▷ ひょっとして小悪魔(桃矢)
おれはお前のぜんぶが好きだ。
その髪から感じるシャンプーのにおいも全部、たまらなく。
楽しそうに話すおまえの横顔はいつも魅力的で。
おれの隣に座って楽しそうに笑って。
「どーかしたの?とーや」
まっすぐおれの瞳を見つめると、ふわりと微笑む。
「いや、何でもねーよ」
「そっかー」とまた向こうを見て、またおれはその横顔にみとれて。
「なんだか眠くなってきちゃった」
おれの左肩によりかかってあくびをするお前。
急に吹いた風に桜の花びらがおちてくるのをつかもうとする。
「何やってんだ」
「落ちるまでにつかむと、願いごとが叶うっていうでしょ?」
座ったまま手を伸ばしてるのがガキみてーだ。
あきれたおれはその場に寝転んだ。
日差しがまぶしくてまぶたをおろす。
「ガキかお前は」
「ガキじゃないよ、わたし」
唇に感じたのは間違いなくおまえのやわらかい唇。
「ガキならこんなこと出来ないでしょ?」
おれの胸に顔をうずめていう。
息がかかるところだけが何だかなまあったかい。
「とーやのばーか、ガキじゃないもん」
ちらっと見えたおまえの顔は笑ってて。
「そういうところがガキっぽいんだよ」
ふくれっ面になった顔もかわいいな、なんて思った。
「でも、そういうところが好きなんでしょ?」
こいつはたまにこういう顔をする。
さっきまでのガキみたいな顔はどうした。
どうして急に大人の顔になるんだよ。
「わたしのこと、好き?」
「いわせてーのか」
「うん」
でもそんなおまえが好きで、好き過ぎて、仕方ないんだ。
ひょっとして小悪魔
(……愛してる)
(愛してるは嫌ー!)
(……なんで嫌なんだ)
(なんとなく)
うわー小悪魔じゃなくなったどうしましょー!確信犯だといいですよね……というより天然なのか?
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