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 カイザーの写真投稿型SNSアカウントが好評だ。更新頻度は高くないものの、外見があれであるからして、サポーター、サッカーファン内外から多数のフォロワーを獲得している。外見があれなので、フォロワーはまるで美術品を鑑賞するかのような気持ちで眺めているのである。
 主に自撮り(ネスに髪を手入れされている様子が鏡越しに写っていたのは、ネスのファンにも好評だった)、道すがら出会ったという野良猫、取材などがあったとカメラマンに撮られたポートレート。サッカーをしている姿を自らポストすることはほとんどなく、チームメイトが撮った動画をリポストする程度。だからか、このアカウントはフットボーラーのカイザーというより、ミヒャエル・カイザーという人となりに触れることができ、それもまた新鮮であった。
 どのポストも好評を博しているが、中でも評価が高いのは更新期間が空くと不意に投下される他撮りのカイザーだ。パンの耳ラスクを頬張る横顔、ベンチで本を読む姿、キャプションにはどれも"off"となっており、オフに違わぬリラックスした姿がフォロワーにとってとても新鮮だった。カメラマンが撮るような作品的なものではないのだが、自然体であることが見受けられる。

 そんな中、カイザーのアカウントで珍しく動画がアップされた。それはサッカー選手らしく、無限にリフティングを続ける姿。倍速以上で編集されているが、安定感が半端ない。これいつまで続くんだと眺めていると、ある瞬間にニヤついた表情を見せるカイザー。そこからワンタッチでボールをカメラ方向に蹴り上げる。画面が揺れ、そのあと映ったカイザーの爆笑する姿が話題となった。

[これは誰ですか?]
[カイザーこんな顔することあるんだ]
[ガチ天使]
[試合中の邪悪さは何?しちゃったの……?「堕天」ッ……]
 コメント欄はいろんな意味で荒れた。

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「!?!?」
 撮影中のため声が出せない。顔面目掛けて飛んできたボールを避けながらスマートフォンを主犯に向ける。液晶越しに爆笑するカイザーに恨めしい視線を送る。もう撮れ高はあったので撮影をやめて「なんで私がこんな目に!」と詰め寄る。
「他に撮ってくれる仲のいい選手……いないか」
「オイ」憎まれ口叩くのはこの口かあ?と片手で顎をつかまれる。握力80Kgにかかれば私の顎など簡単に粉砕されてしまうだろう。
「アーーー手が滑ってあの画像(シーツに包まり眠る鈴と、上裸で鈴に頬を寄せるカイザーの自撮り)を間違ってポストしちまいそうだなぁ」
「ほんとにやめてなんでもするから!!」

SNS素材集めという口実でデートするカイザーと、巻き込まれ被害者系主人公の鈴さん。







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