「響香ちゃん!見てみて、今日は新作のお菓子もあるよ」

「うわ……またそんなに沢山……」

 私の机の上に敷き詰められたお菓子を見て、響香ちゃんは呆れていた。初めのうちこそ彼女を含め、クラスの皆もこのお菓子の量を見て驚いていた。今では見慣れたこの光景に驚く人は少ない。むしろお菓子の量が少ない日は心配されるくらいである。……月末はお小遣いの残金がやばくて買えなくなっているだけなのだが。

 私の個性はお菓子と関連しているとかではない。砂藤くんのシュガードープみたいに甘い物を摂取しなければならないとかそう言った類でもなく、単にお菓子が好きというだけ。

 中でも好きなのはチョコレート系のお菓子だ。アーモンドが入っているやつとか、口に入れた瞬間溶けちゃうやつとか、色々なフレーバーのやつとか、商品数も沢山あってお店で選んでいる時間も好き。

「これなんだけど、ホワイトチョコがね、塩バニラ風味で!下のビスケットと合いそうな予感しかしなくない?!パッケージもお洒落。即買いだったの。絶対美味しいよ」

「……本当お菓子の事になると饒舌になるね」

 普段大人しいのにギャップが凄いと響香ちゃんは言うが、多くの人は自分の好きな物事に対して饒舌になるものではないのだろうか。緑谷くんとかヒーローの話になると凄いし。お菓子について語っている私も側からみたら彼みたいな感じなのだろうか。……それは確かに普段との差がありすぎると言われても仕方ない。

「相変わらず凄ぇな、お前」

「っ?!と、ととろっ……くん!」

「……俺はトトロじゃねぇ」

 何度目だこの遣り取り、なんて轟くんの口から溢れていたけど、私の脳内は絶賛パニックだ。だって、だって轟くんが私に話し掛けてくれたんだ。もっと何か会話を弾ませたいのにっ。「あー」とか「うー」とか、まるで赤子のクーイングだ。

「お、これ知ってるぞ。ヒーローチョコだろ。中に一枚ランダムでヒーローのシールが入ってるやつ」 

「そうなの!今でも新規で若手ヒーローが追加されたり、人気のヒーローもホログラム加工されてたり、新コスチュームに変更されたりしてるの。チョコの味は昔ながらの懐かしい感じだよね。……えっと、もし良ければ……と、轟くんにあげます!」

「いいのか?悪ィな。貰うぞ」

 嗚呼、今日はなんて良い日なんだ。バレンタインはまだまだ先だけど轟くんにチョコを渡すことが出来た。本番は手作りチョコを渡したい。私の手作りより断然買った方が美味しいって事は重々承知している。でもやっぱり好きな人には手作りをあげたい。

「げ……。シール、クソ親父かよ。なんかキラキラしてる」

「わぁ、エンデヴァーさんのレアシールだよそれ。新規追加されたやつだ」

「いらねぇからお前にやる」

「い、いいの?!ありがとう!やった。緑谷くんに後で自慢しちゃおうかな」

 私が買ったお菓子に付いてきたシールだけれど、轟くんからプレゼントされたみたいで嬉しい。その矛盾に気付いた轟くんもなんか可笑しくねぇかと笑っていた。間近で彼の笑顔を見れてる私、明日ヴィランに殺されるのではないか。こんなアリーナ席でっ。あーもう好きです轟くん!

「俺も好きだぞ」

「えぇ?!」

 広げていたお菓子を机の端に寄せてから悶え伏せていたのだけれど、私の聞き間違いでなければ轟くんに告白された気がするっ。響香ちゃんに証言者になって貰うべく顔を上げて彼女を見れば、何とも言えない顔をしていた。首をくいっと横に小さく二度振り、目線は斜め下に向かっている。それを辿ると轟くんの指があって、一つのお菓子を指していた。ロングセラーのスナック菓子だ。……まさかそんな。

「これうめぇよな。俺も好きだ、この菓子」

「……うん。美味しいよね、そのお菓子」

 同情したような響香ちゃんの顔が私の心の傷を抉る。いっそそのイヤホンジャックで心の臓を刺してくれ。この時ばかりは轟くんの好きなスナック菓子について饒舌に喋ることが出来なかった。もうそのお菓子嫌いになりそう。







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