恥ずかしい告白


「あれ、徹くん?」


家に帰る時、丁度タイミング良く家の前でお兄ちゃんと徹くんに会った。もう家に入ろうとしているところだったけど、私に気付いた徹くんが、玄関から離れて駆け寄ってきた。


「二葉ちゃん、おかえり!」


ガバリと、勢い良く徹くんが抱き着いてきたから持っていた荷物を落としそうになった。


「ただいま、徹くん。あと、おかえりなさい」
「ただいま!!…何これ新婚さんみたい!二葉ちゃん大好きっ!!」
「えっと、徹くん…?」


何か、いつもよりテンションが高い気がする。気のせいかもしれないけど。ちらっとお兄ちゃんを見ると、溜め息一つ、徹くんの頭をベシリと叩いたと思ったら、思い切り私から引き剥がした。


「岩ちゃん、痛い!!」
「二葉が困ってんだろ。離れろ」


お兄ちゃんの言葉に徹くんが驚いた様に私を見てきて、よく分からなくて首を傾げてみたら、徹くんはお兄ちゃんに、そんなことないじゃん、と怒った。
すごく困っていたわけではないけど、ちょっと困ってたのは本当だから、徹くんを宥める。


「あんまり大きい声出すと、皆に迷惑だよ?」
「うん、そうだね、ゴメン二葉ちゃん」


素直に笑う徹くんが、身体を屈めて私に頭を向けてくる。
何だろう。撫でてほしいのかな。いいこ、と撫でてみると、徹くんがパァッと笑顔になった。再び、ぎゅっと私を抱き締めた徹くんに、お兄ちゃんは呆れた様にまた溜め息を吐いて、家に入っていった。その場に、私と徹くんだけが残された。


「徹くん…?」
「なに?」


ニコニコと、いつも通りに笑う徹くんだけど、何だかいつもと違う。嫌なことでもあったんだろうか。それは私に話してくれるだろうか。徹くんを見ながら、何て言おうか悩んでいると、間を空けてから徹くんが口を開いた。


「そうだ、今日の試合どうだったの?」
「あ、あのね…!」


北一が勝ったことは伝えていたから、詳しく試合の話をしようと手に力を込めた。徹くんがそれを見て笑って、その笑顔はいつも通りで良かったと思った瞬間、徹くんの眉間に皺が寄った。


「え、あれ?徹くん?」
「やっぱなし。その話、なし」
「どうして?…あ、私の話、つまんない…?」


いつもニコニコな徹くんが、嫌そうな顔でそう言うんだからそれしか思い付かなくて、でも実際そうだったらショックで、つい語尾が小さくなっていく。視線も思わず下の方にスルスルと移動してしまった。あからさまにショックです、と言っている態度になってしまって、徹くんを困らせてしまうのは分かりきっていたけど、今から別の話を笑顔で振れる程、私は大人じゃない。


「違う、違うよ!え!?泣かないで、二葉ちゃん!?」
「別に、泣いてないもん…」
「泣きそう!」


徹くんが私に視線を合わせる様にしゃがんでくれて、焦った顔の徹くんが見えた。やっぱり困らせちゃった。その事実に悲しくなってきて、泣いてないし泣くつもりもなかったのに、鼻の奥がつんとしてきた。


「ごめん、二葉ちゃん、あのね」


私の顔を見ながら、徹くんがゆっくりと言葉を紡ぐ。


「最近、部活の話すると、二葉ちゃん、飛雄の話ばっかでしょ」
「そんなこと…」
「そうなの!飛雄の心配ばっか!」
「う……」


否定しようとして、逆に徹くんに強く言われてしまった。確かに、影山くんのことを気に掛けていたけど、そんな言われる程でもないと思っていた。チームメイトとして、当然心配する範囲内なんだと思ってた。


「そう、それでね。二葉ちゃんが飛雄の話ばっかだから、俺はあんまり楽しくないわけ。分かる?」
「えっ、と…」


その答えは分かる様で、それを認めたらもの凄く自惚れてしまいそうで、首を縦に振れない。


「二葉ちゃんが飛雄のことばっか考えてるの、つまんないもん…そうだよ、ヤキモチ!二葉ちゃんには俺のことばっか考えてて欲しいくらいだからね!」
「あ、あの……ね、」


顔を真っ赤にして話す徹くんを見てて、この間考えてたことを思い出す。私の頭の中は、いつでも根っこの部分で何を考えているのか。恥ずかしくて誰にも言うまいと思っていたけど、今、伝えるタイミングだと思った。


「私、…あのね、」
「うん」
「影山くんが、セッターで、バレーが大好きで、自分が頑張らなきゃって思ってるから、助けてあげたいと思うの」
「……うん」
「バレーは6人で強い方が強い、ってお兄ちゃんに言われる前の徹くんみたいで、ほっとけないの」
「うん……うん?」


相槌を打っていた徹くんが、よく分からないって顔で私を見てきた。さっきまで真っ赤になっていたくせに、もう普段と同じ顔色だ。代わりに私が真っ赤になってるだろう。移された。


「私、いっつも、徹くんのこと、考えてるよ…」
「……っ!」


恥ずかしくて仕方なくて、徹くんの方を見てもいられなくて、その場から逃げたくなってきたし、門の方へ身体を向ける。一歩踏み出した瞬間、ぐいっと力強く手を引かれた。


「なにそれ、可愛すぎ…!」
「ちょ、徹くん…!」
「二葉ちゃん、好き、大好き、結婚して!!」


ぎゅーっと私を思い切り抱き締める徹くんの言葉が何故か急に恥ずかしなって、返事も出来ずに徹くんの腕の中でじっとしていることしかできなかった。





20160229
ALICE+