいね」
「では…あるニンゲンがね、夢を見たそうです」
「ふんふん」
「そのニンゲンは夢の中で無人駅にいて、ぼーっと列車が来るのを待ってたんです。しばらくして無人駅に入ってきたのは列車というより豆汽車で、生気のない顔色の男女を一人ずつ乗せていました」
「ほうほう」
「ニンゲンもその先頭に乗り込んで、また豆汽車は走り出しました。しばらくすると《次は〜八つ裂き〜八つ裂き〜》というアナウンスが流れて、豆汽車は止まるとどこからともなく複数の小人がやって来て最後部の女性を頭手足から引っ張って八つ裂きにしたんです」
「…へぇぇ…」
「女性の悲鳴が息途絶えるまで響き渡って、その場に大量の血とバラバラになった部位を残してからまた豆汽車は走り出しました。《次は〜焼死〜焼死〜》とアナウンスがなると、再び豆汽車は停車して、今度はニンゲンの真後ろに座っていた男性が小人たちに炎で炙られ炭になるまで焼かれたのです」
「ふぇ…」
「順番的に次殺されるのは夢を見ているニンゲンでしょう。《次は〜挽肉〜挽肉〜》とアナウンスが鳴ったところでニンゲンは現実に戻りたいと念じて眠りから覚めました。ぐちゃぐちゃになるまで殴り殺されずに済んだんです」
「ひぇえ…」
「サフランも。今夜眠る時は見る夢に気をつけてくださいね」



〜〜その日の夜

「…バロック。まさかもう寝る気じゃないだろうね」
「今日は暑くて疲れたからな。もう休むつもりだが」
「僕は眠りたくないんだ。一晩付き合いなよ」
「ほう。それは夜伽の誘いか?」
「ばかじゃないのと言いたいところだけど今夜だけはなんでもいいから僕を眠らせないで」
「情熱的だな。誘いに乗ってやろう」
「うん…今夜は寝たくないんだ」


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