「まーくんのバカ!」
「だからその呼び方はやめろバカ名前!」
素敵な休日の、素晴らしい午後の昼下がり。
私たちは大声を上げて喧嘩をしています。
「まーくんをまーくんって呼んで何がいけないの!?」
「喧嘩する度に変な呼び方すんのをやめろって言ってんだよ!」
「じゃあ"まのぴっぴ"って呼んであげるよ! これなら文句ないでしょ!?」
「悪化してんじゃねえかバカ!」
いっつもいっつも、喧嘩をすれば人の事を"バカ"呼ばわり。自分が悪いくせに全く悪びれないし、謝ろうともしない。
これでも一応会社のナンバー2らしいが、態度のデカさならナンバー1だと思う。
「せっかく草太さんが私のために限定ケーキを買ってくれたのに!」
「流石草太だな、いいセンスだ」
「その前は御剣さんから貰った紅茶のカップケーキ!」
「庶民にゃ味わえねえ味だったぜ」
「信楽さんから貰った特別なプリンだって……」
「ありゃ女の食うもんじゃねえよ、あのオッサンにはキツく言っておかねえとな」
ん、まあ。確かに信楽さんから貰ったプリンは女性の胸を象ったもので、食べるのに少し勇気がいるだろうけど。ってことはこの男、見ず知らずのおっぱいを食べたのか。私の知らぬ間に、どこぞのおっぱいを咀嚼したというのか。
「何故そこで言葉を止める」
「変態だ……」
「お前あに言ってんだ!? あれはただのプリンだ、食い物だ!」
「と、に、か、く! もし次に私の物を食べたら、う……浮気してやるんだから!」
「……あぁ?」
まーくんが眉間に思いっきりシワを寄せ、額に大きな青筋を立てた。手首を掴まれ顔がぐっと近寄る。三白眼の瞳に睨み付けられて少しビクッとしたが、ここで負けたくない。だって私は悪くない。
「今何て言った、名前」
「……浮気する」
「本気で言ってんのかテメェ」
「まーくんが悪いもん」
「そういう問題じゃねえ。俺がお前を離すと思ってんのか?」
その熱い告白に、私はギュッと結んでいたはずの口元がだらしなく緩んだ。
自分が何言ったかわかってるのかいないのか、見ればまーくんの耳は少しだけ赤くなっていて、それに気付いた私はふふっと笑ってしまった。
緊張感が一気に解けて、まーくんは照れ隠しに私の頬を抓る。
「何笑ってんだコラ」
「ジョーダンです。ふふふ」
「こんのバカ」
「またバカって言った……」
私だって本気でまーくんと離れようなんて思ってないし、浮気なんて論外だ。
けどそんな事言ったらまーくんは安心しちゃうから。
「次勝手にプリン食べたら、ジョーダンじゃなくなるかもね」
「んなっ!?」
しっかりと釘を差しておくのです。
(なんでアイツラは、コイツが俺の女だと知っておきながら餌付けしようとすんだよ!)
Smotherd mate