アドベントカレンダー




 ──❝ アドベントカレンダーとは、キリストの降誕を指折り数えて待つために使うクリスマスのためのカレンダーです。 24個の窓を毎日ひとつずつ開けながら、カウントダウンを楽しみます。❞

 毎年楽しみに選んで購入しているアドベントカレンダー。普段は中々買えないものを試してみたり、新しい味に出会うための窓口としてちょうどよく、なにより毎日なにが入っているのだろうとわくわくして好きだ。今年は何にしよう、カイザーも楽しめるものがいいかも!と思いついた時に付随して閃いた。

 クリスマス、カイザーの誕生日じゃん。

 別に忘れていたわけではないが、アドベントカレンダー終了イコールカイザーバースデーというイベントが連続することを失念していた。付き合って初めてとなるクリスマス、誕生日。別々に考えるのは惜しい。やはり流れが重要になるだろう。どうせなら初めて一緒に過ごす誕生日、指折り数えて楽しみにしていてほしい。

 そしてカイザーは今めちゃめちゃシーズン中だ。幸い欧州はクリスマスを家族で過ごすことを大事にしているのでイブやクリスマスは試合がないが、その前後は各地で熱戦が繰り広げられている。アドベントカレンダーという小さなプレゼントは忙しい彼にも楽しんでいただけると思い、構想を練ることにした。

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「あ、カイザー」朝の挨拶もほどほどに呼び止める。

「なんだ?」

「これ、今日のアドベントカレンダー」

 どれでもいいよ、とリビングのツリーに飾った24個のペーパーオーナメントを指差す。自分も何が入ったものを開けるのかを楽しみたくて数字は振らなかった。

 寝起きの頭にハテナがたくさんついたままオーナメントを一つ選んで開けてもらった。

「あ、ネイルシールだ」

 初回から申し訳ないが、私のお古である。パーツタイプのぺたっと貼るだけの簡単なもので、薔薇をはじめとした小花のワンポイントがかわいい。自爪に貼ってトップコートを塗れば長く楽しめる。

「鈴が貼ってくれるか?」

「え、いいの?」別の使い方でもしてくれたらなーと思って入れたから意外だった。

「薔薇貼ってくれ、ここに」指を差したのは左手の薬指。気障だな〜……という気持ちより、いらないと言われなかった安堵の気持ちが勝り、喜んで引き受けることにした。

 カイザーのお手を拝借、と大きな手を下から掬い上げ施術する。シール台紙から一輪の薔薇をぺらりと剥がして油分をオフしたカイザーの爪にのせる。ベースコートを塗る時間は流石になかったけれど、速乾のトップコートはかけた。

 こんなに長く手に触れることもそんなにない。節くれ立っていて大きくて分厚い。末端まで暖かくて、冷え性の私は施術が終わっても握っていたい欲望に駆られる。冬にちょうどいい温もりだ。

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 カイザーの手を支える私の手の甲に、するりと這う親指。

「ねえちょっとやらしい触り方しないで!」

「ンー?鈴がご所望なら俺はいつでもいいぞ」

「ちょっと!ヨレるから動かないで!」

 そしてその後の試合中、ゴールを決めるたびに左手の薬指(正確には爪)にキスをするカイザーの姿が良く確認されるようになった。







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