ホーリーナイト・ウィズユー




(雪を溶かす夜が明け)

 大体こういうシチュエーションは、女が目を覚ました時「おはよう」「よく眠れた?」と男が声をかけたり、寝顔を堪能した後鼻をつまんだり髪をかいたりして悪戯をはじめる、が定石だろう。体力の有り余っているスポーツ選手の男とバス停までのダッシュで息を切らす女ならば尚更。
 すやすや。元々寝汚い。半乾きのまま寝たから寝癖がとんでもないことになっていて最早芸術的なまである。……他人のこと言えないけれど。体力がない=長い時間寝続けられない、ということなのだろう。早く目覚めているくせに疲労感倦怠感が残っている。とりあえず、歯磨きたい。あと水。

 シャワーも浴びたかったが、先に一人で入るともう一度入れられるし、急遽朝から再試合を組まれるため控えている。
 足早にベッドへ戻る。暖房はついているものの、布団の中に勝る暖かさはない。それに、目が覚めたときに不在だとあとが面倒くさい。再びベッドへ潜り込んで確認。まだ目は覚めていないようで一安心。まつ毛長。肌キレー、すべすべさらさら。化粧してる?鼻高。アップノーズいいな。ぼさぼさの髪も綺麗なグラデに染まってる。ネス、私の髪も染めてくれないかな。手櫛でボリュームを抑えようと溶かしていると、身じろぎが大きくなってきた。顔を覗き込むと、薄く開いた瞳。

「おはよ」
「……ん」
「よく眠れた?」
「……ん」

 だんだん目が開いてくる。ゆっくりとした瞬き。なにか伝えているみたい。布団からにょっきりと太い片腕が出てきたと思ったら私の後頭部に回る。大きな手が私の頭を自らに寄せる。目線は唇へ。ああ、キスされる。
 口を軽く開いた状態で、ぱくりと食べられてしまった。舌でノックされて私も仕方なく受け入れる。寝ぼけているのかゆっくりとした舌の動き。歯列をなぞり、私のものと絡める。夜の求めるキスよりかは、親愛を示すような甘ったるいキス。大きな舌で口内の充填率がキャパオーバーで息苦しい。知ってか知らずか、カイザーは私の口内を弄んでいる。コミュニケーションの一環だと思っている?それとも口の中におやつが無いか探してない?プレーリードッグ式の挨拶?
 もういいでしょ、と胸を叩く。一回目はまだまだもうちょっと、と甘えたように角度を変えて吸い付いてくる。二回目は少し強く叩く。ようやく退去していった。

「ごはん食べる?それともシャワー?」
「ん、もう一回」
「もー、珍しくカイザーが朝のうちに起きたのに」
「朝は贅沢に使おうぜ」

 普段はなかなか起きてこないくせに。「うるさい口ね」そう言う私の苦言を呑み込むようにキスで塞がれてしまった。







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