昨夜はサーカス団のみんなで遅くまで練習をし、終わった後は買ってきたお酒で飲み会を始め、遊んでいる内に眠くなり、そのまま適当に雑魚寝――をしていたはずだったんだけど。
なんで。
なんでなんでなんで。
アクロさんが目の前に居るの?
床で寝ていたはずなのに、目が覚めたら自分のではないベッドに寝ていて、しかも目の前にはアクロさんの顔。メイクを落とし、髪を解いた彼は何だか新鮮で、もし彼と恋人同士だったら毎朝こんなにドキドキなのかなと変な想像をしてしまう。って、いやいや違う。なんで私はここに居るの。状況的に、多分ここはアクロさんのベッドだと思うんだけど。
「……すぅ」
「ひいっ」
アクロさんの寝息に驚いてビクッとする。それまで静かに眠っていたのに、その振動のせいで彼は重いまぶたを徐々に開け、目を覚ましてしまった。
「あう、あの、その……おはようございます」
「……おはよう、名前ちゃん」
ふんわりとした笑みを浮かべ、瞼をこするアクロさん。あれ、私が一緒に寝ていることにあんまり驚いてない?
「あの、私そんなつもりじゃなくて、気付いたらアクロさんのベッドで寝ていたというか……夢遊病なのかなあ、とりあえず、ごめんなさい……!」
「いいよ気にしないで。だって名前ちゃんを運んだのは俺だから」
「そうなんですね。良かっ――……はい?」
アクロさんが私を自分のベッドに運んだ?
「昨夜は皆で雑魚寝をしていただろう? ミリカはともかく、名前ちゃんがあんな奴らと同じ部屋で寝ているのはどうにも気が気でなくてね。それに床だと体を痛めるし、宿舎の君の部屋は鍵がかかってて入れなかったから俺のベッドに運んだんだ」
なるほど。合点がいったような、いかないような。
「で、俺は椅子で寝ようと思ってたんだけど、名前ちゃんが俺の服を離してくれないから一緒に寝ちゃったよ」
「あわわわ、ごめんなさい」
「役得、ってやつかな?」
ハハハと笑うアクロさん。服を掴んでいたなんて全く記憶にないが、迷惑をかけたのは間違いない。顔を青ざめさせながら謝ると、アクロさんは「気にすることないよ」と私の頭を撫でた。
「名前ちゃんの可愛い寝顔も見れたしね」
「あばばばば……!」
これ以上は精神的にも耐えきれないので、恥と知りつつ逃げさせてもらおう。一時的に役に立つ技だ。そう決めて体を起こすと腰に腕を回された。
「今日は休みだし、もう少し寝ようよ」
「あの、私、全然、寝れそうに……」
「……ぐう」
「寝ちゃった!」
アクロさん、アクロさーん。大作さーん。
名前を呼んでも返事はなく、相当疲れていたのかいよいよ本格的に寝息を立て始めた。私の心臓はとにかくやかましくて寝れそうにないんだけど、とりあえず観念して添い寝みたいなものでもしておこう。
Smotherd mate