▷ ウェイターを呼んで(桃矢)
「なるほど。そういうことか」
「うん、ちょっとこらしめてやろうと思って」
あんまり2人きりで会ったことのないまなみに呼びだされたから何かと思えば、なんだそういうことだったんだ。
「最近ちょっとつれないから、お仕置き」
独占欲がつよーい桃矢がつれないなんて、何があったんだろ。独占欲のかたまりみたいな人なのに。
ヤキモチをやかせようとわざわざ桃矢がバイトをしてるファミリーレストランに来て2人でおしゃべりをする。
「何でつれないのかな」
「ほら、恥ずかしがり屋だから」
何かぼくのいうことに期待してたのか、そういった途端にまなみは大きなため息をした。
「それくらい知ってるよっ」
「そうだよね……」
ファミリーレストランに来てまで桃矢をこらしめようなんて、まなみも頑張ってるよね。
「とーや、最近キスしてくれないの。だからお仕置き」
だからちょっと手伝ってくれないかって聞いてくる彼女の顔はものすごく真剣。
まなみと話してると、彼女ごしにバイト中の桃矢がみえる。
「雪兎、ちょっと近寄って?」
「ん?」
テーブルの上に身をのりだしてまなみに近づいた。
「内緒話してるみたいにして?」
なるほどそれでぼく達が仲よさそうにしてるのをみせてヤキモチをやかせようとしてるのか。
そうしたらまなみはぼくの耳に手をあててこしょこしょと話しだした。
「どう?桃矢みてる?」
からだをもとにもどして桃矢を盗みみると、あきらかにイライラしてる桃矢がみえた。
「すごく焦ってるよ」
「でしょ?ふふーん、とどめだっ」
まなみはベルを鳴らしてウェイターの桃矢をよぶ。
「……ご注文は?」
「苺のタルトと、ミルクティー」
「ぼくはエビピラフ一つ」
ムスっとした桃矢が注文したものを読みかえす。そして行こうとする桃矢をまなみが呼び止めた。
「ねえ、とーや」
「ん、何だ」
わざとらしく桃矢のズボンを少しだけつまんでひっぱってる。
「バイト終わるまで待ってるからいっしょに帰ろ?」
「……ああ」
「……あ、ちゃんとヤキモチやいてくれてる!」
まなみはいつもみたいな笑顔で甘えるみたいに言った。
「わざとそうしてたんだろ?」
「だって最近桃矢つれないんだもん」
桃矢はいい加減あきれたみたいにため息をした。
「キスしてくれないから」
「…………」
人がたくさんいるファミリーレストランで、よくそんなこと言えるよ。全体にはきこえてないけど隣の席の人達には絶対にきこえてる。
「帰りに絶対キスしてね、約束っ」
まなみはまだ小さい子供みたいに小指をさしだした。そしたら桃矢はさっきまなみがぼくにしたみたいにまなみの耳に手をあてた。
「……はじめからそのつもりだ」
こしょこしょ声なんて意味ないよ、ばっちりきこえてる。
ウェイターを呼んで
(どうせならここでしてくれてもいーよ)
(まなみ、調子にのるな)
(雪兎っ!やっぱり桃矢がつれない!)
なんか途中が雪兎夢に。連載とは違う強気なヒロインにしたかったらこんな感じになりました。title by 虚言症
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