Shrot story
コイバナ
「一途だよねえ。」
 私の為にわざわざ湯を沸かし、コーヒーを淹れてくれていたウィンリィは、おやつであるラスクをつまみながら振り向いた。
 キョトンとした表情である。
「ありがと。」
 椅子に座っていた私は、ウィンリィが差し出したカップを受け取った。
 その時、僅かに屈んだウィンリィの、透き通るような金の髪が、ふわりと腕を掠めた。
 にわかにシャンプーのような香りも漂った。
「で、どうなのよ。」
「え……。――あ。」
 其処で漸く私の提供した話題を理解したらしい。
 白い顔に、ほんのり赤みが差し、青い眼がゆらゆら揺れている。
「どうって、言われても――。相変わらず、あいつは旅してまわってるし。」
「でも、前より電話の回数増えたでしょ。」
 カリ、とウィンリィはラスクをかじって、少し拗ねた調子で唇を尖らせた。
「……増えちゃいないわよ。」
 私に伝えるというよりは、蓄まった不満が、ちらりと顔を覗かせたように、それは小さな声で呟くウィンリィ。
「この前だって久々に電話が来たと思ったら、機械鎧の出張整備。……錬金術も使えないのに、全く何やってるんだか。」
 近頃のウィンリィは、前以上に女性らしくなった。
 すべては、あの人――エドワード・エルリックの影響である事を私は知っているが、ウィンリィ自身は知らない。
「心配ではあるよね。無茶してそうだし。」
「――。」
 ウィンリィは力強く頷いた。
 それには、エドワードへの強い愛情が顕著に顕れていた。
「でも凄いよね。エドはちっちゃい時からウィンリィのことお嫁さんにする気だったもんね。フラれてたけどさ、昔は。」
「あ、あれは違うわよっ。そんなんじゃなくって……っ。」
「――でも、本当に凄い。ずーっとずーっと、両想いだったんだもんね。」
 コーヒーを啜りながら、ウィンリィの顔を見つめる。
 恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、口元は嬉しそうに微笑んでいた。
「今までいっぱい心配して、不安になって、泣かされた分、エドにしっかり幸せにしてもらってね。」
 そう言うと、ウィンリィは今度こそしっかりと笑って、冗談っぽく了解と言った。




end
10.11.26
完結後の話。
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