※高校生設定





高校で出会った私達はお互いに惹かれ合ったのち、恋人同士になった。

初めはこんな関係になるなんて思わなかったんだけど、でも一言話したときから私とキヨは妙に馬が合ったのは確か。
高校に入って初めてのクラス。中学から引き続いてとか小学校とか幼稚園が同じだったとかの知り合い以外である初対面の人の中で、一番最初に話したのがキヨだった。
それが私達の始まりで、フジやこーすけくん、ヒラくんも紹介してもらって(キヨがあだ名で呼んでいたからそっちの方が私も馴染んでしまった)、結構事あるごとに私はその仲間に入れてもらってるんだけど、やっぱり今まで誰と一番過ごした時間が多いかと問われれば唯一クラスが同じなのもあってかそれはキヨだとはっきり答えられる。

キヨのことを初めは苗字に君づけで呼んでたけど、フジとかがあだ名で呼んでたから私もそっちで呼ぶことにしたのだ。
あだ名ってなんでこんなに移るんだろうね。


彼と過ごしてくうちに、いつの間にか私はキヨのことが好きになっていた。
からかってくるし、意地悪もしてくる。すきと認めたくなかった頃もあったし、どうして究極の良いやつであるフジじゃなくて横暴なキヨ?と何度も頭を悩ませたことはあったけど、一度気になってしまえばその想いは止められない。そういう時に限って彼の良いところばっかり見えてしまうものだ。
嫌なところを見ても、それを許せてしまう程の自分の気持ちに気付いた時には、既にすきという感情に溺れてしまっていた。
そんな私の様子が怪しい意味でおかしかったらしく、フジとこーすけくんとヒラくん(主にフジ)が後押しをしてくれたお陰でどうにでもなれって勢いで告白が出来たという訳です。一連の中でも最大級でびっくりだったことは、キヨの方も私をすきだったことで、その結果晴れて私とキヨは恋人の関係へと進展。それがつい3ヶ月程前のこと。


キヨはひねくれているけれど、彼が何を言ったとしても根はすごく優しい人なのを一度知ったら、本当に嫌なやつなだけとは思えなくなってしまう。
そりゃキヨの性格上、嫌なやつ!って本気で思うことも時々はあるんだけども。

時には強がるくせに、強がるだけで実はそこまで強くなくて。
彼という人間を知っていくたびに放っておけなくなる。
ただの友達だった筈なのに、段々私の深く深くへと浸透してしまったキヨは、今は友達よりももっと大切な人で、私にとって一番居なくてはならないひとだ。

基本今までと変わらないものの、何度かデートもしたし、恋人らしいことも多少はしてる。といってもキス止まりだけど。
でも焦ることはないし、今現在ではこれが私達には丁度いいのかもなんて思うから。それに何と言っても私はキヨといられるだけで楽しいし幸せ。
これからもずっと一緒に居れなきゃやだななんてちょっとだけ重いこと考えてみたりもして。
同じことをキヨも思ってくれてたら、それはもう嬉しすぎて舞い踊る程の喜びしかない。

長々しくなってしまったけども、結局私が何を言いたいのかと言えば、私はキヨがだいすきで相当彼に溺れているということだ。



「名前ー、どーんっ」

勢いがあるんだかないんだか。いつものちょっと気だるそうな声が私の鼓膜を揺らす。
両手で拳をつくって後ろから背中をぐりぐりとされてるのはちょっと痛い。こんなちょっとした地味な嫌がらせなんて日常茶飯事だけどもさ!

「どーんじゃないよどーんじゃ!痛いし!」
それでもぐりぐりを続けるキヨへ痛い痛い痛いと何度も訴えかけていたら、7回目くらいの痛いでやっとやめてくれた。ほらねこういうことしてくるの恋人になっても変わらないんだよ。

「…ところでどうしたの?」
「え?何となくこれがやりたかっただけだけど」
「そうだと思ったよ!意味なんてないと思いました!聞いた私がばかだった!」

普通よりも少しだけ背の高い彼の顔は、距離が近ければ見上げないと視界に入れることは出来ない。

「俺のことわかってんじゃん」
いつの間にここまで近くなったんだろ。このにやりと歯を見せて笑うこの顔だって今まで何度も見てきた筈なのに、人1人分も空いていない距離ならば緊張してしまうのは恋人になってからひどくなった。

「キヨはもー、子どもっぽいっていうかなんというか……」
「俺、いつまでも少年の時の楽しむ心は忘れないから」

私は誤魔化すために少し目を逸らしたのに、まるで俺の方を向いてとでも言うようにキヨは気合いの入ったキメ顔をする。やめてください。いつもこの顔でいればモテるのにね!かっこいいなもう!!

