前向きに進む
部屋に射し込む朝日で目が覚めた遥は、眩しい光から逃げる様に布団へとくるまる。
この城に仲良く話せる知り合いは少ない。昴の側近の二人か前に何度か会ったことのある女性達か。
とりあえず部屋から出たところですることがない。
遥は自分の中で結論を出すと、二度寝をしようと思考を停止させる。枕元から感じる魔力のお陰で、快適に眠ることが出来る。
目を閉じていた遥の瞼に、急に数年前の光景が浮かんでくる。昴の元から離れ4年間過ごした場所。歪な生活空間。
「……!」
そうだ。
昴を快く見送りはしたが、発作について忘れていた。いや、違う。忘れていたわけじゃない。思い込んでいただけだ。大丈夫なんだと。
「……昴…」
くろを抱き締める。
感じる昴の魔力は、大丈夫だと言っている様な気がした。心配することないのだと、昴が言っているのだ。
心配するだけではダメなのだ。
自分に出来ることをきちんとやれば良いのだ。
よし、と遥は気合いを入れると、ベッドから立ち上がる。
まずは溜まっているだろう昴の仕事を片付けることから始めよう。押し付けられているであろう少女を想像するととても申し訳ない気持ちになる。
どんな仕事をしていたかくらいは大体把握出来ているので、足手纏いにはならないはずだ。
少女は恐らく定められた部屋で仕事をこなしているだろうから、そこへ向かえば間違いはないだろう。
遥は、部屋を出て目的の場所へと歩き出す。
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暫く歩くと、ある部屋の前へと辿り着く。
軽くノックをしてから扉を開くと、机に向かい書類をひたすら捌く背中が目に入る。
「…プリノ、いいかな?」
「……遥…さん!?」
遥を見たプリノは、驚愕に目を見開く。プリノの様子に遥は苦笑いする。まるで幽霊でも見ているかの様なその視線の意味を遥は理解出来る。自分は急にこの城から居なくなったのだ。何の音沙汰もなくいきなり登場すれば誰もがそう思うだろう。
「どうされたんですか、遥さん…!」
「昴の仕事、私が代わりにやろうかな、と思ったんだけど……いいかな?」
「そんな…悪いですよ…」
プリノは首を横に振るが、遥はプリノへと近付いていくとプリノの目を真っ直ぐに見つめる。
「私はさ、昴を見送っちゃったから。少しくらい手伝いたいんだ」
な、と首を傾げると、プリノは暫く考えてから緩やかに首を縦に振った。
プリノの答えに満足した遥は、プリノの抱えている書類の中から魔王のサインを必要とするものだけ抜き取ると、ソファーに腰掛けて書類へと目を通し始める。
プリノは微笑むと、机へ向き直り自分の書類へと視線を向けた。
to be next...
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