新たな物語との出逢い
必死の努力空しく、とうとう中総体当日を向かえてしまった。
お兄ちゃんや徹くんにちょこちょことアドバイスを貰っていたのに、どれも上手くいかなくて、空回ってばかりだった。
アドバイスをくれた二人には申し訳なさすぎて結果は言えずにいる。二人のことだから、気付いているかもしれないけど、笑顔で出掛けようとする私を何も言わずに見送ってくれた。
「…はぁ…」
集合場所の市民体育館入り口前にに着いた時にはまだ誰も来ていなくて、思わず溜め息が出てしまう。周りはガヤガヤとしているし、誰にも聞こえていないみたいだ。今日、此処には、沢山の人が夢と希望を抱いて来ているんだ。私が雰囲気を悪くしちゃいけない。
「うおぉぉ…!入り口でっかい!!……っと、すいませんっ」
「きゃっ、あ、すいませんっ!!」
忘れ物はないかと荷物を確かめ様と端に寄ろうとしたら、後ろから来ていた男の子とぶつかった。
男の子はわたわたと慌てたと思ったら凄い勢いで頭を下げ始めた。
私が周りを見ていなかったのが悪いのだ。男の子を止めながらも、私が頭を下げる。暫く二人で頭を下げあっていたけど、途中で目が合って思わず笑ってしまった。
男の子は相変わらずギクシャクとした動きをしている。ジャージを着ているから今日出場する選手なんだろうか。
「市民体育館、初めてなんですか?」
「ふぇっ!?あ、あの!あ、はいっ!!」
「そうなんですね。緊張するけど、頑張って下さい!」
「あああああ!はいっ!あ、貴女は…!!」
「私は、マネージャーなんです」
「マネージャー…」
「うん。お互い、頑張りましょ……」
「ちょっと、翔ちゃん!!?」
男の子の後ろから、同じジャージを着た子がやってくる。彼の後ろには呆れた顔の男の子と、カチンカチンに緊張している幼さの残る男の子が三人。
ペコリと頭を下げると、近付いてきた男の子に慌てて頭を下げられた。リュックを背負っている彼のジャージに刻印されている学校名がチラリと見えた。
「あ……」
「すいません、失礼しますっ!」
学校名を確認しようと思ったら、二人は勢い良く頭を下げて去っていってしまった。“翔ちゃん”くんに至っては無理矢理頭を下げさせられている様な形になっていた。皆を見送ってから、今日のトーナメント表を確認する。
第一試合の対戦相手、雪ヶ丘中。さっき見えた文字も確か、雪ヶ丘中。
お互い頑張ろうと言ってしまったのが何とも気まずい。
「二葉さん、早いね」
うむむ、とトーナメント表を睨みながら唸っていると、後ろから声を掛けられた。
階上くんだ。一緒に国見くんと金田一くんもいる。
「階上くん、おはよう」
「うん、おはよう」
皆の元へ向かっていき雑談を始めると、続々とチームメイトが集合してきた。
その中に、最近不機嫌な顔ばかりしている影山くんが、やっぱり不機嫌な顔で歩いていて、それを他校の生徒が遠巻きに見て何やらヒソヒソと話しているのが見えた。
「影山くん、おはよう」
「はよ」
影山くんは一言だけ返事をして、黙り込んでしまった。
直ぐに監督もやってきて、人数を確認してから中へ入る準備を始めた。集団になってから他校のヒソヒソ話が増えたけど、誰も気にしていなさそうで、私だけ意識するのも変な気分。
歩き出した監督についていく様に進み始めた時、隣にいた影山くんの顔には試合への意気込みが怖いくらいに出ていた。
20160113
(今日出逢った彼と)
(これから沢山の物語が始まるなんて)
(その時は思いもしなかった)ALICE+