警察局の廊下を歩いていると、曲がり角で名前と牙琉がぶつかっていた。何やってんだアイツラは、前ぐらい見ろよ……と思っていると、なにやら様子がおかしい。
「嘘……でしょ……」震えながら牙琉が言った。
「そんなバカな……」と名前は目を見開いた。
「私達」「僕達」
「「入れ替わってる!!」」
ンなわけあるかい。
アホか、こいつらは。
呆れながら眺めていた俺に気付くと、二人はすごい勢いで詰め寄ってきた。
「大庵見て! 私、牙琉検事になっちゃってる!」
オイ牙琉、ノリノリで女言葉を話すな気持ち悪い。
「助けてくれよ大庵! この姿じゃ今夜約束していた食事に行けないよ!」
名前、そんなに足を開くな。一応女だろお前。
「あのよぉ……楽しいか? お前ら」
慌てふためくコイツラを見ていると、逆に俺は一人冷静になる。入れ替わっちゃった? そんなドラマみてえな事、あるわけねえだろ。どんなドッキリだこれは。
「へえ、信じないんだ。私だけが知ってる大庵の秘密、言っちゃおうかな……」
「僕も持ってるよ、大庵の秘密。デスクの下に隠してる写真――」
「待った名前! 何でお前がそれを知ってんだ!」
名前(の姿をした牙琉)はふっふっふと怪しげに笑う。その秘密は牙琉しか知らないはずだ。
「だから言ってるじゃないか、僕は響也だって」
「私が名前だよ。いい加減にしてよね!」
「いい加減にするのはお前らだ!」
大声で突っ込むと、名前と牙琉は目を合わせた後揃ってやれやれと肩をすくめた。
「あーあ、全然信じないからつまんない!」
「ホントだよ。全く、大庵は失格だ」
名前はいつもの名前に、牙琉はいつもの牙琉の口調に戻った。やっぱりな。コイツラ二人して、俺をからかっていただけだ。
「勝手にターゲットにされた挙句、失格とか言われる俺の身にもなれよお前ら!?」
名前達は全く悪気なく笑うもんだから、だんだん怒る気も失せてきた。
「つーか、牙琉なら騙せたんじゃねえの?」
「私と大庵が入れ替わっちゃうってこと? 無理でしょそれは」
「何でだよ」
「え〜だって! 大庵とじゃ、ぶつかる前にリーゼントで気絶しちゃうよ!」
名前がそう言うと、牙琉は腹を抱えて「あっはっは」と大声で笑いだした。人のオシャレを鈍器扱いしやがって!
……ん? 待てよ。ということは、やっぱり名前は俺の秘密を知っていたってことか!?
だが真相を知るのが怖かった俺は、その件に関しては何も口にしないことにした。
Smotherd mate