あらすじ…誘拐した人と一緒に私の家に行く事になりました。
04
「じゃあここで待っていてください」
「何でだよ、中に入れろよ」
「嫌です」
「おかしいだろうが」
「おかしいのはあなたです」
私の家に到着し、玄関の外で待ってて貰うように言うと内藤さんは顔をしかめた。
そのさも『俺は間違っていない』という顔はやめてもらえませんかね。
「あの……私は内藤さんの家に戻る気はありませんよ?」
「なん、だと……ッ!」
「いや『なん、だと……ッ!』じゃないですよ!」
「住めば都って言うだろうが」
「住んでも独房です! 縛られてますし!」
「俺はアンタと離れたくない」
一歩も引き下がろうとしない内藤さんが駄々をこねる子どものように見えてきた。
私は家のカギを取り出し、ドアを開けて中へ入り、外に立っている内藤さんに告げる。
「はぁ……では、今日は"友人として"ご飯を一緒に食べましょう。そしたらさよならですよ、いいですね?」
「毎朝、アンタの味噌汁を飲ませてくれるって?」
「どんな耳を持っていればそこまで言葉が歪曲されるんですかね!?」
「わかった、一緒にアンタの家で暮らそう」
「拒否します」
私は玄関のドアを素早く閉める、が閉まらない。
ふと下を見ると、内藤さんの足が挟まっていた。
これは昔のセールスマンがよく使う手だ。いや、あなたボディガードでしたよね。
私は呆れながらドアの隙間から内藤さんを見ると、ドヤアアァーと言った顔でこちらを見ていた。腹立つ。
ドアノブを握る手に力を込めて内藤さんの足ごと思い切り閉める。
「恐れ入ります!」
「痛え! アンタの愛が痛え!」
「愛なんてどこにもありません!」
バッタンバッタンと力強くドアを閉めようとするが一向に閉まる気配はない。いや、もはや内藤さんの足を挟んで痛みを与える事が目的になっていた。
内藤さんのその無駄な粘り強さはもっと別のところで生かしたほうが良いと思う。
「内藤さん、いい加減にしてください!」
「落ち着けよ名前、俺の何がいけない?」
全部だよ! 出会ってから今までの行動全てが最悪だよ!
と、声を大にして言いたいところだ。
「私はこの通り部屋着のままだから、着替えたいしシャワーも浴びたいし、とにかく色々準備がしたいんです! ちゃんと食事には付き合いますから、少しだけ待っててください!」
「仕方ねえな、名前とは1秒でも離れたくはねえが……早くしろよ?」
「善処します!」
「っヅぁ!」
私は内藤さんの足を蹴って外へ出し、そのまま勢い良くドアを閉めた。
しっかりとカギを掛けるのも忘れない。
部屋に入ると昨夜コンビニへ出かけた時のままだった。
ああ久しぶりの我が家! やっぱり自分の家が一番落ち着く!
出来る事ならこのまま寝慣れたベッドでもう一眠りしてしまいたい。
でも内藤さんが外で待ってるし…というか、正直なところ1人にしておく方が怖い。
外にいるのに不安なのは、昨夜、散々恐怖を植え付けられたからだと思う。
簡単にシャワーを浴びてちゃっちゃと着替えて身支度を済ませる。
財布は持ったし、携帯電話は……
「そうだ、内藤さんが持ってるんだった……!」
「名前、まだか?」
「うーんと、もうちょっと待っててくださ…」
…………んん?
背後から掛けられた声に私はゆっくりと振り向いた。
そこにいたのは紛れもなく愉快な誘拐犯、内藤さんで。
「ちょっと!? ななな何で部屋に入ってるんですか!? 鍵は閉めたはずなのに!! ハッ、まさか窓が開いて……!」
私はベランダ側の窓へ走り、鍵を確認するが閉まったままだった。
1階だからそれもありえるかと思ったけど……。じゃあ、どこから?
しかし彼は私の予想斜め上をいく返答をした。
「あんな鍵、針金1本で十分だ」
内藤さんが手に持っているものは、まごうことなき針金。
誘拐の次はピッキングだなんて、本当に犯罪道を極めているのではないだろうか。
「何してんですか!? ねえ、何してんですか!?」
私は内藤さんの胸倉を掴んで叫ぶ。
しかし彼は私が鬼気迫る表情で詰め寄ってもどこ吹く風で、やれやれと言った顔。
「こんな簡単にすぐ開けられちまう鍵のアパートなんかやめろよ、危ないぞ?」
「主に内藤さんがね!」
「? 安心しろよ、鍵はまた閉めといたから」
そういう問題じゃない。
というか、内藤さんを中に入れない為に鍵を締めたのに。
…………"鍵"ってなんだっけ。うう、現実逃避しそうだ。
「本当にもう……あなたと出会ってからドキドキしっぱなしです……」
「ヘヘッ、もっとときめかせてやるからな…!」
「ときめきの方ではありませんし、期待もしてません! ピッキングも不法侵入も犯罪です!」
「恋人の家に入るのが罪っていうのか?」
また言った!
恋人じゃないって何度言ったらわかるんだ!
「あなたの行動が犯罪行為だらけで困ってるんです!」
「名前、アンタは存在が罪だ…この俺をこんなにも魅了して離そうとしねぇ。アンタは俺の心を盗んだ……窃盗罪だぜ!」
「 い ち い ち 気 持 ち 悪 い ! ! 」
何度『もうやだこのひと』と思った事だろうか。
色んな意味でご両親の顔が見てみたい。
こんな男、裁判長も助走つけて有罪判決下すレベルに違いない。
「さ、名前! 飯に行こうぜ!」
「さわやかに言い切った! ちょっとは悪びれたらどうなんですか!? 少しは反省してください!」
「俺の事はよく知ってるだろう?」
「あなたがどれだけゴーイングマイウェイかつ世間の常識が欠けているのかはよーくわかりました」
「面白い冗談だ。ルークってところだな」
すいません冗談じゃありません本気です。
ルークって何ですかわかりません。
「いいですか、内藤さん」
「そうだ名前、俺の事は『馬乃介』って呼べよ」
「あなたの行動は常軌を逸しています」
「恋人なんだから名前で呼び合うのが普通だろ?」
見事に会話のキャッチボールが成り立っていない。
これはもはやドッヂボールである。
「……馬乃介さんの行為は全て、世間では逮捕レベルですよ」
「やはり、名前に名前で呼ばれるのは心地良いな。わかった、以後気をつける」
「えっ」
何このすんなりスムーズな流れ!
私が内藤さんを名前で呼んだから?
……そうか、わかった。
向こうの要求を呑んだ上でこっちからも要求すれば聞いてくれるんだ!
って何ですかその面倒設計はあああぁぁ!!
私は今後の馬乃介さんとの"友達としての"付き合いを考えるとため息しか出なかったのだった。
「飯行こうぜ、飯!」
「ちょっと今良い感じに締めてるんで静かにしてて下さい。……馬乃介さん」
「わかった」
(ちょっと可愛い)
(20120329 修正20160727)
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Smotherd mate