▷ 手をつないで走ろう(雪兎)
「ごめんね、待った?」
クラスの違うわたし達はいつも学校をでて、すこしはなれたところで待ち合わせ。
玄関や校門で待ち合わせじゃ、たくさんの人に見られてはずかしいからっていうわたしのわがままをきいてくれた雪兎。
「じゃあいこっか」
「うん」
いつもどおりに歩きだして、他愛のない会話をする。「最後の授業が体育で疲れちゃた」とか、「きょうのあのテレビ番組楽しみ」とか、本当にどうでもいいような会話。
「ぼくはね、きょうの夜ごはんカレーにしようと思って。スーパーでタイムセールがあるんだ」
「いいなー。お買い物ついていっていい?」
「あっ、それならきょうの夜ごはんぼくの家で食べていく?」
「いいの?」
「もちろん!」
いつもこんなふうにのほほんとした感じだからときどき不安になる。高校生ならしょっちゅうデートしたり、毎日のように電話したりするものだと思うから。
わたし達はあんまりべたべたしてない気がする。とはいってもわたしはそういうの苦手だから、いいっていったらいいんだけど。
手、くらいならつなぎたいかな。
「まなみ」
さっきまで横にあった雪兎の顔が、ぐいっとわたしの顔をのぞきこんだ。その驚きでおもわず歩くのをやめてしまったわたし。
「……何っ?」
雪兎はちょっと気まずそうにはにかむと、すっと左手をさしだした。
「手、つながない?」
「は?」
急にいままでいって欲しかったことをいわれて、驚きのあまり変な声をだしてしまった。
「右手、いい?」
「い、いい、いいけど……っ」
いわれてすんごくうれしかったのに、どぎまぎしてしまって。
「ほんとはね、ずっと前からいいたかったんだけどさ」
この年頃の恋人同士なら、もうキスとかするんだろうけど。
「なかなかいいだせなくて」
わたし達はゆっくりでいいのかもって思って。右手をゆっくりと雪兎の左手に絡ませた。
「これでやっとまなみと手をつなげるね」
雪兎の左手は、わたしの右手を優しくにぎりかえしてくれた。
「……うれしいんだ、やっといえたから」
そしたらわたしは雪兎に抱きしめられてて。
「雪兎っ……ここ歩道の真ん中「すきだよ」
普段はいってくれないのに、突然思いたったみたいにいう。
「まなみ、すきだ」
「……うん」
「すき」
「……うん」
「まなみは」
「……好き、……だよ?」
抱きしめられたままじゃ、愛しい顔はみえなくて。
「ぼく、いま、すごくどきどきしてる」
雪兎の一言ひとことに胸のあたりがむずがゆくなる。
「……ねっ、はやくスーパー、いかない?」
「あっ、タイムセール!忘れてた!」
タイムセールのことを思いだして、わたし達は慌ててからだをはなした。
でも、さっきつないだ手は、そのまま。
手をつないで走ろう
(もうすこし、手つないだままでもいいかな?)
(ぼくも、もうすこしこうしてたい)
完全なる自己満足。ただ、ヒロイン好き過ぎて焦ってる雪兎もいいなって思った。title by 確かに恋だった
back
top