「あっ! まがたまん落としちゃった!」
「諦めなさい」
「でも上の部分なら食べられるかも……」
「私のを半分あげますから諦めなさい」
「ありがとうナユタさん!」
「ふえっくしょい! お風呂が壊れて水しか出なくなっちゃった……」
「諦めなさい」
「な、ナユタさん!? 何故ここに!」
「諦めて我が家の風呂をお使いなさい」
「とりあえずご厚意に甘えさせて頂きますけど、音もなく私の家に入らないで下さいね?」
「あの、ナユタさん。ベッドは壊れてないので大丈夫ですよ?」
「せっかくですから諦めなさい」
「せっかくの意味とは」
「諦めて私のベッドをお使いなさい」
「あ、これ強制だ」
「ナユタさん、私まだ仕事中なんですけど……」
「就業時間はとっくに過ぎていますよ。これ以上の仕事は諦めなさい」
「私もそうしたいのは山々なんですけど」
「では、共に帰りましょう」
「わあっちょっと! 下ろして下さい!」
「諦めなさい」
「クビになったらどうすんですか!」
「その時はもっと良い就職先を探してあげますよ」
「言質取りましたからね!」
「名前さん。ホースケの事は諦めなさい」
「? 何の話ですか?」
「貴女を見ていて気付きました。ホースケの事が好きだと」
「……へ?」
「残念ですが、諦めなさい」
「ま、待って下さい! 私が好きなのは法介くんじゃなくてナユタさ――……あっ」
「!……これは、拙僧もまだまだですね」
「あの、今の聞かなかった事に……」
「……諦めなさい」
「ですよね!」
「で、新しい就職先ってどこですか?」
「拙僧の家です」
「ナユタさんの家? お手伝いさんとか?」
「違います。住み込みという点では近いですが」
「もしやお嫁さんかな? 良いですよ! なんちゃって……」
「その通りです」
「えっ」
「言質、取りましたよ」
「うええっ!?」
「諦め――」
「――じゃ、ありません! 嬉しいです!」
「……! それは良かった、です」
Smotherd mate