理由は、夢中だから
部活が始まる直前に、階上くんの所へ向かった。影山くんについて相談したかったし、主将としての彼の意見が聞きたかった。彼なら影山くんを気に掛け、打開案を見つけ出せるのではないかと、期待もした。
でも、階上くんの答えは、想像と違った。監督に相談して、無理ならもう諦めている、というのだ。大会は直ぐだから、この短時間での意識変化なんて難しいと思っているんだ。
「何で二葉さんはそんなに影山を気にするの?」
そんな事はないと、言おうとした時、監督が部活の開始を告げた。階上くんは一言だけ私に言葉を残して監督の元へ今日の練習メニューを確認しに行き、私はマネージャーの仕事に取り掛かることになった。体育館に来ていた影山くんをチラリと見ると、昼休みとは違うギラギラとした瞳で立っていた。
何で。
タオルを準備しながら、階上くんの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
何でって、それは北一が全国に行くには影山くんの力が必要だと思うから。
何でって、それは影山くんの努力を知っているから。
何でって、それは――
タオルを畳み終わって、ドリンクボトルの確認をする。
バタバタと準備をして、急いで体育館へと向かう。サーブレシーブ練習に入ったらしく、対面しながら必死にボールを操っていた。
影山くんが、サーブトスを上げた。
結局、徹くんが影山くんにサーブトスのコツを教えることはなくて、影山くんは見て覚えようと必死になっていたっけ。
――俺が、俺が…!!
「…あ、」
そうか、分かった。
セッターだから。
自分が頑張らなきゃって必死だから。
あの時の徹くんと、今の影山くんがダブるんだ。兎に角練習して、周りと噛み合わなくなって苦しんでいた、中学三年生の徹くんと。
お兄ちゃんが徹くんにアドバイスして、徹くんが吹っ切れたから、影山くんも変わってくれるんじゃないかって、そう感じてたんだ。
それが分かった瞬間、私の中には徹くんばっかりなんだと気付いて恥ずかしくなった。
顔に熱が集まっている気がしてパタパタと手で扇いでいると、たまたま私の方を見た金田一くんが、首を傾げた。慌てて否定の意味を込めて手を横に振って、空のドリンクボトルを集める。金田一くんは直ぐに練習に戻っていった。
私は集めたドリンクボトルを持って、恥ずかしさを振り切る様に水場に走った。
20160105
(はずかしい…!!)ALICE+