嫉妬してほしい!




 ミヒャエル・カイザーと鈴はマンションの一室にふたりで暮らしている。鈴の住んでいたアパートが大家のバックレにより立ち退きを余儀なくされ、困ってクラブハウスの一部屋を借りて一時滞在していたところをカイザーに拾われた。仲のいい男友達との生活、楽しくなるといいな〜。鈴は学生時代の寮生活ぶりの他人との生活に胸を躍らせていた。

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「パーティーではモデルやら女優やらに声かけられて大変だったぜ」
「え、いいな〜!木黄浜氵㐬星とかいた?」
「は?知らねえ」
(機嫌が急転直下してしまった……)
 WHY German people.主語がデカいとイマジナリーネスに苦言を呈された。

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「バレンタイン?800は来てたらしいぜ」
「800?!食べ切れるの?」
「知らない奴からの贈り物なんて食うわけねえだろ」
「え〜……食べないんだ……」
「知ってる奴から直接渡されたら食わないこともないがな」
「800の中にフランスのチョコあるかな……カイザーが食べないなら貰っていい?」
「毒入り食ってしまえ」
「毒?!ひどい!!」

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「トレーナーの女と食事に行くことになった」
「珍しくない?どこ行くの?」
「さあ。相談があるらしいから個室のバーとかじゃないか?」
「雰囲気良かったら教えてね」

────

「あいつは人の心がないんだと思う」
「本当にそうですね。信じられません」
「いつも能天気にしやがって……俺が直々に歪めてやる」
「違う方法を探ってみますね、カイザー!」

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 ところ変わってここはマーケット。生鮮食品は自分の目で見て選びたい鈴はよくマーケットに足を運ぶ。それについてくるカイザー。撮られないように変装してもらったり、ちょっと距離を取って歩くようにと面倒なオーダーをするが、どれも守ってついてくるあたり、彼も野菜とか選びたいのかも。

「そういえば洗剤切れそうだったろ」
「隣のファーマシーで買ってくる」
 気の利く、いい旦那になりそうだな……と見送る。当の本人は買い物という行為に新婚味を感じているためわざわざついてくるし、アピールタイムだと思っている。そういえば薬とかも買っておきたかった、と思い出し食料品の会計を素早く済ませてファーマシーに向かった。

「あの、カイザー選手ですよね……!」
「あ?」
「ファンです!握手とかしてもらえますか……?」
「ああ。クソ感謝」
(……)

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「おい、そろそろ帰るぞ」つかれた、さむい、はらへった、と子供のような文句を並べる。
「…………私はカフェラテ買って帰りたいから先帰ってなよ」つれない空気。少しの違和感はあったもののそのまま続ける。
「ウーバーでいいだろ、帰るぞ!」ミヒャエル・カイザーは早く帰りたい。早く二人きりになりたい。たとえ男女の雰囲気にはならずとも。

 すかっ

 伸ばした手が空を掴んだ。そこにあった腕が半身引かれてもう一歩踏み込んだところにあった。
「…………?」初めてだ。こんなこと、今までなかった。
「じゃ、そういうことで!またあとでね」忍のごとき軽い身のこなしで街中に消えていく鈴。
 な、なんだ……?
 カイザーも顔には出さなかったが珍しく狼狽して追いかけることができなかった。
 カイザーがやきもきしながら部屋で彼女の帰りを待っていると、鈴が「ただいま〜」と帰ってくる。どたどたと足音を立てて玄関に向かう。グランデサイズのカップを持った鈴がいた。荷物を奪おうとまた距離を詰めるが「ストップ」と指令が飛ぶ。

「なんだ?」
「1週間、スキンシップ禁止で」
「はあ!?」
「ごめん今多分ホルモンバランスがよくない、これにて失敬」
「おい!!」







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