希望の眼光


 フリックという青年に半ば無理やり付いて行って、オデッサという女性に出会う。噂話程度にしか考えていなかった解放軍が、ビクトールの中ではっきりと輪郭を持つようになる。オデッサの目を見たからだ。世の中をぶち壊してでも、変革を望む本気の目。この目を持つ者がいる。今は無謀に見えても、やがて大きな力を蓄え、いつか本当に今の赤月帝国をぶち壊すのだろう。
「なあ、俺も仲間に入れてくれないか?」
「あなたが? この国の人ではなくても、戦ってくれるの?」
「勿論だとも。面白そうだからな。あんた、本気だろう? 俺はこういうことが好きなんだ」
「なるほどね。そういうことなら大歓迎よ。あなたは信用できそうだしね」
「オデッサ、本気かよ!」
「ええ、本気よ」
 オデッサという女性は、とても生気に満ちていた。彼女のために動くのは、面白そうだ。そう思えばこそ、ビクトールは解放軍に入る気分になった。


 そして赤月帝国の総本山ともいえるグレッグミンスターにふらりと立ち寄った日のこと。あの夜は雨だった。街の様子がなにやらおかしい。そんな時に、財布をどこかに置いてきたという体たらくだ。まあ、この混乱に乗じて逃げればいいかなどと思っていた時だった。
「この小僧、なにをしやがる!」
 兵士の怒鳴り声が宿屋に響く。なんということもなく、ごく自然にそちらの方を見た。緑のバンダナの少年が立っている。俯いてはいるものの、その目は、こんな兵士ごときに負けない光を宿していた。オデッサに良く似た、強い強い光だ。
 ――あいつは、本当にでけぇことをやるぜ。
 そう思ったら、自然と身体が動いていた。
 ビクトールのこの行動は、ただのきっかけに過ぎなかっただろう。後から聞けば、帝国の腐敗した政治に物申したいことが様々にあったようだ。特にロックランドにバルカスとシドニアを助けに行った時など、「そういえばここで……」と、帝国の役人に暴行を受けている子どもを助けたことを話してくれた。彼は実に真面目で、まっすぐで、正義感の強い少年なのだ。

 少年は多くの困難を乗り越えながら、解放軍に勝利をもたらした。ビクトールの役目も終わった。グレッグミンスターの城から少年を逃がした後、フリックと共に命からがら城を脱出し、ビクトールは尋ねた。
「なあ、フリック。おまえこの後、アテはあるのか?」
「アテ、ねえ。まだ村に戻るつもりはないし、オデッサのいない国に未練もないし」
「だったら、俺と一緒に都市同盟に行かねえか?」
「は? 都市同盟?」
「あそこのリーダーとは古い知り合いでな」
「おまえ、一体何者なんだ」
 眉根を寄せるフリックに、ビクトールは頭をぼりぼり掻きながら、もう一度提案した。
「まあ、そりゃいいんだ。どうだ? でっかこと、したくないか?」
 全く、戦いの好きな男だと、フリックは呆れていた。だが同時に、笑っていた。



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Written by @uppa_yuki
アトリエ写葉