続・うさぎ男子
※ ぬるいですがやや裏です。R指定ではございませんがご注意下さい。
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名前の通り、雪みたいに真っ白な肌はきっと童話に出てくる白雪姫にも負けないくらい美しい。
名前の通り、彼の優しい笑顔はウサギみたいに愛らしい。
「ねえ」
「?」
「したい」
そう言われて、優しく触れるだけのキスを繰り返されたかと思えば、って、あれ、どうしてこうなったんだっけ。月城君が体調崩したって聞いて家に駆けつけて……どうしよう、頭がまわらない。
「本当にだいじょうぶ……?」
「平気、ただの風邪だから」
月城君が珍しく体調を崩したみたいで、わたしはそのお見舞いに朝から月城君の家へ来ていた。
学校がお休みの土曜日に特に意味も無く月城君の声が聞きたくなって、電話をかけたら月城君の声がなんだかおかしくて。風邪じゃないの、と聞けば「確かに今日何だか怠いんだ……風邪かも」と軽い返事が返ってきた。
そして今わたしは横になっている月城君の隣に腰をおろしていた。いらっしゃい、と平然とした様子でわたしを家にあげてくれたけれど、その顔はあきらかにしんどそうで、いつもより小さい声も掠れていた。
横になっている月城君はもちろん眼鏡をはずしていて、うつろな瞳でこちらを見つめる。
不謹慎かもしれないけれど、それがまるで何かの絵画みたいに本当に綺麗で、思わずぼーっと眺めてしまっていた。
すると体重を支えるのに床に置いていた手に熱が触れた。突然のことに少しビックリしたけれど、その熱の正体は熱くなっていた月城君の手の平だった。色白な肌のせいか低体温だと勝手に思いこんでいたわたしは、その熱さに焦りを感じた。
「すごい熱………」
体温計は無いのかと立ち上がろうとすると、月城君の左手に引きとめられた。
「体温計はどこにあるの?」
「いい、………熱は、いいから」
月城君は途切れ途切れに息をすいながら少し苦しそうにそう言うと、その真っ白な手でわたしの手をさっきよりも強く握った。
「添い寝、してくれないかな」
月城君の視力がどれ程悪いのかはわからないけれど、恐らくこの距離でわたしの表情までは見えていないだろう瞳がわたしを見つめる。いつもわたしを甘やかすばかりで自分が甘える事なんて滅多にない月城君が今、わたしに甘えてくれているのだ。それに風邪のせいですこし鼻にかかった甘い掠れ声でそんなことを言われて、断れる訳がない。
そしてその細い腕には似合わない強い力ですっと抱き寄せられたら、風邪なんか嘘で、さっきまでのことはすべて演技だったんじゃないのかと疑える。けれど髪にかかる月城君の荒い息に、布越しに触れている熱い肌は本物だ。
「うつっちゃったらゴメン」
耳元でつぶやかれるのは心臓によくない。きっとこの心臓の音は月城君にも聞こえて、いや、こんな風邪ならそんなこと、気づいてないか。
「まなみの胸の音、聞こえる」
うそ、やっぱり聞こえてるんじゃない。
「ぼくのせいかな?」
そうだよと返せばくすりと笑われたから、仕返しだと腰あたりをこしょこしょとこそぐってやった。
「だーめ」
けれど少しだけ触ったところでそれはあえなく月城君の手に阻まれてしまって、ぐーっと腕ごと引っ張られる。そしてわたしの腕は自然に月城君の首へ、遠慮がちにだけれど抱きしめるようにまわされた。
そこでぱちり、とあった瞳と瞳。
少しだけ赤くなった頬に、虚ろにわたしだけを見つめる瞳に、いままで感じたことのない感情がふつふつとわいてくる。
この思いが何なのか、わたしは知らない。
男の人なのにすごく綺麗で、けれど身体はしっかりと大きくて、でも肌なんか本当に綺麗で、気がつけばわたしは何かに吸い寄せられるように動いていた。
「…………まなみ?」
そして困ったように眉をさげて月城君はわたしの名前を呼んだ。
わたし今、何を、したの。