「無駄にキメた顔で言わないでよ」
「無駄って言うな無駄って」
気だるそうだったりはにかむみたいに笑ったり拗ねたり、ほんとの子どもみたいにころころと変わる表情さえも愛しくて、一時拗ねたと思ったらまた直ぐにキメ顔に戻した彼を瞳に映しているとつい笑ってしまった。

「え、今笑うとこあった?そんなに俺面白いこと言った?」
「ううん!今日もキヨすきだなーって思っただけ!」
まだあふれてくる笑いを隠すことはしない。幸せからくる笑いだもん。これは別に隠したりしなくたっていいよね。


私の言葉にキヨの動きは止まってしまって、かちりとまるで一瞬凍ったんじゃないかと思うほどに顔まで固まった。

「え?今度は私?私そんな変なこと言った?」
「……いや、…もー何?」
「ん?」
目の前に居るのに、彼が私と目を合わせるよりもっと下を向いてしまったせいで、どんな表情をしているのかわからなくて覗き込もうとした途端、さっき私の背中にぐりぐりしてから動いてなかったキヨは覗かせまいというようにいきなり動き出した。

「そんなこと不意打ちで言うの反則だべや!」
「わっ、」

普段そこまで訛りは強くないのにここで北海道訛りが出たかと思えば、キヨに強く抱き竦められて、その一瞬で彼の顔は私のおでこの辺りにくっ付けられてしまったからまた表情は見えなかったけど、キヨは何なの?とかもーとかいう言葉を溢している。
ちょっと苦しいけどそれは我慢して、背中にそっと手を回してだぼだぼしてる彼のセーターを掴む。

「俺たまにガキっぽいとこあんのに」
「あ、一応自覚はあるんだ」
「そういうとこも好きって言ってくれんのすげー安心する」

何言ってるのさ、私はキヨのそういうとこもちゃんとだいすきだから不安に感じることなんてないのに。

「キヨのそういうとこも子どもっぽい」
くすりと出てしまった笑いを噛み締めながら、金髪まではいかないやわらかい茶色の髪をした頭を撫でたらいきなりぐっと手首を捕まれて顔を離される。
さっきまでほぼ隙間が無かった顔と顔の間に距離が出来て把握できた彼の顔は、頬と耳が少しだけ赤くなっていたけど、撫でられて子ども扱いされたことが気にくわないという面持ちをしていた。

不機嫌そうな顔をしていてもまだほんのり赤味のあるほっぺたは誤魔化せてなくて、やっぱりそんな彼が少し子どもっぽい。


「折角俺がめずらしく素直になったのに、そんな子ども扱いすんな」

もう片方の手もキヨに自由を奪われて、噛み付くみたいに重ねられた唇は子どもっぽさからはかけ離れたもので、突然のそれに驚いて今度は私が固まっていたら、また離れてく彼の顔はしてやったりと言いたそうなにやりとした笑みを浮かべていた。

子どもっぽいと思っていたらいきなりこれだもん。油断出来ないや。
ある意味で、また子どもっぽいのかもしれないけれど。


「俺ガキっぽいとかそういう以前にオトコだから」

ぺろりと見せつけるように舌を舐めて、そのままあっかんべーをする。
これであっかんべーしちゃうのがキヨっぽいけど、このあっかんべーは普段のおちゃらけたキヨのじゃなくて、どこか色気が含まれたようなそれが物凄く大人っぽく感じてしまってなんかもう直視できない。
たまにこういう顔をするのはずるい。普段騒いでる時とのギャップに私はくらくらしてしまうではないか。


「……キヨ、それ反則だから…!」



不意打ちは反則です

(「……ここ学校なのわかってんのかコイツら…」)
(「フジ、あいつら爆発させよう」)
(「そうだよフジ!爆発させよう!」)
(「いや落ち着け2人とも」)




20130119

pullus