「余所見とは余裕じゃねぇか液体女ァ!死ねェ!」
  
「液野!」

 浮かれていたんだと思う。油断もしていた。戦闘訓練で久々に轟くんと一緒になれたから。それが嬉しくて周囲の警戒を疎かにしていたなんてヒーローを目指している身としては失格だ。ヒーロー側の爆豪くんが爆音と共に瓦礫を掻き分け、ヴィラン側の私に向かって右手を伸ばしてる。彼の攻撃を防ぐ壁を瞬時に作れない。液体化したとしても地面で蒸発させられそうで。

「っ……!」

「と、轟くん?!」

 判断に迷っていた私は強いくらいの衝撃で轟くんに背中を押された。元いた場所には彼が氷壁を作って爆豪くんの爆破を防いでいた。それでも爆破の熱と暴風により砕け散った氷の破片が幾つも轟くんの身体に降り注ぐ。

「轟くん血がっ!」

「擦り傷だ!問題ねぇ……」

「邪魔すんなや舐めプ野郎!」

 爆豪くんが標的を轟くんに変えたその時、オールマイトの声がスピーカーから聞こえた。爆豪くんの対応を二人でしている間に彼とペアである響香ちゃんが核を確保していたのだ。爆豪くんは攻撃を寸止めされた事が不満なようで、舌打ちしていた。……ヒーロー側の勝利。これは完全に私の不注意だ。轟くんに申し訳ない。

 講評ではやはり私の不注意のことを真っ先に言われてしまった。実戦では一瞬の隙が命取りだと。全くもってその通りだ。これでは市民をヴィランから守るどころか、自分がやられてしまう。

「本当に今日はごめんなさい、轟くん……。足引っ張った挙句に怪我までさせて……」

 擦り傷だと言い張る轟くんだったけど私には外傷が酷く見えて半ば強引に保健室に連れてきたのだが、リカバリーガールもこれぐらいなら治癒する必要はないと彼の傷口に消毒をして絆創膏を貼るという私でも出来る処置しかしてくれなかった。今思えば、例え治癒だと分かっていても好きな人がチューされてるのを見るのは嫌だな。

「リカバリーガールも平気だって言ってただろ。それよりお前、本調子じゃなかったのか?戦闘訓練、上の空だったろ」

「それはっ。体調は全然万全!理由は私情が入りまくりで言えないんだけど……。そもそも訓練中にしっかり集中してないのがいけないよね。……本当申し訳なかったです」

 具合が悪くないなら良いがとこちらの心配をしてくれる轟くんは優しい。彼は変わったと思う。入学したての頃はピリピリしていて、どこか近寄り難かった。勿論そんな彼もカッコ良かったけど、今はもっと格好いい。

「探知系がサポートについてると強ェな。場所がバレる」

「使えないペアで本当申し訳ないです……。響香ちゃんの個性強いよね。私なんかより響香ちゃんが轟くんのペアだったら良かったのに」

「何度も謝るなよ。それから自分をあんま卑下すんな。お前の個性も強ェよ。液体になれるし、色んな種類の液体出せるし。今回は作戦不足だ。次頑張ろうな」

 私の頭に手を乗せてぐしゃぐしゃと髪を撫でながら慰めてくれる轟くんは本当に狡い。益々惚れてしまうからこれ以上イケメンスキルを上げないでほしい。彼は勿論無意識なんだろうけど身が持たない。

「お前やっぱ体調良くないだろ。熱でもあるんじゃねぇか?顔赤ぇぞ」

「と、轟くんのせいだからね?!」

「……?俺、今回左側使ってねぇ」

 取り敢えず冷やすかと右手を私の額につけて個性を発動してくれた轟くん。まだ微調整が苦手なんだろうな。急激に冷やされた事によって私の血管が収縮してしまったようで頭痛がする。彼に触れられて嬉しいのに結局私は保健室で休むことになってしまったのだった。







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