それは一瞬だったはず、月城君の熱が確かに唇に残っている。
キスをしたのだ、自ら、月城君に、しかも自分からするのははじめての、くちづけ。
何か話さなければと慌てて口をひらこうとしたら、今度は月城君の唇でそれを塞がれた。
「ん、っ」
少し触れただけかと思えば入り込んでくる熱い舌、わたしの知らない深めのキスに頭がくらくらして、息があがる。
「ねえ」
「?」
「したい」
熱はと聞けば、そんなの知らないの一点張りで、間髪いれずに今度は触れるだけの優しいキスを繰り返す。
「はじめて、まなみからキスしてくれたで、しょ?」
「う、うん」
「そしたら襲うって、決めてた」
お正月だったかに今度はやめない、って言ったの覚えてる?と言いながら、月城君はいつの間にかわたしの上に覆いかぶさっていた。よく男は狼だとは言うけれど、今まさに月城君の瞳は狼みたいに鋭い。
「ずっと、こうしたかったんだ」
月城君の手が服の上から控えめに身体のラインをなぞるように触れる。布越しに感じる月城君の熱に頭がのぼせてしまいそうで。いずれはこうなるんだと覚悟はしていたはずなのに、心臓は壊れてしまうんじゃないかってくらいうるさく鳴っていた。
「月城く、………っ!」
ちょっと待ってと言おうとすれば、するりと肌に直接触れた月城君の指先の感覚に思わず息がつまる。
「好きだよ、すごく、好き」
気がつけばたくし上げられていた服、外の空気に触れて一瞬ぞくっとした肌にあらためて今の自分の状況を感じさせられる。
「……っ…………ン、……」
思わず漏れていた自分の声が、自分のものとは思えないくらい甘い声で驚いた。そしていつものように噛みつかれながら、月城君の脚がひざを割ってわたしの脚に絡みつく。
「つきし、ろくん、だ……っ!」
いつの間にかはだけた胸元の敏感に反応している部分を執拗にせめられて、頭はもう真っ白だった。気持ちいいってこんなことなの、身体のあちこちが熱くて、おかしくなっちゃいそうで。
「だめ、って?…………うそつき」
月城君だって嘘つきだ、可愛いウサギじゃなかったの、なんて頭の隅っこで思っても、その次にはいつかの木之本君のセリフが浮かんだ。
『知ってるか森下、ウサギって万年発情期なんだと』
それってこれからずっとこう、ってことなのかと思えば嬉しいような、しんどいような。
「何考えてるの」
「っ……え?」
その余裕なくしてあげる、と同時にせめられた身体が素直に反応する。布の下を優しく掠める指先に、脇腹をなぞる唇にあつい息、すべてがわたしをおかしくさせる。自分の全身が汗ばんでいる気がして嫌だ、恥ずかしい。
そして下半身が、お腹の奥がきゅうっとなる感じに、わたし感じてるんだと、まるで他人事みたいに思って。
「余裕無いのはぼくだけ?」
「……違、っ……!」
いつの間にか本来の意味を無くしてしまっていた下着が、なんとなく足首にぶら下がっているのがわかって、それにまた恥ずかしくなる。今更、だけど。
「声、我慢しないできかせてほしい」
それに月城君の一言一言が、追いうちをかけるようにわたしの顔を熱くさせた。
「ゃ、……ふっ……、あ、あ、っ、」
我慢出来なくなってしまった声は月城君の機嫌を良くさせたらしい、ふっと笑って、キスをして、わたしの身体を愛撫する。
「いい子だね」
好きだよ、と月城君がつぶやくと同時に、わたしは意識を手放した。
続・うさぎ男子
(っくしゅん!…っぁあ)
(風邪か?)
(やっぱりうつしちゃったね)
(つ、つつつ、つつ月城君!!!)
(……んな焦り方したら普通にばれんぞ)
*
雪兎さんってなんかネットリしっとり相手が感じてるとことかじっくり観察して、じわじわせめてきそうだわよね。そんな妄想しながら仕事してたらボールペンで手の甲を刺してしまった管理人です。てか月城君風邪ひくんか?
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