▷ そんな君に期待(雪兎)
朝、いつものように学校に来たらまさかと思うようなことになった。
「えっ……?」
「まなみ聞いてなかったの?席替えのこと」
それまで話したことのなかった月城君とお好み焼き屋さんで知り合って1ヶ月。はじめて月城君と話したお好み焼き屋さんでまた一緒に行こうと約束してから、月城君はちゃんとわたしを誘ってくれた。
この1ヶ月の間にも、一言二言だけど学校にいるときにお話しをした。
本当にちょっとしかお話し出来てないけど、今までまったく関わりのなかったわたしからしたらそれはものすごい進歩だった。
「席替えか……」
月城君とお話しできたのは席が近かったからだ。
席が離れてしまったら、もうお話しできる機会なんてなくなっちゃうんだと思ったらなんだか悲しくなった。
あのお好み焼き屋さんに一緒に行ったのも、きっと月城君のとっさのノリだったんだろうし、もう誘ってくれることはないと思う。
そんなことを考えてる間にも席替えのあみだくじが近くの席の子からまわってきた。
この際どこの席になってもいいや、と思って適当に自分の苗字を書きこんであみだくじを違う席の子にまわした。
「森下さんはどこの席がいい?」
突然隣の方から声がして、それは聞き間違えるはずのない月城君の声だった。
「……席?」
「うん、どこの席がいい?」
急に月城君に話しかけられた驚きと、胸のドキドキとでわたしの頭の中は真っ白になってしまっていた。
それでもなんとか心を落ち着かせて、少し考えてから「後ろの席がいい」なんていう嘘をついた。「どこでもいい」って言うのはちょっと適当な女の子みたいで気が引けたから。
「ぼくも後ろの席がいいな」
唐突に月城君は言った。
「月城君も後ろの席がいいの?」
「うん」
月城君が後ろの席がいいなんてこと聞いたら、わたしはどこでもいいなんて思っていたことなんて忘れて、月城君と同じように後ろの席がいいと本気で思った。
そしたら月城君は身体をわたしの座ってる方に少し傾けて、さっきよりも小さな声で話しかけてきた。
「実はね……」
「う、うん……!」
何のお話なのか、緊張でわたしの声はうわずっていた。
「森下さんと仲よくなれたらなーって」
月城君の言ってることを理解するのには少し時間がかかってしまった。
「……それってどういうこと?」
「また席が隣だったら、いいなって思って」
月城君はわたしの質問にさらっと答えた。
そんな君に期待
(もしかして……隣、月城君?)
(うれしいな。ぼくの希望通りの席だ)
前回、突然おもいついた問題作の続編。title by 虚言症
back
top