「あれれ? 草太君じゃん」
「……何だ、名前ちゃんか」
大きなスーパーの袋を両手に提げた買い物帰り、あの老獪な御仁の子飼いに出会った。彼もまたひょんなことから殺し屋である了賢さんに拾われ、共に暮らしているらしい。
「で、何してんの?」
「殺しの準備!……って言うのは冗談で、次はわたあめ屋さんかなー」
「ああ、ビッグタワーのインチキわたあめ、名前ちゃんがやってたんだ」
「違うよ! むしろ私と太郎さんはあんな暴利で子供の夢を破るようなわたあめ屋を潰す為に立ち上がったんだよ!」
草太君が言っているのは、ビッグタワーの屋上で売っている『天空わたあめ ちぎれぐも』の事だ。そのわたあめは半分にちぎったものを正規の値段で提供しているという、夢もへったくれもないヤクザなものだった。
「だから草太君、あのわたあめ屋を潰すためにも私と太郎さんに協力してよ!」
「名前ちゃんさ、殺し屋じゃなくてお菓子屋にでもなったら? あと俺、甘いの無理だから」
「ええー……じゃあ草太くんには特別に甘くないのを作るからー」
「それってただの綿でしょ」
「そうとも言う」
草太君は呆れながらため息を吐いた。だって甘いのが無理なら「あめ」抜きの「わた」しかあげられないじゃん。食べられるかどうかは別として。
「アンタと話してるとアホが移る」
「酷いなあ。これでも一流の殺し屋の卵なのに」
「言ってなよ」
「草太君はあの人の傍に居て、『殺し屋になろう』とか『なりたい』とか思わないの?」
「名前ちゃんみたいに頭にわたあめが詰まってるわけじゃないからね、俺は」
「馬鹿にしすぎでは!?」
「それに俺、自分の手を汚すより他人を操る方が得意だしさ」
「自分で言っちゃうんだ」
「うるさいな」
操られるはずのピエロが誰かを操るなんて、エゴイスティックにも程がある。しかし、彼との皮肉交じりの掛け合いの末、良いアイデアのようなものがポンと浮かんだ。
「じゃあ私達、いいコンビになれそうだね」
「は?」
「じゃあね〜」
私は手を振りながら、怪訝な顔をする草太君を通り過ぎて太郎さんの家へと向かった。
個人的に。
アイス、わたあめ、と来たら次はクレープが食べたいんだけど、太郎さんの事だからまたサザエ味になるかもしれない。そう思うと、なかなか言い出せない私なのであった。
Smotherd mate