※別れ話バッドエンド
「……それで? いつまで続くのかな、そのつまらない話は」
「た、貴雅君……」
目の前に居るのは腹立たしくも僕が好き『だった』女性。自らの過ちを認めて悔やみ、馬鹿の一つ覚えのように謝罪の言葉を幾度も口にする。
でもね、悪いけどさ、君がどれだけ許しを請おうとも、僕は一ミリたりとも君に心を許さないんだよ。
「お願い、聞いてよ……」
「十分聞いた。聞いてあげたよ。そうすれば君も満足するだろうと思ってね。僕って、最後まで優しいだろう?」
僕だって出来ることなら許してあげたいけど、もう一人の自分が既に君のことを見限っているんだ。もうどうでもいいってね。君の話を聞いた僕が取り乱し、息巻いて怒るとでも思ったのかな。残念だけど自分でも驚くぐらい冷静だ。君に対する怒りや悲しみなんてものはない。呆れを通り越してもはや何も生まれない。
「可哀想に。君が足掻けば足掻くほど無様な姿を見せているだけだって事に、まだ気付かないんだ」
「……貴雅君……」
今にも泣き出しそうな君の顔、すごくそそるよ。最後に良いものを見せてくれた事だけは感謝する。君のその唇も、瞳も、指先も、全てが僕だけのものだなんていつから錯覚していたんだろう。
「……まだ、好きなの……」
どの口がそんな妄言を吐くのかと嘲笑う前に、何度も重ねた憎たらしい唇を押し付けられる。離れた後に僕の無感情な顔を見た彼女は目を見開き、もう何をしても無駄なんだ、とようやく理解したみたいだった。
「名前ちゃん。君は今までの女の中でもとびっきりの三流だったよ」
平手打ちをする手もなく、別れの挨拶を振る腕もない。もう君に与えるものはすべからく、何一つとして存在しない。涙を堪えていた彼女の瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。ああ、最高だ。まさしく素晴らしいフィナーレじゃないか。これだけ救いのない世界に満たされておきながら、こんなたった一つの事で僕は優越感に浸ることが出来るんだ。
清々しくも何ともない。心の底に沈殿した、タールのような、どす黒くて濁っているドロドロとした何かが溜まっていく。それらの暗澹たる底なし沼は、自ら創り出した心象風景と知りつつも畏怖の念を抱いてしまう。
そこに一滴だけ真実を零すなら――僕も本当に愛していたんだよ。君のこと。
でもそんなことは、もうどうだっていいや。
Smotherd mate