相応しいなどと思ってない。
しかし、私にも表舞台に立つ権利はあるのではないかと思った。
***
「名前君、そこの資料を取ってくれたまえ」
「はい、どうぞ」
直属の上司である御剣検事に言われ、私は傍に置いてあった青いファイルを手渡した。
ふと時計を見ると時刻は既に20時前。げ、もうこんな時間か。随分と遅くまで残業をしてしまったみたい。それも仕方ない、上司たっての命令だったのだから。
「すまない、そこのペンも」
「はい」
「あちらのスカーフも頼む」
「はいはい」
私の不安な気持ちとは裏腹に、平然と御剣検事は私にあれこれと指示を下していく。別に手伝いをするのは構わないんだけど……
「紅茶を淹れてくれたまえ」
「トノサマンのフィギュアをここに」
「検事オブザイヤーの盾を……」
――そろそろ我慢の限界です。
「あの、御剣検事。仕事と関係ないのであれば、私はそろそろ失礼したいのですが……」
「ム、関係なくは……」
「関係ないじゃないですか。スカーフもフィギュアも盾も! いつどこで何に使うと言うんですか!」
「う、うム……」
捲し立てるように言うと、御剣検事はバツが悪そうに目をそらした。ちょっと言い過ぎたかも……なんて思うわけがない。一体何度こんなやり取りをしたことか。数えたことはあったけど、両手両足の指は使い果たしたと思う。
「これから用事があるので失礼します」
「ああ、自宅で弟とスノーモービルでモンキーターンをする予定だったな」
「全然違いますけど!? ゴドー検事と約束があるんです!」
「そうか、それはすまない事をした。今日はこのくらいにしておくとしよう」
「その言葉、出来る事ならもっと早く聞きたかったです。お疲れ様です」
溜息を一つ零し、御剣検事の執務室を後にした。廊下を歩きながらあの上司の面倒くささについて考えるが、結論なんて出ない。
そういえば、私がゴドー検事と居ると必ず何かしら邪魔をしてくる気がする。きっと今日の予定も、もしかしたら途中で"偶然"御剣検事に遭遇するかもしれない。
私はまた大きな溜息を吐いて、愛しのゴドー検事が待っているロビーへ早足で向かった。
(冒頭の言葉はミっちゃんでした)
Smotherd mate