▷ あなたの温もり独り占め(ユエ)




 わたしは隣に立っていたユエさんの横顔を見つめていた。
 ケロちゃんがいつも言っている通りのあからさまに機嫌の悪そうなユエさん。

 特に今、すごく機嫌が悪そう。

———……寝起きなのかな?

「何だ、まなみ」

 わたしの熱いまなざしが気になったのかユエさんはからだを少しも動かさずに視線だけをこちらに向けた。

「……寝起き?」
「違う」

 きいてみたらあっさりと即答されてしまった。

「なーんだ、違うの」
「ああ」

 いつもとかわらない素っ気ない会話。まあ、愛想が良いユエさんっていうのも想像出来ないけど。
 そこで会話は終わってしまって、ユエさんは視線をもどしたかと思ったら目をつむってしまった。だからわたしは思いきってユエさんに寄りそってみた。
 それから静かにユエさんの胸あたりに顔をうずめて、ゆっくりと腕を背中にまわした。

「何だ」

 これで照れたりしてくれたら可愛いのに、またあっさりとかえされた。しかもさっきと同じ、「何だ」って。
 でも離してくれとは言ってこなかったのがうれしい。

「落ち着くの、こうしてると」
「…………」

 ユエさんに寄りそっていると思わず寝てしまいそうになる。実はちょっと疲れてもいたし。
 今のわたしからは見えないけれど、きっとユエさんはさっきよりもっと不機嫌そうな顔をしてるにちがいない。嫌なら嫌っていえばいいのに相変わらず無口。
 そんな何も言ってこないユエさんに甘えて、わたしはしばらくの間そのままでいた。

「もういいよ、ありがとう」

 数分たって、ユエさんの背中にまわしていた腕をもとにもどして体を離そうとしたとき、自分の体がユエさんの片腕に支えられた。

「?」

 わたしは反射的に顔をあげてユエさんの顔をみた。でも目線はあわしてくれずに前を向いている。

「……ユエさん?」

 少しの間沈黙が続いてちょっと気まずいななんて思っていたらようやくユエさんの唇が動くのがわかった。
 いったい何て言ってくれるのか。

「離れなくていい」

 どういう意味の「離れなくていい」なんだろう。
 わたしの疲れた体を気遣ってくれたのか、それともユエさんがわたしに傍にいてほしいってことなのか。

「そのままでいろ」

 この際どっちでもいいけど、わたしは勝手に後者だと思っておく。

「嬉しいな、そう言ってくれるの」

 たぶんもう返事はしてくれないだろうけどわたしはそう言って、ユエさんの胸あたりにまた顔をうずめた。


あなたの温もり独り占め
(こんなにも好きなんだから、いいでしょ?)




なんかだんだん文章の意味がわからなくなってきたようわわわわ……はじめてのユエさん夢だから大目にみてくださいね。title by 虚言症



 
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